今回は民法120条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
1 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
民法 第120条【取消権者】
条文の性格
チート能力である取消権が,一体誰に認められるのかを定めたのが本120条です。
取消権は,当事者のどちらか一方の一存で法律行為を無かったことにできる非常に強力な権利です。
そのため,みんながみんな取消権を持つことを認めるのは,成立したと思っていた契約や取引がいつ取り消されるのかわからないため,社会経済の混乱に繋がります。
したがって,民法は,取消権を誰に認めるのかを120条に定め,その権利保有者たる身分に制限をかけています。
条文の能力
取消権が発生するパターンは4つ 制限行為能力者・錯誤・詐欺・強迫
120条のメインテーマは,取消権が誰に認められるのか?です。
取消権が誰に認められるのか?の前に,どのような場合に取消権が発生しうるのか,言い換えると,どのような場合が取消し可能な状況なのか,を憶える方が良いです。
取消権が認められるパターンは4つ有り,以下のとおりです。
- 制限行為能力者
- 錯誤
- 詐欺
- 強迫
何度も言いますが,取消権は,相手に有無も言わさずに契約などを遡って無効にする強力なものです。
そのため,取消権の所持が認められるのは,取消権を認めるべき理由があるそれ相応の立場の者となります。
まず,制限行為能力者(未成年者・被補助人・被保佐人・被成年後見人)は,自身の行う法律行為がもたらす経済的効果の有利不利の判断能力が不十分です。 よって,制限行為能力者が自身に圧倒的に不利な法律行為を行っても,後から法律行為を取消すことで保護を図ることを目的として,取消権が認められます。
次に,錯誤・詐欺・強迫のように瑕疵ある意思表示が行われた場合,意思表示をした本人が希望する法律効果が発動しません。
意思表示をした者に大なり小なり過失があるとはいえ(強迫の場合はほぼ無いですが…),瑕疵ある意思表示の内容に,意思表示した当人を縛らせ続けるのが酷と言えるのが,錯誤・詐欺・強迫の場合です。
よって民法は,瑕疵ある意思表示をした者を保護すべき対象として認め,取消権を与えています。
自身がした瑕疵ある意思表示の内容から解放する手段を設けることで,錯誤・詐欺・強迫の意思表示者の保護を図ることを目的としています。
制限行為能力者パターンにおける取消権者
制限行為能力者(未成年者・被補助人・被保佐人・被成年後見人)パターンにおける取消権者は以下のとおりです。
- 制限行為能力者本人
- 制限行為能力者の代理人
- 承継人
- 同意権者
制限行為能力者本人,代理権内で本人とほぼ同等の行為ができる代理人,本人の持つ権利義務を包括的に承継する承継人(相続人等),同意をすることで制限行為能力者を保護する役割の同意権者が,取消権を持ちます。
結局まとめると,本人,代理か相続等で本人と同等の権限を持つ者及び本人を保護・観護する同意権者が取消権者です。
錯誤・詐欺・強迫パターンにおける取消権者
錯誤・詐欺・強迫パターンにおける取消権者は以下のとおりです。
- 瑕疵ある意思表示をした本人
- 瑕疵ある意思表示をした者の代理人
- 承継人
錯誤・詐欺・強迫の場合における取消権者は,同意権を持つ保護者が存在しないので,制限行為能力者パターンから同意権者を除いた者たちです。
すなわち,本人及び代理か相続等で本人と同等の権限を持つ者が取消権者です。
コメント
取消権者については,以下の点を関連付けて憶えておくと理解が進みます。
- 取消権が非常に強力な権利であること
- 取消権が非常に強力であるため,取消権が認められるのは制限行為能力者・錯誤・詐欺・強迫などの,法律で特別に保護すべき立場にある者であること
- 制限行為能力者・錯誤・詐欺・強迫における,本人+代理人+承継人+(同意権者)が取消権者であること
勉強がんばりましょう!!
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。