今回は民法886条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
1 胎児は,相続については,既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は,胎児が死体で生まれたときは,適用しない。
民法 第886条【相続に関する胎児の権利能力】
条文の性格
相続編に在籍する条文ですが,総則の権利能力と,密接な関係を持って連携する条文です。
すなわち,胎児が生まれる前から持つことができる例外的な権利能力3つの内の,ひとつをこの886条が定めています。
胎児が生まれる前から持つ権利能力3つ
- 不法行為の損害賠償請求(721条)
- 相続(886条)
- 遺贈(886条を準用する965条)
条文の能力
胎児は相続について権利能力を持つ
886条1項によって,相続について考える場合においては,胎児はすでに生まれた人間として扱われます。
よって,既に生を受けている私たちと同等に,胎児も相続人になることができます。
死産の場合は,胎児は相続人にはなれない
胎児は,その近い将来に出産を経て,生まれた人間になることが高い確率で決まっています。
よって,相続についてはすでに生まれている者と同等の権利義務を胎児にも認めたのが886条1項です。
しかし,悲しいことに死産というかたちで,生きて産まれてくることが出来なかった胎児もいます。
そうなった場合は,胎児は相続人にはなれません。
通常の相続人も生存している者しかなれない以上,胎児にも生存し続けていることを要件として要求すべきであるからです。
コメント
少し細かいことではありますが,『不法行為の』損害賠償請求であることに注意しましょう。
損害賠償請求権は大きく分けて,不法行為に対するものと,契約における債務不履行に対するものがあります。
胎児は②相続③遺贈以外には権利能力を持たないわけですから,(③遺贈を除く)契約行為をすることが胎児には認められていません。
よって,契約における債務不履行は発生し得ないため,胎児においては『債務不履行の』損害賠償請求はあり得ないことになります。
したがって,『不法行為の』損害賠償請求と記載しています。
最後まで読んでくださりありがとうございました。