民法118条の条文って,無権代理の中でも飛びぬけて読みにくくて何言ってるのかイミフなんだけど,何を定めているの?
本記事は,民法118条の単独行為の無権代理について,条文を読みやすいように書き換えながら,わかりやすく解説しています。
本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。
- 単独行為に無権代理制度が適用できるのかについて知ることができる
- 民法118条が何を言っているのか,読みやすく書き換えて,基礎から理解できる
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で行政書士・2週間の独学で宅建に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち
読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
※本ブログでは,記事内容を要約したものを先に【結論】としてまとめ,その後【解説】で詳細に説明をしていますので,読者さまの用途に合わせて柔軟にご利用ください!!
【結論】単独行為にも無権代理制度を適用して本人・相手方を保護!
民法118条 【単独行為の無権代理】
単独行為については,その行為の時において,相手方が,代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し,又はその代理権を争わなかったときに限り,第113条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも,同様とする。
代理行為が一方的意思表示で法律効果が発生する単独行為だったとき,一定の条件下で無権代理制度を適用する条文です。
本条によって,無権代理制度が適用され,本人や相手方を保護されることになります。
【無権代理制度(民法113条~117条)が摘要されるとどうなる?一覧】
- 本人は追認しない限り法的効果が及ばなくなり保護される(民法113条1項)
- 本人は追認の催告を無視しても,追認拒絶となり手厚く保護される(民法114条)
- 善意の相手方は本人追認までなら取消権を得られる(民法115条)
- 無権代理人は無過失責任を負う(民法117条1項・民法117条)
【解説】能動代理・受働代理・契約行為・単独行為をしっかりおさえよう!
法律行為が単独行為だったときに,無権代理制度を適用していいのか?問題
代理(民法99条)を有効に行うためには,以下の3要件を満たす必要がありました。
【代理の3要件】
- ①:本人から代理人に代理権が授与されていること
- ②:顕名がされていること
- ③:代理行為が行われたこと
この「③:代理行為」とは,事実行為ではなく法律行為のことです。
法律行為とは,①法的効果の発生を目的とした+②意思表示をすることでした。
※法律行為・事実行為については,以下の記事で詳細に解説していますので,こちらをあわせて読んでください。
そして,この法律行為には契約行為・単独行為・合同行為の3種類が存在します。
民法113条~117条までの,無権代理制度を定めていた条文の(無権)代理行為は,3種類のうちの“契約”行為を念頭に置いて記載されています。
※契約・単独行為・合同行為については,こちらの記事で詳細に解説しています!
しかしながら,契約行為ではなく,単独行為にも代理制度が利用可能です。
単独行為の代表的なものには,法律行為の取消し,契約の解除,(債務)免除,遺言などがあります。
取消し,解除,免除は相手方のある単独行為,遺言は相手方のない単独行為です。
(相手方のない単独行為の無権代理は絶対的無効とされていますので,本記事では説明を割愛します。)
法律行為の取消しや解除,免除の意思表示をするにおいて,代理人を立てて(例えば弁護士に依頼して)行うことはあり得ます。
ここで問題になるのが,代理行為が,単独行為のような,一方的な意思表示のみで法律効果を発生させる法律行為のとき,無権代理制度は適用できないのか?という問題です。
代理行為が契約行為の場合,代理人と相手方の双方向の意思表示が合致する必要がありますので,法的効果発生前にある程度,両者間に接点が存在します。
対して,単独行為の場合,一方的な意思表示のみで法的効果が発生してしまいますので,そこに(代理権が無いことを知っていた・知らなかったが影響する)無権代理制度が馴染むのかという点を考えなければならないのです。
この問題を担当しているのが,本条民法118条です。
民法118条前段(能動的単独行為)
民法118条 【単独行為の無権代理】
単独行為については,その行為の時において,相手方が,代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し,又はその代理権を争わなかったときに限り,第113条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも,同様とする。
まず,民法118条前段は,単独行為(代理行為)を行った側が無権代理だったとき,すなわち能動代理のケースを規定しています。
条文の『その行為の時において,相手方が,代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し,又はその代理権を争わなかったとき』というのが非常に分かりづらいですので言及しておきます。
これは『単独行為があったその時に,相手方が,てっきり単独行為をした人は代理権があると思っていたとき』という意味の日本語です。
そして,その後に単独行為が無権代理人によってなされていたことが発覚した・・・というのが,本条文が活躍する場面です。
以上を,とんでもなくバッキバキにかみ砕いて,民法118条を書き換えると,次のとおりです。
民法118条 【単独行為の無権代理】
単独行為については,その行為の時において,相手方が,代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し,又はその代理権を争わなかったときに限り,第113条から前条までの規定を準用する。
↓ ↓ ↓
単独行為については,その行為の時において,単独行為があったその時に,相手方が,代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し,又はその代理権を争わなかったてっきり単独行為をした人は代理権があると思っていたときに限り,第113条から前条まで無権代理制度の規定を準用適用する。
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民法118条 【単独行為の無権代理】書き換えVer
単独行為については,単独行為があったその時に,相手方が,てっきり単独行為をした人は代理権があると思っていたときに限り,無権代理制度の規定を適用する。
ちなにみ,無権代理制度が適用されると…なんだっけ?
無権代理制度が摘要されることで,まずは,無権代理行為において本人とされる人は追認しなければ代理行為による法的効果が及ばないなど,本人が手厚く保護されるよ!
他にはないの?
他にも,無権代理制度が適用されると,無権代理行為の相手方に取消権が発生するなど,相手方も一定の保護がされるよ!
以下に簡単にまとめておくから,じっくり確認しておいてね!
【無権代理制度(民法113条~117条)が摘要されるとどうなる?一覧】
- 本人は追認しない限り法的効果が及ばなくなり保護される(民法113条1項)
- 本人は追認の催告を無視しても,追認拒絶となり手厚く保護される(民法114条)
- 善意の相手方は本人追認までなら取消権を得られる(民法115条)
- 無権代理人は無過失責任を負う(民法117条1項・民法117条)
以上のことから,民法118条前段の書き換え最終Verは次のとおりです。
民法118条 【単独行為の無権代理】書き換えVer
単独行為については,単独行為があったその時に,相手方が,てっきり単独行為をした人は代理権があると思っていたときに限り,無権代理制度の規定を適用するし,本人や相手方を保護する。
↓ ↓ ↓
民法118条 【単独行為の無権代理】書き換え最終Ver
単独行為については,単独行為があったその時に,相手方が,てっきり単独行為をした人は代理権があると思っていたときに限り,無権代理制度の規定を適用し,本人や相手方を保護する。
民法118条後段(受動的単独行為)
民法118条後段 【単独行為の無権代理】
代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも,同様とする。
民法118条後段は,前段とは逆に,代理権を持っていない人に対して法律行為をしたケース,すなわち,受働代理のケースです。
『代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたとき』というのは,“相手方のある単独行為を,代理権を有しない相手方がその単独行為をされることを承諾・認識(=同意)のうえで行うとき”という意味です。
この場合も,代理権を有しないにもかかわらず,代理人かのような態度(=同意したそぶり)で単独行為を受けたのを,単独行為をした人が知らなかった場合,無権代理制度が適用できます。
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
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※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。
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参考文献など
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