第2章 契約

【民法・契約総論:契約自由の原則】契約とはそもそも何なのか?

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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ウリム

どんな人でも「契約」って言葉を日常用語として使っていますが,法学において契約というものはどのような性質のものなのでしょうか?

本記事では,「契約」についての法的性質について,詳しく解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 法律用語「契約」について基礎の基礎から理解できる
  • 契約によって発生する法的効果に関する矛盾問題を知ることができる
  • 契約と法律行為の関連性を理解できる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:契約とは,法的効果が発動する約束

契約とは,法的効果が発動する約束のことです。

 

契約を成立させるため,当事者たちは,①法的効果を発生させることを目的として,②約束を結ぶという双方向の意思の合致(=意思表示の合致)を行うこととなり,これは法律行為の定義にあてはまります

すなわち契約とは,両当事者の双方向の法律行為のことと言えるのです。

(※法律行為の定義: 法律行為=①法的効果の発生を目的+②意思表示行為)

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民法において,法律行為には私的自治の原則が適用され,契約の構成要素に法律行為が入っていることから,当然に,契約にも私的自治の原則が適用されることになり,契約の側面においての私的自治の原則を契約自由の原則といいます。

 

契約自由の原則は4つの自由で構成されるとされています。

【契約自由の原則 4つの自由】

  • ①:契約締結の自由
  • ②:相手方選択の自由
  • ③:方式の自由
  • ④:内容形成の自由

 

解説:契約は4つの自由に支えられている

契約とは

契約とは,法的効果が発動する約束のことです。

 

みなさんも日常生活において,約束はよくしていると思います。

「〇〇君の家に3時に集合ねー!」

「△△日にご飯にいこう!」

「■■時に金時計の前で待ち合わせね」

当たり前のように私たちの周りには約束があふれています。

 

しかし,約束の中には,法的効果,すなわち法律で保護され得る権利や義務を発生させる約束が存在し,この法的効果を発生させる約束のことを“契約”と呼びます。

 

前述の法的効果を発生させない約束,待ち合わせなどの約束は最悪反故にして守らなかったとしても,友人知人から非難されるなどの倫理的な制裁を受けるに留まります。

しかし,“契約”はその定義から法的効果(=権利及び義務)が発動するので,契約を反故にした場合は,制裁も倫理的なものに収まらず,法的制裁を受けることになります。(法的制裁の代表的なものは損害賠償請求です。)

つまり,契約は法的に強く保護してもらえる権利(とその裏返しである義務)を発生させることができる約束なのです

 

契約と私的自治の原則

※ここから先は法律用語『法律行為』とその定義である『法律行為=①法的効果の発生を目的+②意思表示行為』を正確に理解していることを前提に書いています。 この理解に不安がある場合は,以下の記事に目を通してから戻ってきてください。

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契約とは,法的効果を発生させる約束のことであることを,ここまでで確認しました。

 

さて,契約をする当事者たちは,①法的効果を発生させることを目的として,②約束を結ぶという双方向の意思の合致(=意思表示の合致)を行うこととなります

これは,法律行為=①法的効果の発生を目的+②意思表示行為の定義がズバリ当てはまります

つまり,契約とは,両当事者の双方向の法律行為のことだったのです。

 

さて,民法には,私たちが法律行為をするかしないか,また,どのような法律行為をするかについて,国や第三者のような誰からも強制されないという私的自治の原則が存在します。

法律行為において民法の大原則である私的自治の原則が適用されるということは,その法律行為を要素とする契約においても,当然に私的自治の原則が適用されます。

 

つまり,契約をするかしないか=契約を成立させる法律行為をするかしないか,などについても私的自治の原則が適用され,契約に関して多くの自由が保障されているということです。

契約の側面において,私的自治の原則が適用されることを,契約自由の原則といったりします。

 

契約自由の原則の4つの自由

契約は法律行為が構成要素となっており,私的自治の原則の適用範囲であり,特別に契約自由の原則と呼ばれているのでしたね。

契約自由の原則は,4つの自由で構成されているとされており,それぞれ以下のとおりです。

【契約自由の原則 4つの自由】

  • ①:契約締結の自由
  • ②:相手方選択の自由
  • ③:方式の自由
  • ④:内容形成の自由

それぞれの自由を個別に確認しましょう。

 

①:契約締結の自由

何人も契約をするかどうかを自由に決定することができます。(民法521条1項)

契約を締結するかしないかは,完全に私たち個人の自由であり,契約を強制されることはありません。

 

契約をするために必要なのは法律行為であり,法律行為には意思表示が必須でしたね。

意思表示とは,私たちの内面の意思を外部に表示することですので,思ってもいないことを外部に表示することを強制されることは当然にあり得ないのです

※ちなみに,意思表示を外部的要因・圧力で強制された際のルールが民法96条【詐欺・強迫】です。 こちらで詳しく解説していますので,是非あわせて読んでみてください!

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②:相手方選択の自由

契約の相手方を自由に選択することができます

 

③:方式の自由

法令に特別の定めがある場合を除いて,契約を成立させるには,どのような方式で契約を締結してもよいし,方式を備えることさえしなくてもOKです

 

方式の自由の例外として,民法に特別の定めがある場合の代表的な例は保証契約(民法446条2項)です。

保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

民法446条2項 【保証人の責任等】

保証契約は必ず書面で契約しなければいけません

書面で契約が交わされていない場合は,その保証契約は効力を生じず,無効となります。

保証人は保証契約において一方的に義務のみ負うデメリットオンリーの立場に置かれるため,口頭によって簡易に契約が成立するのを防ぎ,契約をするかしないかについて慎重な判断の機会を与える趣旨です。

 

④:内容形成の自由

契約の当事者は,契約の内容を自由に決定できます

ただし,法令の制限を常に受けます。(民法90条)

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契約総論とは何なのか

この記事で学んだ契約自由の原則をはじめとして,民法では第521条~第548条の4までで契約総論,すなわち契約行為全般に共通のルールを整備しています。

売買契約など名前のついた個別の契約については“契約各論”と呼ばれ,分厚めの基本書などは“契約総論”・“契約各論”などと分類されることもあります。

本記事の最後に,なぜ契約総論を学ぶ必要があるのか,少し触れて終わりにしたいと思います。

 

本記事冒頭の復習になりますが,契約とは,法的効果の発生する約束のことでした。

法的効果とは,主に法律や条例等の法規範に認められた,法的に保護された影響力を持つ権利(とその裏返しの義務)のことです。

法的に保護された権利ということは,法律や条例等の法規範に認められた権利の実現がされないときは,裁判所に訴えを起こすことができ,判決という強制力を持つ裁判により紛争の解決を依頼することができるのです。

 

さて,契約は,その約束によって生み出された権利について法的効果が発生するものです。

契約によって生み出された権利は,その内容は④契約形成の自由により,契約当事者たちによって自由な内容で構成されます。

つまり,契約によって生み出される権利の内容は,千差万別であり,無数のパターンが存在するということです。

 

そして,私たちが契約において自由意思で勝手に生み出した権利は,法的効果を持ちます。

法的効果を持つということは,自由意思で勝手に生み出した権利は法的に保護されるということです。

そしてそれは,契約で自由に生み出した権利の履行・内容などで紛争になったら,裁判所に解決を求めることができるということを意味します。

 

しかし,憲法の知識を少し思い出して欲しいのですが,裁判所(裁判官)は『憲法及び法律にのみ拘束される』ことが日本国憲法で規定されています。

すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される

日本国憲法76条3項

つまり,裁判所(裁判官)は,紛争を解決するときに判断する手段として使えるのは憲法・法律のみということになります

 

ところが,契約の内容は国民が自由に作ってきて,その契約が千差万別の法的効果を発し続けているのです。

この千差万別の法的効果を発している契約のトラブルを,法律のみを用いて解決しなければいけないのが裁判所(裁判官)です(厳密には“法律のみ”ではなく,原理・原則・判例法理・法慣習なども解決手段として利用できるとされています。)

つまり,契約というものは,その法的効果はあらゆる内容での創造が認められているのに,裁判所はその契約の取扱いについて,法律(等の法規範)しか用いることができない…という矛盾をはらんだ存在なのです

 

また,裁判所は私たち国民の税金で運営されており,国民の裁判所に対する信頼のうえに成り立っている機関ですので,紛争を解決すると言っても,多くの国民から納得を得られる解決(判決)を導く必要があるのです。

よって,契約総論という学術分野において,「契約の取扱いはこうすべきだよね?」「契約の〇〇についてはこう処理しよう」という,国民が納得しつつ,裁判所が解決手段として利用できる原理・原則・条文を用意しておく必要性が生まれたのです。

そして,この“裁判所が解決手段として利用できる原理・原則・条文“が,みなさんが試験に向けて勉強して頭に入れておくべき契約総論の知識なのです。

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

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参考文献など

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この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

 

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