今回は民法113条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
1 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
民法 第113条【無権代理】
条文の性格
無権代理が発生したとき,その効力がどうなるかを定めた条文です。
無権代理とは,代理権を有しない者が代理人のフリをして他人と契約等の代理行為をした状態のことを言います。
条文の能力
原則:無権代理は本人に効力が及ばない
無権代理とは,代理人でもない人が勝手に相手方と契約をしてきてしまうような状態です。
したがって,本人からすれば自分の知らないところで勝手に代理行為を行われているわけですから,そんな代理行為の効果を及ぼされても困るわけです。
よって,無権代理は原則,本人に効力が及びません。
無権代理でも,追認すれば本人に効力が及ぶ
前述のとおり,無権代理は原則,本人に効力が及びません。
ただ,たしかに本人は代理人でもない人が勝手に自分の代理人として契約をされて立場ではありますが,「勝手にされた代理行為だけど,結構いい内容の代理行為だな…。」という場面もありえるでしょう。
それであれば,相手方は無権代理人(代理人でもないのに代理行為をした人)との契約をしたのですから,本人がいいと言うのなら本人に効力を及ぼして,無権代理行為を有効なものとすることが本人にとっても相手方にとっても良い結果となります。
したがって,原則は本人に効力が及ばない無権代理でも,本人が良いと言うのなら,その場合に限り,無権代理を有効にすることを民法は認めます。(113条1項)
この,本人が無権代理の効力を自身に及ぼすことを認めることを追認といいます。
追認又は拒絶は相手方に対してしないと対抗できない
前述の,無権代理行為を有効とする本人の追認は,相手方に対してしなければ,その効力を主張できません。(無権代理の拒絶も追認と同様なので,以下では追認で解説します。)
追認は意思表示ですが,追認は相手方の承諾を必要としない単独行為です。 すなわち,本人が「追認しまーす!」と意思表示すれば,周りの誰の許可を得なくても追認の効果は発動します。
ただ,無権代理の相手方は,本人が追認するときまでは無権代理行為を取消すことができます。(115条)
よって,相手方が取消そうとしたのに,本人から「実はすでに追認してましたー!」なんてことが起こり得ます。 すると,相手方からすると,一体いつ追認されているのか分からず,相手方の立場が不安定になります。
したがって,相手方からすると本人が追認したかどうかは重要な情報であるため,113条2項では,無権代理の追認は相手方に対してしないと,相手方には対抗できない規定を設けました。
113条2項は相手方に「本人が追認した事実」を知らせ,相手方が追認について知っている状態にして保護しようとする条項です。
よって,すでに相手方が追認の事実を知っているのなら,わざわざ本人に相手方への追認行為を強いる必要は無いので,この場合は,本人の相手方への追認行為は必ずしも必要ではありません。(113条2項ただし書き)
コメント
無権代理は,以下の関係が前提にあることを頭の中で整理しておくと,理解しやすいので,憶えておきましょう。
- 無権代理は,原則は本人に効力が及ばないこと
- 無権代理時の本人は,勝手に代理行為されたので,基本的には効力を引き受けたくない立場であること
- 無権代理時の相手方は,無権代理人と契約を既に実施しているので,契約が有効になって欲しい立場であること
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。