第5款 混同

【民法520条:債権者=債務者なら自動消滅!】債権消滅ルール“混同”をわかりやすく図解

伊藤かずま

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ウリム

混同の『ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。』って,どんなケース?

具体例がよくわからないんだけど...。

本記事は,民法520条に規定されている,債権自動消滅ルールの混同の原則ルールと,ただし書きの例外ルールについて,初学者の方に向けて,図を用いてわかりやすく解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 混同がどのようなものかについて理解できる
  • 混同がなぜ認められているのかを知ることができる
  • 混同の例外とその具体例を知ることができる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で行政書士に,2週間の独学で宅建に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

※本ブログでは,記事内容を要約したものを先に【結論】としてまとめ,その後【解説】で詳細に説明をしていますので,読者さまの用途に合わせて柔軟にご利用ください!!

【結論】債権者=債務者となれば,混同で債権が自動消滅

民法520条 【混同】

債権及び債務が同1人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない

民法520条本文

債権とは,”特定の人に,特定の行為をさせる”権利であるため,特定の行為をさせる側(=権利者側)と,特定の行為をさせられる側(=義務者側)の,双方の存在を前提としています

そのため,相続などを原因として,特定の行為をさせる者とさせられる者が同一人物になったとき,自分自身に特定の行為をさせて,自分自身でその行為をしなければいけない…というような(読んでも意味不明で,かつ,)無意味な状況となります。

よって,無意味な債権を存続させていてもムダなので,自動的に当該債権を消滅させるのが混同という制度です。

 

民法520条ただし書き

債権の債権者と債務者が同一人物に帰属したとき,その債権は無意味な債権だから,混同によって消滅するのが原則です。

しかし,債権の債権者と債務者が同一人物に帰属したときでもなお,その債権が無意味な債権とはならないときがあります。

それが,債権が第三者の権利の目的となっているケースです。

債権が第三者の権利の目的になっているのに,混同によって債権がこの世から自動的に消えてしまうと,第三者が予期せぬ不利益を被るので,例外として混同の消滅を認めないのが,民法520条ただし書きです。

 

【解説】「債権矢印が書けない」という概念を理解しよう

混同は”債権編 第6節 債権の消滅”の仲間のひとり

民法には,債権の消滅という法的効果を発生させる制度として代表的なものを5つ,民法典の債権編第6節に規定しています。

混同はそのうちのひとりです。

債権の消滅の5つの制度をまとめると次のとおりです。

【債権の消滅 5つ】

債権の消滅
債権の消滅

 

債権は,権利者と義務者の2人いることが前提のもの

前述の【結論】フェーズでもサラッと書きましたが,債権というのは,『特定の人に,特定の行為をさせる』権利であるため,特定の行為をさせる側(=権利者側)と,特定の行為をさせられる側(=義務者側)の,双方の存在を前提としているものです。

予備校さんでも法学部でもこのブログでも,多くの場合,債権を下図のように矢印で表現すると思います。

債権は矢印で表現することが多い
債権は矢印で表現することが多い

 

矢印が引けるということは,矢印の始点と終点が存在することを意味します。

矢印が引ける=”始点と終点が存在する”
矢印が引ける=”始点と終点が存在する”

債権矢印の場合,始点=債権者で,終点=債務者です。

債権矢印の場合,始点=債権者で,終点=債務者
債権矢印の場合,始点=債権者で,終点=債務者

このように,債権者と債務者の2人がいることで,はじめて債権という権利は存在できるんだ。

この前提知識は,混同の理解に非常に大切だから,しっかり確認しておいてね!

くーぴぃ
ウリム

了解です!

 

矢印が引けないなら,債権は存在しないも同然

ここでひとつ考えて頂きたいのですが,一度誕生した債権矢印が,その後の状況の変化で引けなくなってしまう…という状況は発生するでしょうか?

実は存在します。

 

まず,債権矢印自体が消滅したケースが代表的であり,弁済相殺免除がそれにあたります。

これらは,弁済・相殺という,債務を満足したことによる債権消滅,また,免除という,債権者の債権放棄の意思表示をしたことによる債務(債権)消滅により,引くべき債権矢印そのものが消えてなくなります

 

そして,弁済・相殺・免除以外にも,債権矢印の始点(=債権者)と終点(=債務者)が同じ位置に来てしまうことによって,矢印が引けなくなるケースというものがありえます

すなわち,“始点=終点”,つまり,“債権者=債務者”という状況になった時に,債権矢印が引けなくなってしまうのです。

始点と終点がお互いに近づくと・・・?
始点と終点がお互いに近づくと・・・?
どうなる?
どうなる?
矢印が引けなくなって,債権が消滅!
矢印が引けなくなって,債権が消滅!

始点=債権者であり,終点=債務者でしたので,債権者・債務者の図で書くと,以下のとおりです。

混同における,債権者兼債務者
混同における,債権者兼債務者

 

債権者=債務者になるようなときはどのようなときか?

債権者=債務者となるようなケースの代表例は相続です。

たとえば,お父さんが息子に100万円を貸していたが,そのままお父さんが亡くなってしまったようなケースです。

混同は,相続で起きやすい
混同は,相続で起きやすい

相続は,包括承継(一般承継)ですので,相続人かつ債務者である息子さんは,お父さんが持っていた“債権者という立場そのもの”を引き継ぐことになります。

つまり,債務者という立場にある息子さんは,相続によって債権者という立場も得ることとなり,“債権者=債務者”という存在になります。

混同における,債権者兼債務者
債権者兼債務者

このとき,息子さんは,債権者として自分自身に100万円を請求して,債務者として自分自身に100万円を払わなければならない…という立場にあると捉えることができます

このような債権は無意味ですので,混同によって自動的に消滅させることとなっています。

 

民法520条ただし書きの具体例

前述のとおり,債権者=債務者となり,存続させても無意味な債権は混同で自動消滅させるのが原則となっています。

しかし,債権者=債務者という状況になっていたとしても,その債権を存続させておくことが無意味ではない例外的なケースが存在します。

 

たとえば,先ほどのお父さんと息子さんの例における100万円の請求債権について,以下のような経緯でお父さん(C)がこの債権に権利質の設定をしているようなケースです。

父Cは息子Dに100万円請求債権βを持っているところからスタート
父Cは息子Dに100万円請求債権βを持っているところからスタート
AとBが100万円の消費貸借契約
C→Dの債権βを権利質に設定

これにより,Aは債権αが履行されないときに備えて,債権βを担保(権利質)にとったことになります。

債権βが『第三者の権利の目的であるとき』となる

そして,このときにお父さん(C)が死亡してしまったときを考えてみましょう。

ここまでで見たとおり,息子(D)は相続でお父さん(C)を相続し,債権者=債務者であるDとなります。

このとき,債権者=債務者である息子(D)が誕生するので,債権βの矢印は書けなくなります。

このときに混同させると...Aさんの担保はどうなる?

このようなとき,お父さん(C)が亡くなって息子(D)が相続したことによる混同によって,債権βを自動消滅させてしまうと,第三者としてはいきなり担保が(付従性により)消滅してしまうこととなります。

債権がなくなれば,担保権も付従性でなくなってしまう...!
債権がなくなれば,担保権も付従性でなくなってしまう...!
混同により,担保権者Aが不利益を被ってしまう...!!
混同により,担保権者Aが不利益を被ってしまう...!!

このように,混同によって消滅する債権が第三者の権利の目的になっているとき,つまり,「混同によって消滅する債権(=債権α)が,第三者(A)の権利(=担保権)の目的(=設定先)になっているとき」は,第三者が不利益を被ることのないように,混同による債権の自動消滅は発生しないようになっています

それが,民法520条ただし書きです。

民法520条 【混同】

債権及び債務が同1人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

ウリム

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※前条の解説はこちらです。

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※次条の解説はこちらです。

(絶賛準備中です。もう少々お待ちください!)

 

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参考文献など

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