死因贈与と遺贈って,どっちも“死んだら遺産を譲る”ものだから一緒のものなの?
でも,胎児に対しては遺贈しかできないよね? この差はどこから来るの? なにが違うの?
本記事は,死因贈与と遺贈の違いと,上記のような疑問に,基礎の基礎から解説します。
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
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読者さんへの前置き
※赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:死因贈与も遺贈も,法的効果(結果)は同じ
死因贈与も遺贈も,自身の死をキッカケとして,特定の人に財産を譲渡するものです。 したがって,法的効果としては,死因贈与も遺贈も同じものです。
違いは,その法律行為の分類です。
死因贈与は,“生前の”契約によって,自身が亡くなったら,残した財産を譲渡するものです。
遺贈は,遺言などによる財産譲渡であり,財産を受け取る側の承諾などは不要であり,財産を譲渡する側の一方的な意思表示(単独行為)によるものです。
したがって,まだ出生しておらず権利能力を持たない胎児は契約が出来ないので,胎児に対して死因贈与はできません。
一方で,単独行為であり,民法886条のサポートも存在する遺贈は,財産譲渡先が胎児でも可能です。
1 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
第886条 【相続に関する胎児の権利能力】
※民法886条は,こちらで解説しています。
解説:“死因贈与=契約” vs “遺贈=単独行為”
死因贈与も遺贈も,自分が死んだら,自分の残した遺産を特定の人に譲渡する,という法律効果としては同じものになります。
違いは,その法律効果をどのような法律行為で実現するかという,手段(法律行為)の差です。
死因贈与
死因贈与は,遺産の譲渡人と譲受人との間の契約によって成立します。
つまり,「俺が死んだら,遺産は君に譲るけどOKしてくれるかな?」「いいよ!」という契約を交わすことで死因贈与は成立します。
したがって,死因贈与は,以下の状況が必要です。
- 両者とも生きている状態で(すなわち生前に),死因贈与契約を締結する
- 両者に権利能力(契約主体となれる資格)がある
遺贈
一方の,遺贈は,「私の遺産は〇〇に譲るものとする」というような,遺言による一方的な意思表示である単独行為を用いて,財産を譲ります。
遺贈の相手方は,一方的な遺贈の意思表示に対して,“被相続人の死後に”遺贈を受け入れるかどうか判断することになります。(民法915条1項本文)
1 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 (本記事では略)
第915条 【相続の承認又は放棄をすべき期間】
したがって,遺贈は,以下の状況が必要です。
- 遺言行為
※民法915条については,以下の記事で解説しています。 併せてチェックしておきましょう!
胎児に対して出来るのは,遺贈
胎児に対して,遺産を渡してあげたい場合に利用できるのは,遺贈です。
胎児は,まだ出生していないため,権利能力が無いので契約主体になれません。(民法3条1項) したがって,胎児は契約を結ぶことが出来ません。
1 私権の享有は、出生に始まる。
2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
民法3条
契約を結ぶことが出来ないということは,贈与契約である死因贈与は利用できないことを意味します。
しかしながら,時期に高い確率で将来この世に生まれてくる胎児に対して,遺産を渡したいニーズも存在します。
そこで民法は,886条によって,遺贈においては胎児をすでに出生したものとみなし,遺贈制度を利用できるようにルールを整備しているのです。
※民法3条については,以下で解説しています。
※本記事では,”権利能力”という概念が出てきました。 ”権利能力”については以下の記事でわかりやすく解説していますので,一緒に読んでみてください!
参考文献など
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
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