第3節 代理

民法102条:代理人の行為能力【自分で選んだ代理人には責任持てよ】

2021年11月28日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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今回は民法102条を3分でわかりやすく解説します。

※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
太文字は,解説中で大切なポイントです

制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

民法 第102条【代理人の行為能力】

条文の性格

基本的に誰を任意代理人にするのかは本人の自由です。(私的自治の原則)

誰でも自由に代理人にできる考えを貫くと,代理人が制限行為能力者の場合に,代理行為を制限行為能力者が持っている取消権で取り消せるのか,という問題があります。

もし仮に,代理人が制限行為能力者であることを理由に代理行為を取り消せることを認めると、本人としてはひとまず契約したけど契約内容がやっぱり気に入らないならば、「代理人は制限行為能力者だったから、やっぱり取引は無しね」と取り消せることになるため、相手方に比べて本人が圧倒的に有利になります。

これでは制限行為能力者の代理人を相手に立てられた側は,いつ取り消されるかわからない不安定な立場に立たされることになります。

場合によっては,制限行為能力者の代理人が出てきた時点で取引を中止する選択を取ることもあるでしょう。

これでは社会全体において円滑な取引が阻害され,取引経済の停滞を招く可能性すらあります。

そこで,民法102条がこの問題に答えを与えることにしました。

 

条文の能力

前提:制限行為能力者でも代理人になれる

102条本文の書きっぷりを見るとわかりますが、102条は制限行為能力者でも代理人になれる前提で書かれています。

制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。

事実、制限行為能力者は代理人になれます

つまり、未成年者だろうが、事理弁識能力を欠く常況である被後見人だろうが、代理人になれるのです。

 

102条本文:任意代理なら取り消せない

任意代理すなわち自分で選任して代理人を決めた場合は、任意代理人が制限行為能力者であることを理由に取消しはできません

未成年者の任意代理人を選んで、未成年者の未熟さ故に本人に不利な契約が結ばれたとしても、未成年者の代理人を選任したのは本人であって,自分で任意代理人に未成年者を選んだことに起因する不利益は、選任した本人が負うべきだからです。

また、制限行為能力者制度の目的は、自身の法律行為がもたらす経済的効果についての判断能力が高くない者を、不測の不利益から保護することです。

この保護を達成するために、チート能力である取消権を与えられていたのでしたね。

ところが、制限行為能力者が代理人として代理行為をする場合、その効力は本人にしか及ばない訳です。(民法99条1項)

よって制限行為能力者は不利益を被ることはありません。

したがって、制限行為能力者が任意代理人として代理行為をする場合は、制限行為能力者の保護を考えなくて良いため、制限行為能力者制度の目的から考えても102条は取消権を認めなかったのです。

 

ちなみに,本人が選任した任意代理人が実は制限行為能力者であったと,後から知った場合でも,本人は任意代理人が制限行為能力者であることを理由によっては取り消せません。

102条但書:法定代理なら取り消せる

ところが,法定代理において代理人が制限行為能力者である場合は話が変わります。

結論から言うと,法定代理人が制限行為能力者の場合は取り消すことができます

理由を事例に沿って確認していきましょう。

事例:子の親権者が制限行為能力者である場合

上記事例の子は、自分で代理人を選んでいません。 法定代理人の多くは法律の規定によってほぼ強制的に決まります。

そのため任意代理の時に成立した,「自分で選んだ代理人に責任を持てよ」という自己責任の理屈は当てはまらないことになります。

本人に対して選任責任を認めることができないわけですから,制限行為能力者である法定代理人がした代理行為から発生する不利益を本人に受忍させることが正当化できないため,102条は法定代理人が制限行為能力者である場合には取消権を認めました。

 

コメント

任意代理の場合に取消権を認めないあたりの理論は、完全に自己責任論で成り立っていて、自分は結構好きな考え方です。

民法を貫く大原則に私的自治の原則がありました。

私的自治の原則は、自分のことは自分で決める自由を保障してくれているのですが、その裏返しとして私的自治を支えるための自己責任を要求してくるのです。

102条は、代理人に制限行為能力者を認める自由を与える代わりに、その選択に内包される不利益を被るリスクは(相手方ではなく)自分で負えよ、という非常にわかりやすい自己責任の理論構造となっているのです。

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

※102条のただし書きについて,こちらでより詳しく解説しています。

※前条の解説はこちらです。

※次条の解説はこちらです。

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