第2編 物権

【民法初学者用】用益物権とは? 用益物権の基礎の基礎をわかりやすく解説

2022年6月2日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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用益物権って,何?

あと,用益物権ってなんで土地にしか設定できないの?

本記事は,用益物権の存在意義について基礎の基礎から解説しています。

この記事を読むことで,用益物権のバックグラウンドや,その裏に存在するDNAを知ることが出来ます。

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発合格(202点)した勉強法
参考:4ヶ月で筆者を合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:用益物権たちは,ひとつの目的のために存在している

用益物権とは,地上権・永小作権・地役権たちが属する,物権のカテゴリーの一種です。

用益物権の定義は,他人が所有する“土地”を一定の目的のために使用・収益できる権利です。

 

用益物権は,日本の限られた土地を有効活用して,土地の価値向上,ひいては日本経済の発展を目的としています

 

用益物権の対象が土地に限定されている理由は,土地の資産性の高さから,他人の“土地”を使用できる権利(用益物権)を創設されたためです。

(※厳密には,用益物権には入会権も含まれますが,この記事は省略します。)

※担保物権の基礎の基礎・バックグラウンドについてはこちらで解説しています! 是非一緒に確認してみてください!

 

解説:”土地”の資産的価値の高さが全ての根源

不動産(土地)の価値は,動産とは違うベクトルで高い

民法の世界では,この世に存在する物を大きく不動産・動産のふたつに分けて考えています。

基本的に,動産よりも不動産の方が高価な傾向にあります。

この傾向を鑑みて,取引対象が不動産か動産かで,民法は公示方法に登記が必要か否か,即時取得が成立するかしないかのような違いを設けてルール整備をしています

 

資産価値の高い不動産ですが,その中でも“土地”は特別にその価値が高い存在です。

まず,土地は私たちが新たに造り出すことができません

動産は製造すれば,建物(不動産)は建築すれば,我々人間の手で新しい財産を産み出すことが出来ます。

 

一方で,土地はこの地球が用意したものであり,さらに国境という分割されていることから,その国が保有している国土は有限なものです。

国土を拡げるためには,他国を侵攻するのが手段となりますが,今,私たちが生きる国際社会である現代では,現実的にはそうそう実行されない手段でしょう。

そのため,土地は上限が存在するうえに,今現在の国土から上限が増える可能性はほぼ無いのです。

 

※『物』や『不動産・動産』については,以下の記事で解説しています。併せて確認しておきましょう!

 

土地は活用方法が多く,衣食住の拠点になるため,特別に資産性が高い

ここまで,土地が有限であり,現代においてはその国土を増やすことも現実的でないことを確認しました。

 

有限かつ上限が決まっているだけでも,土地の資産性は高いのですが,土地というものは有効活用方法が多いことも,その資産性を高めています。

土地は,更地ではさほどの価値は無いかもしれませんが,耕作すれば農地に,建物を建てれば衣食住の拠点に,整地して公園にすれば人々の憩いの場になります。

つまり,更地として放置せず,土地を有効活用することは,人々の安定した生活を支え,それが人口増加にも繋がり,ひいては日本経済の発展に資するのです。

 

国の発展を目的に,広い国土を手に入れるため,過去に領土を奪い合い,争ってきた人類の歴史も,”土地の持つ価値の高さ”を裏付けています。

 

土地の資産性の高さから,用益物権が誕生する

(この記事って,用益物権の解説じゃなかったのか? いつ用益物権が出てくるんだ…?と思っている頃かと思います。 もうすぐ出てきます!)

 

土地には,上限があり,拡大も難しく,多彩な有効活用法が存在することから,その資産性が非常に高いことが,ここまでの話で分かりました。

土地の資産性の高さは,当然,民法も把握し,それを考慮したルールを整備しています。

 

それの最たるものが“用益物権”です。

用益物権とは,他人の“土地”を一定の目的のために使用・収益できる権利です。

用益物権が“土地”についてのみ成立するのは,前述の,土地の持つ資産性の高さが理由です。(と筆者は考えています。)

 

土地の有効活用を促進し,日本経済の活性化を図る

用益物権には,地上権・永小作権・地役権が属し,これら全てが,他人の土地を利用できる権利を与えてくれる物権です。

民法は,用益物権たちを用意することで,土地を利用できる主体を所有者以外にも拡張し,土地の有効活用を促進し,日本経済の活性化を図ろうとしているのです。

『自分は土地を持っていても,特に使い道がないな…。 かと言って所有権は手放したくないな…。』

という人が土地を所有していても,ただの無駄な死んだ土地ですが,ここに農業をしたい人が現れて,この土地で農業を行えば,所有者・農業者・日本経済全てで,三方良しの状態が出来上がります

この需要に応えるのが用益物権です。

 

たしかに,使用貸借や賃貸借のような貸し借りを行う“債権”も存在します。

(現代の日本では貸し手市場なので,ほとんど場合で,貸し手に有利な賃貸借が利用されているのが実情です。)

 

ただ,原則として,債権は物権には勝てない(『売買は賃貸借を破る』)ため,他人の土地を利用することができる物権(借り手に有利な権利)にも一定のニーズが存在します。

(民法が制定された明治時代は,土地余りであり,借り手に有利な情勢でした。 よって,借り手に有利な地上権に大きなニーズがあったのです。)

 

以上のようなバックグラウンドから,用益物権という物権(と,貸借権という債権)の権利が認められ,現在に至ります。

用益物権や貸借権たちが,他人の土地などを利用しやすい環境を構築してくれたおかげで,日本の国土を有効活用でき,今日の日本の経済発展を後押ししてきたのです。

※『売買は賃貸借を破る』・物権と債権のチカラ関係についての解説はこちらの記事でご確認ください。

 

まとめ

用益物権について述べてきた本記事をまとめると,以下のとおりです。

  • 用益物権の定義:他人が所有する“土地”を一定の目的のために使用・収益できる権利
  • 用益物権の目的:日本の限られた土地を有効活用して,土地の価値向上,ひいては日本経済の発展
  • 用益物権の対象:“土地のみ”(資産性が非常に高い土地を死なせないため)

 

物権編に突入すると,占有権・所有権などの各物権や,本権・用益物権・担保物権などのカテゴリー概念が連続して襲ってくるので,頭が混乱すると思います。

今回は,“用益物権”と言われるカテゴリー自体と,なぜ用益物権たるものが存在するのか,のバックグラウンドについて,解説しました。

知識の吸収力が大きく向上しますので,それぞれの権利やカテゴリーの特徴を押えたうえで,物権編の学習を進めましょう!

 

参考文献など

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

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最後まで読んでくださりありがとうございました!

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