第3節 代理

民法99条:私たちの生活を便利にする代理制度【分身の術 代理人の召喚】

2021年11月25日

伊藤かずま

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国際行政書士(第21190957号)
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初学者&独学&4ヶ月&一発合格(202点)で行政書士試験に合格しました。
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今回は民法99条を3分でわかりやすく解説します。

※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
太文字は,解説中で大切なポイントです

 

1 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる

2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

民法 第99条【代理行為の要件及び効果】

 

条文の性格

原則、意思表示をして法律効果を発生させる行為をするのは本人として、民法の各条文は設計されています。

しかしながら、人間ひとりにできることなんて限られていますし、場合によっては専門知識を持つ人に自分の代わりに色々手続きや契約をしてもらった方が安心安全メリットたっぷりなこともあり得ます。

そこで、民法は代理という仕組みを認め、99条にてその存在を規定しました。

代理とは、自分の代わりに意思表示をする(または意思表示を受ける)権限を他人に渡し、その権限を持つ他人に自分の代わりに契約などの意思表示をやってもらうことです。

まさに、民法が認めた分身の術です。

代理権を授与した人が、自分の分身と化して、自分の代わりに法律行為をしてきてくれるのです。

皆さんご存知の弁護士はまさに代理をすることで、法律上のトラブルの解決をすることを仕事にしています。

また、観念上の存在でしかない法人は、自然人が代わりに動かなければ何も意思表示をすることができないため、まさに自然人による代理がなければ法人の存在意義すら危ういものになるため、代理は非常に重要な法制度と言えます。

さて、冒頭に述べた通り、意思表示をする主体は原則本人が想定されています

そのため、契約などで意思表示を受ける側は、目の前にいる人自身が契約するものだろうと大体思っています

そのため、円滑な代理制度を実現し、取引の安全を確保するため、代理制度を利用して代理人という分身を作り、かつ意思表示をさせるには一定のルールに沿って行わなければいけません。

「よぉし! 友人のアイツを私の分身にするぞお!」と念じるだけでは、友人のアイツは代理人にはならないのです。

 

条文の能力

代理人がした意思表示の恩恵を自分(=本人)が受けられる

代理人とは、本人から代理権を授与された人のことです。

99条1項は、①本人から代理権を授与された人が+②本人のためにすることを示して+③意思表示したら=その効力は本人に帰属しますよ、と言っています。

 

代理が成立するための要件

代理が成立するための要件は次の通りになります。

  • ①本人から代理人に代理権があらかじめ授与されていること
  • ②代理人が意思表示する際に、本人のためにすることを示していること(=顕名があること)
  • ③意思表示した(=代理行為をした)

順に要件を見ていきましょう。

 

要件①:本人から代理人に代理権が授与されていること

まず、代理制度を利用して代理人という分身に自分の代わりに法律行為をさせたいなら、分身である代理人を創らなければ何も始まりません。

代理人は、代理権という権限を授与することで創ることができます。

代理権の授与は口頭でもOKですが、口頭での代理権授与は代理人が法律行為をする相手から見ると「本当にこいつ代理権持ってるの?」と心配になりますので、実務では委任状を発行して代理権授与することが多いです。

 

要件②:代理人が意思表示する際に、本人のために(意思表示を)することを示していること

代理人は、本人の代理として意思表示する時には、この意思表示は本人のため(本人の代わり)だよ、と相手方にわかるように示さなければいけません。

なぜなら、普通は目の前の人が「これください(購入の申し込み)」の様に特に何も言わずに意思表示してきた場合、相手方は「これを買うのは目の前のこの人だな」と普通は考えるため、「この意思表示は本人さんのためにするんだよ」と相手方に代理行為であることを教えてあげる必要があるからです。

この本人のためにするんだよと示すことを、顕名といいます。

 

要件③:意思表示した(=代理行為をした)

前述の要件①②が揃った状態で、代理行為をすることで代理が成立します。

 

99条1項=能動代理 99条2項=受動代理

99条のメインである1項は、代理人から相手方へ意思表示をするパターンである能動代理を規定しています。

意思表示は相手がいて成り立つわけですから、相手方から代理人へ意思表示するパターンとして、意思表示を受け取る場合もあり得ます。 この意思表示を代理で受け取る場合を、受動代理と言います。

99条2項は、有効な受動代理が成立した場合は、同1項の場合と同じく、その意思表示の効果は本人に帰属するよ、と規定しています。

99条2項がなかったら、代理人は言いたいことは言うけど、相手方からの言われたことは知らね!というような不完全体な代理人しか出来上がらないので、必要な条文と言えますね。

 

コメント

もう一度99条1項を見てみましょう。

『その権限内において』とありますが、代理権には代理できる範囲に制限をかけて授与することが通常です。

この権限内で代理が行われれば良いのですが、この代理権をはみ出てしまった場合、例えば「借りてこいとは言ったけど、買ってこいなんて言ってないやろ!」の場合に、無権代理や表見代理などの問題が顕在化します。

本条文では、無権代理や表見代理はメインとして解説すべき項目ではなかったので、敢えて触れませんでした。

ちゃんと無権代理や表見代理を司る条文がいるので、当該解説はその条文に譲ることとします。 読んでくださりありがとうございました!

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

※前条の解説はこちらです。

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※次条の解説はこちらです。

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