第3節 代理

民法107条:代理権の濫用【判例法理から民法条文への大出世】

2021年12月4日

伊藤かずま

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国際行政書士(第21190957号)
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今回は民法107分でわかりやすく解説します。

※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
太文字は,解説中で大切なポイントです

代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす

民法 第107条【代理権の濫用】

 

条文の性格

代理という制度が最も上手く機能したと言えるのは,代理人が与えられた権限の中で依頼人が望む結果の代理行為を完遂するパターンです。

ところが,単純な意思表示でさえ心裡留保だの錯誤だの,上手くいかないパターンがあるわけですから,代理も当然上手くいかないパターンが存在します。

その中でも今回の107条は,代理人が与えられた代理権を悪用したパターン,すなわち代理権の濫用と言われるものです。

代理権の濫用とは,与えられた代理権を悪用して,代理権の範囲内でできることを自分や本人以外の第三者のために利用することです。

たとえば委託者Aは,自身が所有権を有するダイヤモンドを売却する代理権をBに授与した。 その後,Bは代理人として,Aをダイヤモンドの売主,Cをその買主とする売買契約を代理行為したケースで,Bは当初から売買代金を持ち逃げして横領しようと決めていた。

上記のケースをよく見ると,代理行為自体は正常に行われています

なぜなら,代理人Bはダイヤモンドの売却代理権を持っており,行った代理行為も代理権の範囲内なので,外から見る限り正しい代理行為が行われているからです。

このような代理権の濫用が有った場合,代理人に裏切られた委託者を保護するのか,正常に見える代理行為(や代理人)を信じた相手方を保護するのか,一体どっちを取るかという問題があります。

このどっちの味方をするかという問題に答えを与えるのが107条です。

 

条文の能力

代理権の濫用が有った代理行為でも,原則有効な代理行為とする

代理権の濫用が行われたとしても,代理行為の外観はあくまでも正常です。

そのため,外観を過失なく信じた相手方に対して,代理権の濫用が有ったので,代理行為を無かったことにするよ!とするのは酷です。

よって民法107条は,代理権の濫用について知らなかった場合は,原則として代理行為は有効としました。

 

相手方が代理権の濫用について悪意又は有過失なら,代理行為は無権代理とする

代理権の濫用が有った時に,善意の取引の相手方を保護するのは,代理行為が外観上正常に行われていることについて信じたということを保護するためです。

それならば,相手方が代理権の濫用について悪意又は有過失であるのなら,民法が保護しようとしている相手方の外観を信じた事実が存在しないため,代理人に裏切られた委託者を保護するとしても問題ないと言えます。

また,民法が「相手方が代理権の濫用について悪意又は有過失のときは無権代理とするルールを決めている」のであれば,相手方は代理権濫用を知っていて代理行為の相手になったのなら,代理行為が有効に成立しないことを覚悟の上で取引をしているので,より委託者を保護して良いと言えます。

したがって,民法107条は代理行為について相手方が悪意又は有過失なのであれば,当該代理行為は無権代理として委託者を保護する規程を採用しました。

 

コメント

筆者は2020年7月から法律を学び始めたので,2020年4月1日に施行された改正民法から勉強をしているのですが,この民法107条はこの2020年4月1日の改正で追加された条文です。

元々,現107条が定めている内容は,旧民法には条文で存在せず,判例によって同様の結論が導かれていました。

その判例が,長い時間をかけて多くの人からの支持を集め,条文として存在する権利を認められた経緯があります。

まさに判例界から民法条文への大出世ですね。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。

※代理の基礎条文である99条はこちらで解説しています。

※前条の解説はこちらです。

※次条の解説はこちらです。

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