法定地上権ってムンズカシ―――!!!!!!
わかりやすく解説して!!!
本記事は,そもそも法定地上権が誰のためにあるのか?何のためにあるのか?という,とにかく法定地上権に関する基礎中の基礎知識を解説をしています。
本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。
- 法定地上権が誰のために,何のために存在するのか知ることができる
- 法定地上権の成立要件を根本から理解できる
- 法定地上権を完全理解する2つのポイントを知ることができる
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち
読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
【解説】法定地上権の成立要件は,2つのポイントをおさえよう!
民法388条 【法定地上権】
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
超前提知識『建物の所有には,必ず土地を利用する権利が必要!』
法定地上権の解説をする前に,法定地上権を理解するために絶対に頭にブチ込んでおかなければならない知識があります。
それは,『建物の所有には,必ず土地を利用する権利が必要!』という知識です。
日本には空中に浮いた建物の建築は認められていないので,一軒家だろうがマンションだろうが,建物を所有するには例外なく,建物が建っている土地を利用する権利が必要となります。
自分の土地の上の建物の所有者や,これから自分の土地に家を建てようとする者については,土地の所有権が”土地を利用する権利”となります。
対して,他人の土地の上に建物を所有することになる人は,土地の所有権以外で,土地を利用する権利を備えることが必要となります。
所有権以外の土地を利用する権利は以下の2つ存在します。
- 地上権(民法265条)
- 賃借権(民法601条)
他人の土地の上に建物を所有しようとして,地上権も賃借権も得られなかったときは,建物はどうなるの?
その場合,建物は取り壊さないといけないよ!
ええ…,建物って安いものじゃないし,もったいなくない…?
建物はもったいないかもしれませんが,所有権絶対の原則がありますので,土地の持ち主の所有権は絶対です。
土地の所有者が許可していない建物が建っていることで,土地は侵害され,その土地の価値はほぼゼロとなってしまいます。
土地の所有権を守るため,土地の侵害を排除,すなわち,建物を物理的に取り去るために取り壊すことが認められているのです。
まとめると,建物を所有するには,以下の権利のいずれかを“必ず”備える必要があります。
【建物を所有するため,絶対に備える必要がある権利】
つまり,『建物の所有には,必ず土地を利用する権利(所有権or地上権or賃借権)が必要!』ということです。
※借地借家法では,建物の所有を目的とする場合の地上権or賃借権のことを借地権と言います。(宅建受験生は憶えておきましょう。 行政書士受験の場合は,借地権の定義ついては,そこまで意識しなくてもOKと思います。)
法定地上権とは?
ここまでで,土地の上に建物を所有する際には所有権・地上権・賃借権のいずれかを備える必要があることを確認しました。
自分の土地の上に自分の建物を所有する場合,つまり,土地を利用する権利が所有権である場合には複雑な問題は起こりません。
問題が起こりやすいのは,他人の土地を利用するケース,すなわち,地上権or賃借権が必要となるケースです。
賃借権も,用益物権である地上権も,契約でないと成立しませんよね?
普通,建物を購入する際には,事前に土地の所有者と借地権の承諾を取ってから購入に踏み切りますよね?
土地の権利者と借地権の承諾も取らずに,地上権も賃借権も無い建物を購入するなんてありえないでしょwww
そんな建物を購入しても取り壊さないといけないかもしれないやん笑
それが,実は,土地の所有者と借地権の承諾を取れないような状況で,地上権も賃借権も無い建物を購入することとなるケースが存在するのです。
それが競売のケースです。
競売とは,債務不履行などがあった際に,抵当権などの担保権を実行し,差押さえた不動産を強制的に売却することです。
競売だとなんで地上権も借地権も無い土地を購入するような状況が発生するの?
たとえば,土地も建物もAさんの所有だとして,Aが借金を返せず,抵当権が実行され建物だけが競売されたとします。
ここで問題になるのが,落札者Bは建物の所有者が絶対に備えなければならない”土地を利用する権利”を持っていない点です。
他人(A)の土地の上の建物なのですから,落札者Bは,Aとの間で地上権か賃借権を成立させなければいけません。
しかし,事例において,Aさんは建物を裁判所に差押えられ,建物の処分権を失い,強制的に建物を売りに出された立場にあります。
きっと本当は建物を競売で手放したくなかったでしょうし,そんなAさんが,競売手続きや,新たな所有者(B)が建物を維持するための地上権や賃借権の成立に対し,快く積極的な協力はしてくれないでしょう。
それに,土地を利用する権利を得られなかった建物は,前述のとおり取り壊さなければいけません。
そうであれば,Aは,Bに地上権も賃借権も与えなければ,そのうち建物は取り壊され,Aは更地が手に入りますので,資金繰りが解決したあと,Aは改めてマイホームを建てることもできます。
つまり,Aは,落札者Bに協力しない方がメリットがあるのです。
そうなると…買っても取り壊しほぼ確定だよね?
事例みたいな家を競売で買う人なんかいなくね?
そのとおりです。
こんな建物買う人なんていません。
それじゃあ競売制度意味なくない?
誰も買わないなら,競売を経由しなきゃいけない抵当権って制度も誰も利用しなくなっちゃうよね?
そんなときに大活躍するのが法定地上権なんだ!
上記のような,”土地を利用する権利”を手に入れることが期待できないにも関わらず,建物を購入しなければいけないようなケースに対応するため,民法は,法定地上権という制度を用意しました。
法定地上権とは,字のごとく,法定の要件を満たせば自動発生する地上権のことです。
細かい要件は後で解説しますが,前述の競売での落札者Bさんには,自動発生した法定地上権が与えられます。
よって,土地の所有者であるAさんと借地権の交渉をすることなく,Aさんの土地を正当に利用することが可能となります。(当然,建物を取り壊す必要もありません)
これが法定地上権のチカラです。
法定地上権は誰のためにある?
ここまでで法定地上権という,地上権が自動発生する制度・権利が存在することを説明しました。
では,法定地上権という制度は誰のために存在するのでしょうか?
これは法定地上権が成立すると誰が得をするのか?ということと同じです。
ここまでの解説を読み進めていると,なんとなくわかっている気もしますが,改めて整理しておきます。
答えですが,法定地上権が成立すると得をするのは,借地権取得の見込み無く,他人の土地上の建物を取得した人(先の事例の落札者B)です。
逆に言うと,法定地上権が成立すると損をするのは法定地上権が成立した建物が建っている土地の所有者(先の事例のA)です。
なんで土地の所有者が損なの?
法定地上権が成立しても地代は裁判所が決定して,建物の所有者から支払ってもらえるんでしょ?
民法388条 【法定地上権】
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
たしかに地代が発生すべき場合には,請求をすれば裁判所経由で確保ができます。
しかし,基本的に土地というのは更地で自由に使える場合が最も価値が高いんだ。
たとえばもし,みなさんが,更地かアパートが既に建ってしまっている,同じ広さの土地をどちらか好きな方が貰えるとするなら,どちらを選ぶでしょうか?
更地であれば,その使い方は無限大です。
自分のマイホームを建ててもいいし,マンションを建てて高めの家賃収入を得てもいいし,コインパーキングにして稼ぐこともできるでしょう。
しかし,既にアパートが建ってしまっている土地は,アパートの土台になるという使い道しかありません。
このように,土地の使い道の多さから分かるとおり,土地というのは更地であると高い価値を持っているのです。
なるほど! それと法定地上権と何が関係あるの?
法定地上権が成立するということは,“その土地の所有者以外のこの世の誰かが,その土地を正当に利用できる”ということを意味します。
誰かが土地を正当に利用できてしまうということは,それは,実質的には土地は更地ではないことと同じです。
すなわち,その土地の所有者としては,土地を自由に使えなくなりますので,法定地上権は成立してほしくないものです。
対して,逆に,競売で他人の土地上の建物を手に入れた人からすれば,法定地上権が成立してくれれば,土地を正当に利用できる権利が自動的に手に入ります。
したがって,法定地上権が成立すると得をするのは,土地の所有者ではなく,他人の土地の上の建物の所有者なのです。
法定地上権の成立要件
ここまでで,法定地上権がどのようなものなのか,法定地上権は誰のためにあるのか?について解説してきました。
ここから,資格試験などでも頻繁に問われる法定地上権の成立要件について解説していきます。
まず最初に,法定地上権の成立要件を確認しましょう。
【法定地上権の成立要件】
- Ⅰ:抵当権設定時,土地の上に建物が存在すること
- Ⅱ:土地と建物が同一の所有者に属すること
- Ⅲ:土地又は建物に抵当権が設定されたこと
- Ⅳ:土地又は建物の所有者が競売によって異なるに至ったこと
これ,丸暗記するの・・・?汗
丸暗記は効率が悪いので,要件暗記・理解のためのポイントが2つあるんだ。
それを今から教えるよ!
法定地上権の成立要件を理解するためのポイントは次の2つです。
【法定地上権の理解ポイント2つ】
- ①:抵当権者が損をしないか?
- ②:抵当権設定時に,抵当権者は何を見ていたか?
この2つのポイントをおさえると,理解を伴った法定地上権の成立要件の暗記が可能となります。
それではポイントをおさえつつ,各成立要件を確認していきましょう。
要件Ⅰ:抵当権設定時,土地の上に建物が存在すること
法定地上権が成立するための最初の要件として,抵当権を設定した時点で,土地の上に建物が建っていなければいけません。
なぜ,抵当権設定時に土地の上に建物があることが要件とされているのでしょうか?
各成立要件たちは,法定地上権をこの世に誕生させるために必要であるから要件とされているのです。
そうであれば,この要件Ⅰも,理由があって要件に指定されているはずです。
では,その理由がなにかを確認しましょう。
要件Ⅳ(土地又は建物の所有者が競売によって異なるに至ったこと)にもあるとおり,法定地上権の成立には競売を経る必要があります。
競売を経る必要があるということは,抵当権が実行されることが必要であり,抵当権の実行が必要ということは,抵当権者が存在するということです。
抵当権者は,何かしらの債権を有する債権者であり,債権の履行を確保するために手間と時間をかけて抵当権を用意しています。
民法は債権という権利の存在を認めた立場であることから,債権の履行を確実にする責務を負っています。
したがって,債権者かつ抵当権という担保まで用意した抵当権者を,不利・おざなり・悪く扱うようなことは民法としては許されません。
つまり,抵当権者を損させてはいけない(ポイント①)のです。
それは当然,法定地上権が成立するかしないかの場面でも同様です。
では,法定地上権が抵当権者に損をさせるような場面というのは,どのような場合でしょうか?
ここを考えるのが,抵当権設定時に,抵当権者は何を見ていたか?(ポイント②)です。
つまり,抵当権者が抵当権を設定したときに「この土地には法定地上権が成立しないだろうなぁ・・・」と,法定地上権が成立しないような土地を見ていたとき,その後にその土地に法定地上権が成立すると,抵当権者は”法定地上権が成立しないだろうという期待を裏切られ損をする”と言えます。
法定地上権が成立しないように見える土地というのは,どのような土地なんだ?
それは,更地の土地だよ!
更地の土地は,前述のとおり使い道がたくさんあるので,基本的に高い資産性を持ちます。
更地の抵当権者になろうとする者からすると,「抵当権実行による競売になっても,更地なら,高く売れるだろう」と計算・期待して抵当権を手に入れています。
ところがこの抵当権者が存在する更地に法定地上権を成立させてしまうと,“その土地(更地)の所有者以外のこの世の誰かが,その土地を正当に利用できる”ようになってしまいます。
このような土地は,土地の使い道が“法定地上権者が決めた方法オンリー”に制限されてしまうため,その価値は非常に安価になります。
これでは競売額が下がり,抵当権者が抵当権から回収しようとしたお金が少なくなり,抵当権者が損をしてしまいます。
よって,更地の土地に法定地上権を成立させてはいけないのです。
逆に言えば,土地の上に建物が建っている場合,抵当権者は「あ,この土地はあの建物が建っているから安めだな~」と,“更地でない事実”を見ています。(ポイント①)
なので,土地の上に建物が建っているなら,法定地上権を成立させたとしても,抵当権者は元々更地でない土地の担保的価値を期待していたので,損をしません。(ポイント②)
したがって,法定地上権は,抵当権設定時に,更地ではなく,土地の上に建物が建っていることがまず要件とされているのです。
要件Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ
法定地上権の成立OKの第一関門は,「抵当権設定時に,土地の上に建物が建っていること(要件Ⅰ)」をクリアすることでした。
残りの要件はⅡ・Ⅲ・Ⅳの3つですが,実は残りの3つの要件は,法定地上権という強制的地上権をわざわざ用意した理由を理解できていれば当然の要件となります。
- 要件Ⅱ:土地と建物が同一の所有者に属すること
- 要件Ⅲ:土地又は建物に抵当権が設定されたこと
- 要件Ⅳ:土地又は建物の所有者が競売によって異なるに至ったこと
この記事の前半で,法定地上権という強制的地上権がなぜ存在するのかを解説しましたが,憶えていますでしょうか?
なんだったっけ?
法定地上権は,土地・建物が同一所有者だったのに,競売で土地・建物の所有者が別々になったときの調整役!…だったね!
忘れちゃったらこの記事の前半で復習してね!
法定地上権は,“競売を介して土地・建物の所有者が別々になったとき“に活躍する権利ですので,もともとは土地・建物の所有者が同じでなければいけません。
よって,要件Ⅱとして『土地と建物が同一の所有者に属すること』が必要です。
次に,“競売”というイベントが必要ですので,競売を発生させる前段階の“抵当権の設定”というイベントが当然必要になります。
したがって,要件Ⅲとして『土地又は建物に抵当権が設定されたこと』が必要となります。
最後に,“競売を介して土地・建物の所有者が別々になったとき“が法定地上権の出番ですので,要件Ⅳ『土地又は建物の所有者が競売によって異なるに至ったこと』も必要となっています。
要件まとめ
長くなっちゃいましたので,改めて法定地上権成立の要件を記載しておきます。
【法定地上権の成立要件】
- Ⅰ:抵当権設定時,土地の上に建物が存在すること
- Ⅱ:土地と建物が同一の所有者に属すること
- Ⅲ:土地又は建物に抵当権が設定されたこと
- Ⅳ:土地又は建物の所有者が競売によって異なるに至ったこと
判例問題(この場合に法定地上権は成立するかしないか問題)って,この要件に当てはめれば解けるっていうけど…なんか,色々と特殊なケースを問われたりして…
単純にあてはめるだけだと解けなくない?
そうだね!
でも,実は判例問題を解く際に,要件だけでなくポイント①②もあてはめて考えると,ちゃんと正解できるんだ。
この記事がとんでもなく長くなってしまったので,法定地上権の判例問題の解き方は別の記事で解説するね!
※法定地上権の判例問題の解き方の解説記事は,今大急ぎで準備しています! もう少しお待ちください!
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
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※前条の解説はこちらです。
(絶賛準備中です! もう少々お待ちください!)
※次条の解説はこちらです。
(絶賛準備中です! もう少々お待ちください!)
※人気記事も是非あわせて読んで,勉強効率をUPしましょう!
参考文献など
参考文献
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
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筆者が,行政書士試験に,4ヶ月の独学で・仕事をしながら・202点で一発合格したノウハウや勉強法,使用テキストを無料公開しています。
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