第3款 更改

【民法513条:更改はスクラップ&ビルド】更改をわかりやすく解説!

2023年8月21日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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ウリム

債権消滅事由のうちのひとつ,“更改”ですが,あんまり日常生活でも聞かないですよね?

契約“更新”はよく耳にしますが?

更改とはどんなものなの?

本記事は,民法513条の更改について,どのようなものなのか,基礎の基礎から解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 更改がどのようなものなのかが理解できる
  • 更改の要件がわかる
  • 更改の具体例を知ることができる
  • 契約更改と契約更新の違いを知ることができる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

※本ブログでは,記事内容を要約したものを先に【結論】としてまとめ,その後【解説】で詳細に説明をしていますので,読者さまの用途に合わせて柔軟にご利用ください!!

【結論】更改は,債権のスクラップ&ビルド!

民法513条 【更改】

当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する
 一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
 二 従前の債務者が第三者と交替するもの
 三 従前の債権者が第三者と交替するもの

更改は,5つ存在する債権の消滅のうちのひとつで,その要件に契約を必要とするものです。

【債権の消滅 5つ】

債権の消滅 要件まとめ
債権の消滅 要件まとめ

 

更改は,債権債務をスクラップ(廃棄)&ビルド(構築)するもので,給付内容・債務者・債権者のいずれかの変更を伴う必要があります

このうち,債務者の変更は免責的債務引受,債権者の変更は債権譲渡とほぼ同内容の規定となります

 

【解説】更改には必ず”契約”が必要とされている

更改は債権編第6節に規定される“債権の消滅”の仲間のひとり

民法典の債権編第6節には,債権を消滅させる法的効果を持つ行為が以下の5つ規定されており,本記事で解説する更改も仲間に含まれています。

【債権の消滅 5つ】

これらの発動要件を取りまとめると以下のようになります。

以下の要件をなんとなく(なんとなくでOKです)憶えておくと,多数当事者の債権関係分野における絶対効を丸暗記しなくてもOKになりますので,頭の片隅に入れておきましょう。

債権の消滅 要件まとめ
債権の消滅 要件まとめ

 

更改は債権のスクラップ&ビルド

スクラップ&ビルドという言葉をご存知でしょうか?

スクラップ&ビルドとは,ビルのような建築物で古くなったものを廃棄して,新設備に置き換えること,ビジネス上では採算の悪い部署・組織を解体し,新しい部署を設置するようなことを指す言葉です。

つまり,破壊と創造を同時に行おうという概念・方法が,スクラップ&ビルドです。

 

民法典も,債権について,このスクラップ&ビルドを取り入れており,その方法が更改です。

条文も,スクラップ&ビルド感のある雰囲気で書かれています。

ウリム

(スクラップ&ビルド感のある雰囲気ってどんな雰囲気だよ…。)

 

民法513条 【更改】

当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する
 一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
 二 従前の債務者が第三者と交替するもの
 三 従前の債権者が第三者と交替するもの

『従前の債務に代えて,新たな債務・・・を発生させる契約をしたときは,従前の債務は,更改によって消滅する。』とあるとおり…

古い債権債務の代わりに,新しい債権債務を発生させる契約がされたとき,古い債権債務は消滅します。

つまり,更改は,古い債権債務をスクラップ(廃棄)し,新しい債権債務をビルド(構築)するのです。

 

更改には必ず契約が必要

更改(民法513条)の条文で,注目して欲しい単語があります。

それが『契約』です。

民法513条 【更改】

当事者が従前の債務に代えて、新たな債務・・(略)・・を発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
 (以下,略)

すなわち,更改は債権債務のスクラップ&ビルド契約をしたときに認められることを意味し,更改を行うには契約が必要ということになります。

 

債権の消滅方法5つの中で,契約を要件に要求するのは更改だけです。

債権の消滅 要件まとめ
債権の消滅 要件まとめ

一方的な意思表示のみで債権が消滅する相殺や免除,債権債務が同一人に属した事情のみをもって債権が消滅する混同と比べ,更改は契約が必要な点でずいぶんと形式的・格式高い方法であるんだなぁ…と頭の片隅でイメージを持っておくと債権の消滅分野の理解がはかどると思います。

 

契約更新と契約更改は何が違うの?

更改には契約が必須であることを確認しましたが,更改をする場合を日常的に「契約更改」なんて言ったりします。

この契約更改に似た言葉に「契約更新」がありますが,それぞれ似てますが意味は若干違います。

 

契約更改は,スクラップ&ビルドであるので,旧債権債務をベースに,以下のいずれかの変更を加えて新しい債権債務を構築する行為のことです。

民法513条 【更改】

(柱書き,略)
 一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
 二 従前の債務者が第三者と交替するもの
 三 従前の債権者が第三者と交替するもの

 

対して,契約更新は,契約の給付や内容はそのままで,契約期間を延長する行為を指す場合に使われます

つまり,契約更新は,基本的には,債権債務はそのまま次期の契約期間中にも使いまわされるので,スクラップもビルドもありません

 

契約“更改”を,日常でよく耳にするとすれば,プロ野球選手が所属球団と来年の年俸(給料)を双方納得して翌期の契約をする行為を指すケースかなと思います。

来年1年間の年俸の額が,今年の年俸からいくら増えるor減るのかは,プロ野球選手にとって,契約における非常に重要な給付内容でありますので,民法513条1号の『従前の給付の内容について重要な変更をするもの』と言えます。

民法513条 【更改】

当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
 一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
 (以下,略)

したがって,プロ野球選手と球団間での契約はニュースなどでも,契約“更改”と呼ばれているのです。

 

ウリム

でも,契約期間を延長する場合も,契約がいつまで続くのかという点で『重要な変更をするもの』と言えませんか?

それなのに契約期間を延長する場合は,契約更改とは言わないのですか?

更改を定める民法513条1号は『従前の給付の内容について重要な変更をするもの』が,更改にあたると言っています。

プロ野球選手の年俸すなわちお給料は,球団側からの給付(債権の目的)ですが,契約期間がいつまでなのかは給付ではありませんので,更改の定義にはあてはまらないのです。

 

債務者交替の更改≒免責的債務引受,債権者交替の更改≒債権譲渡

ウリム

給付内容の重要な変更のみが更改に該当するの?

更改に該当する行為はあと2つ定められています。

民法513条 【更改】

(柱書き,略)
 一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
 二 従前の債務者が第三者と交替するもの
 三 従前の債権者が第三者と交替するもの

債務者が交代する場合(513条2号)と,債権者が交代する場合(513条1号)も,更改にあてはまります。

それぞれの場合の詳細な解説は,別の条文の解説記事で行います。

 

ウリム

ところで…債権債務関係があって,債務者が交代する・債権者が交代するって,民法に同じような規定ありませんでしたっけ?

実は,債務者交替の更改・債権者交替の更改には,ほぼ同じルールが民法典に存在します。

以上のような対応で,免責的債務引受や債権譲渡は更改とほぼ同内容を定めた規定となっています。

更改と,免責的債務引受や債権譲渡は,法的効果面・担保権との関係・要件もほぼ同じであるため,更改ルールを削除する検討も以前されたようですが,今のところ現状維持する方向になり見送られたようです。

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

ウリム

励みになりますので,もしこの記事がみなさまの学習に少しでも役に立ちましたら,一言でもよいので応援コメント頂けますと大変うれしいです!

 

※前条の解説はこちらです。

(絶賛準備中です。もう少々お待ちください!)

※次条の解説はこちらです。

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