今回は民法114条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
前条の場合において,相手方は,本人に対し,相当の期間を定めて,その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において,本人がその期間内に確答をしないときは,追認を拒絶したものとみなす。
民法 第114条【無権代理の相手方の催告権】
条文の性格
無権代理が発生すると,無権代理人と交わした契約が有効となるか無効なるかは,本人が追認するかどうかにかかっているため,相手方としては非常に不安定な立場に立たされます。
本人からすると,自分の知らないところで無権代理が行われて,それに対して追認するかしないか余計な判断をしなければいけないので,「めんどくせぇ」と判断に気乗りしなくて,判断を先延ばしにすることもあるでしょう。
しかしながら,無権代理の相手方は自身が望んだ契約が早く確定することを希望しているわけですから,本人にいつまでも追認か拒絶の判断を留保されても困るわけです。
そこで,民法114条は無権代理の相手方に,本人に対して『無権代理行為を追認するか・拒絶するか,相当の期間内に答えを出してくれや』という催告をする権利を与えました。
「まぁ,そろそろこのへんで無権代理をどうするか白黒ハッキリつけましょうや…」っていう,任侠もののドラマや映画で聞きそうなセリフを言っているようなイメージの条文です。
条文の能力
催告権とは
催告権とは,相手に一定の判断をすることを促す権利です。
催告されたのに,なにもしなかった場合,法律に定められた一定の法律効果が発動します。
114条における催告権では,前条(113条:無権代理)の場合に,相手方は,本人に対し,相当の期間を定めて,その期間内に追認をするかどうか返答するように求める事ができます。
これにより,無権代理行為が有効となるかが未確定のために不安定な立場に立たされていた相手方は,早期に立場を安定させることが,ある程度できるのです。
無権代理時には,催告権は常に認められる
前述のように,無権代理の相手方には催告権が認められます。
ちなみに114条をよく読むとわかりますが,『前条の場合』すなわち『無権代理が発生した場合』としか要件が書かれていないので,無権代理の場合には常に催告権は認められます。(相手方の悪意や善意に影響されません)
無権代理が発生したのに,催告権が発生しないなんてことはあり得ないと憶えておきましょう。
催告を無視したら,追認拒絶
無権代理の相手方から催告に対して,本人が期間内に何も応答しなかった場合は,追認拒絶が確定します。
追認拒絶,つまり無権代理の相手方が望んだ契約は実現せず,本人に有利な法律関係が確定して,本人が保護されます。
催告を無視した側に有利な法律効果が発生するの?相手方かわいそうじゃない?と思うかもしれません。
しかし,改めて状況を整理してみると,本人は全く非が無いにも関わらず,無権代理人と相手方との契約ごとに巻き込まれた完全な被害者です。
無権代理の相手方も,たしかに無権代理人と知らなかったのならば,被害者と言えるかもしれません。
ただ,気をつければ無権代理とわかったかもしれませんし,契約することによる様々な事態の発生については,私的自治からくる自己責任を相手方は負います。
よって,無権代理人と契約行為をしたという事実については,完全に巻き込まれた本人よりも相手方のほうが,帰責性が大きいと言えます。
したがって,催告を無視したとしても,トラブルに巻き込まれて,完全にとばっちりをくらっている本人に有利な追認拒絶効果が発動する設計になっています。
コメント
ちなみに,無権代理が発生した際の催告権は条文の文言どおり,相手方のみに認められます。
無権代理人には催告権は認められないので注意しましょう。
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
※代理の基礎条文である99条はこちらで解説しています。
※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。