本記事は,なぜ任意代理権は,本人の破産で消滅し,後見開始では消滅しないのかの理由について解説しています。
※赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:本人の破産は代理委任料金が払えなくなるおそれが大きいため
任意代理権は,本人の破産手続開始で消滅します。
これは,委任関係である任意代理の場合,本人が破産した場合,委任料が支払えないおそれが大きいためです。
一方で,任意代理権は,本人の後見開始では消滅しません。
なぜなら,本人が制限行為能力者となった場合は,判断能力のある代理人がつくべき状態であり,代理制度の本領発揮する場面であるからです。
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解説:任意代理は,信頼関係で成り立っていることが理解のポイント
代理には,任意代理と法定代理の2つが存在します。
任意代理の場合は,代理を支えているのは,委任者と任意代理人間の信頼関係です。
また,実務上,委任による代理が行われる場合は,有償である場合が多いです。
(弁護士を雇うのをイメージするのが分かりやすいかと思います。 弁護士を雇う際に無料でお願するような場合はあまり考えられないでしょう。)
ここで,委任による任意代理権の消滅を規定する653条を確認してみましょう。
委任は,次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
民法653条
民法653条3号を見ると,受任者(任意代理人)に後見開始の審判があった際に任意代理権が消滅すると書かれています。
本号のみ,委任者の後見開始の審判が代理権消滅対象になっておりません。
代理を頼んだ委任者が後見開始により制限行為能力者となった場合,これは正常な判断能力がある代理人が代わりに法律行為を行うのは,代理制度が活躍する場面であるため,任意代理関係は継続します。
一方で,653条2号では,委任者が破産手続開始をした場合は,後見開始の場合と違い,任意代理関係は消滅する規定になっています。
このようになっているのは,前述のとおり,任意代理は委任者と受任者間の信頼関係と報酬関係とで成り立っていることが理由です。
委任者が破産手続開始をしたということは,多くの場合,委任者が多重債務に苦しんでいるような状況にあります。
また,破産手続が開始すると,当該破産予定者は自由にその財産を処分できなくなります。
したがって,委任による代理の報酬を支払い又は回収が難しくなるおそれがあり,このような場合にまで代理を継続させるのは,任意代理人にとって酷です。
したがって,委任者に破産手続開始という事態が発生した際は,民法653条2号によって,自動的に代理関係が解消されるようなっているのです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。