第3款 更改

【民法514条:法的効果は免責的債務引受と同じ】債務者変更の更改をわかりやすく解説

2023年12月28日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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ウリム

債務者変更の更改って,法的効果が免責的債務引受と同じらしいじゃないですか?

どういうこと?

本記事は,債務者変更の更改について,法的効果や要件について,初学者の方に向けて基礎から解説しています!

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 更改制度の概要を俯瞰することができる
  • 債務者変更の更改の要件を知ることができる
  • 債務者変更の更改≒免責的債務引受であることがわかる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で行政書士・2週間の独学で宅建に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

※本ブログでは,記事内容を要約したものを先に【結論】としてまとめ,その後【解説】で詳細に説明をしていますので,読者さまの用途に合わせて柔軟にご利用ください!!

【結論】債務者変更の更改≒免責的債務引受

民法514条 【債務者の交替による更改】

1 債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる
2 債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない。

【民法514条 債務者変更の更改の要件】

  • ①:債権者と新債務者間での更改契約の締結
  • ②:更改契約締結の事実を旧債務者に通知

 

民法典上には,更改とほぼ同じ法的効果を発生させる別制度が用意されています。

【更改 VS 免責的債務引受・債権譲渡の関係】

  • 債務者変更の更改(民法514条)≒免責的債務引受(民法472条)
  • 債権者変更の更改(民法515条)≒債権譲渡(民法466条1項・民法467条)

 

また,民法514条の要件②の通知は,確定日付のある証書で行う必要はありません

理由は,民法514条の守備範囲である債務者変更の更改では,債務者が債権者を取り違える状況が発生しないからです。

対して,次条である民法515条(債権者変更の更改)では,更改契約を確定日付のある証書で行う必要があります。

※民法515条(債権者変更の更改)で確定日付のある証書が必要となる理由は,以下の記事で詳細に解説していますので,是非併せてご確認ください!

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【解説】債務者変更の更改では,確定日付のある証書は不要

本条文は民法513条と民法515条(債権者交替の更改)とセットで確認!

まず,更改という制度は,債権債務関係の重要部分を一度解消し,新たな債権債務関係を発生させる,債権のスクラップ&ビルド制度でした。

民法514条を学習する前に,この更改という制度自体をしっかり認識しておきましょう。

民法513条の詳細は「【民法513条:更改はスクラップ&ビルド】更改をわかりやすく解説!」を是非読んでみてください。

 

スクラップ&ビルドとは言うものの,一旦成立している債権の内容を軽々しく変更することはあまりよろしくありません。

債務者は債権の本旨に沿った内容の履行を目指して弁済を目指しているのですから,そう簡単に債権の内容を変更されては困るのです。

 

そこで,民法典においては,債権において非常に重要と言える以下の3点のどれかを変更する場合において,更改という制度を認めています。(民法513条)

民法513条 【更改】

一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
二 従前の債務者が第三者と交替するもの
三 従前の債権者が第三者と交替するもの

 

これに対し,本条514条は513条2号の債務者が別の人と交替するケースについてのルールを担当しています。

対して,民法515条は513条3号の債権者が別の人と交替するケースについてのルールを定めています。

よって,民法513条が更改というスクラップ&ビルド制度の骨組みを担当し,514条と515条がそれぞれのパターンを担当している…という役割分担で,更改制度は作られています

この全体像をおさえておくと,更改の理解の見通しが非常に良くなるので,しっかりおさえておきましょう!

(民法は私的自治の原則・契約自由の原則に支えられていますので,当事者たちが合意すれば軽微な債権の変更も可能です。 一度成立した債権は全く変更できない…?と誤解をしないように,念のため補足いたします。)

 

債務者交替(民法514条1項)

債務者が交代する更改の場合,債権者と新債務者との契約によって成立します。

債務者変更の更改 初期状態
契約は赤枠の2人で行う
法的効果:債権が移る!
債務者が変更されて完了

このとき,更改契約は赤枠内の2人でのみ行われていることを確認してください。

試しに,旧債務者を手で隠して,先ほどの各図をもう一度追ってみてください。

それでも,債務者変更の更改が行えることがわかるはずです。

 

つまり,旧債務者が全くあずかり知らないところでも債務者変更の更改は行うことができるのです。

そして,旧債務者が更改の事実を知らないと,債務者ではなくなっていたのに,弁済をしてしまう危険があります。

 

そのため,民法514条は,更改契約の締結だけではダメで,更改契約の事実を旧債務者に対して行わないとダメというルールを採用しています。

民法514条1項 【債務者の交替による更改】

1 債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる

 

また,債務者の交代についての旧債務者への“契約した旨の通知”は,確定日付のある証書でする必要はありません

対して,債権者が交代する更改(民法515条)の“契約”は,確定日付のある証書で行う必要がありますので,対比して記憶しておく必要があります。(つまり,債権者変更の更改は要式契約ということになります)

 

なぜ確定日付のある証書が必要・不要の差が出るのか?

更改は必要ない子?

実は,更改は削除を検討されたことがあります。

その理由は,民法典上に,更改とほぼ同じ法的効果を発生させる別制度が用意されているからです。

 

【更改 VS 免責的債務引受・債権譲渡の関係】

  • 債務者変更の更改(民法514条)≒免責的債務引受(民法472条)
  • 債権者変更の更改(民法515条)≒債権譲渡(民法466条1項・民法467条)

このような対比で,更改は,免責的債務引受と債権譲渡とで同じ法的効果が対応しています。

 

免責的債務引受は,従前の債務者が債務から解放されて,新債務者が債務を引き受けます。

まさにこれは,旧債務者が新債務者に変更される債務者変更の更改です。

 

次に,債権譲渡は,従前の債権者(譲渡人)が新債権者(譲受人)に債権を譲渡します。

これは,旧債権者が新債権者に変更される債権譲渡そのものです。

 

債務者変更の更改(民法514条)では,通常の通知でOK

旧債務者に着目します。

旧債権者に注目

旧債務者は「あ,自分の債務は消滅して,債務から解放されるんだな」と認識できれば十分です。

通知を受け取る

「あの人が新しい債務者か~」と,新債務者が誰なのかまで認識させる必要はなく,債権債務関係を去る者に対しては“自分が債権債務関係から解放される”事実が伝われば過不足ないと言えるからです。

旧債務者は”更改の事実さえ知っていればOK”
旧債務者は”更改の事実さえ知っていればOK”

仮に旧債務者が,新債務者を別人と勘違いしたとしても,旧債務者は更改後の契約にはなんら無関係の立場となり,影響を与えることがないため,確定日付のある証書による通知まで要求されないルールとなっています

 

 

次に,新債務者はというと,更改の契約の当時者ですので,債権者を取り違える可能性はありません。

新債務者は,債権者を確実に知っている
新債務者は,債権者を確実に知っている

 

 

次に,更改後の債権債務関係に入って来る第三者はというと,ここに”新新”債務者として携わるなら,前述のとおり,新更改契約の当事者であるので債権者と取り違えません。

第三者(新新債務者として関係してくる)Ver
第三者(新新債務者として関係してくる)Ver
第三者(新新債務者)が債権者を取り間違えることはない
第三者(新新債務者)が債権者を取り間違えることはない

 

そして,新たなる債権者になるケースであれば,債権者変更の更改(民法515条)か債権譲渡のテリトリーとなるので,民法514条が出てくる場面ではなくなります。

以上から,債務者変更の更改(民法514条)においては,債務者が債権者を取り間違えるケースが発生しないので,確定日付の証書による通知が不要なのです。

 

債権者変更の更改(民法515条)では,確定日付のある証書で契約が必要

債権者変更の更改の契約は,三面契約が必要とされています。

そして,前述のとおり債権者変更の更改は,法的効果としては債権譲渡と同じ機能であることから,債権譲渡の第三者対抗要件として,確定日付のある証書による対応が必要です。

民法515条 【債権者の交替による更改】

1 債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができる
2 債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない

 

債権譲渡において,対抗要件に確定日付のある証書が必要な理由は「【民法467条:確定日付のある証書はなぜ必要?】債権譲渡とは?対抗要件含め世界一わかりやすく解説!」で詳細に解説していますので,ぜひ一読して確認して欲しいです。

 

民法514条2項 旧債務者の求償権の消滅

民法514条2項 【債務者の交替による更改】

2 債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない

旧債務者は,更改によって完全に債権債務関係から離脱します。

そのため,新債務者は,旧債務者に対して,債務を弁済したことを理由に金銭などの請求(求償権)を持たないことを規定したものです。

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

ウリム

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※前条の解説はこちらです。

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※次条の解説はこちらです。

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参考文献など

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この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

 

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