第2編 物権

担保物権の【優先弁済的効力・留置的効力・収益的効力】をわかりやすく解説

2022年6月6日

伊藤かずま

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国際行政書士(第21190957号)
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ウリム

“担保物権”という物権を手に入れた場合には,どのような法的効力を手に入れられるの?

本記事は,担保物権を手に入れた場合の効力について解説しています。

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発合格(202点)した勉強法
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読者さんへの前置き

赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:担保物権には,(最大で)3つの効力が存在する

担保物権には,最大で,以下の3つの効力が認められます。

  1. 優先的弁済的効力
  2. 留置的効力
  3. 収益的効力

 

それぞれ,効力は以下のとおりです。

  1. 優先的弁済的効力:債務の弁済が受けられないとき,担保物の資産的価値から,“他の債権者に優先して”弁済を受けられる効力
  2. 留置的効力:債権者が,担保物を手元に置いておくことができる効力
  3. 収益的効力:債権者が,担保物を使用・収益できる効力

各担保物権が持つ効力を整理すると,下図のとおりになります。

 

解説:各担保物権がどの効力を持つのか,横断理解することがポイント

担保物権に認められる効力をそれぞれ見ていきましょう。

 

優先弁済的効力

優先弁済的効力とは,債務の弁済が受けられないとき,担保物の資産的価値から,“他の債権者に優先して”弁済を受けられる効力です。

“他の債権者に優先して”というのがポイントです。

 

担保を取っていない場合,破産した債務者の財産から弁済を受けるのは,他の一般債権者と平等に山分けするのが原則です。(債権者平等の原則

それを無視して,担保を取っていない債権者よりも“優先して先に”弁済を受けられる,という点を,しっかり理解しておきましょう。

 

担保(物権)を取っておく最大の理由は,債務者が弁済できない事態に陥ったときに,損をしないための保険を確保しておくことにあります。

したがって,他の債権者に優先して弁済を確保できる優先弁済的効力は,担保をより強力なものにすることから,まさに『担保』において最も重要な効力と言えます

 

では,担保物権たちは,当然に優先弁済的効力を持っているんだよね?と考えたくなりますが,実は留置権だけは,優先弁済的効力がありません

留置権は,緊急的に認められる法定担保物権であり,“あくまでも手元に物をキープしておくこと”しかできません

よって,整理すると,以下のとおりになります。

 

留置的効力

留置的効力とは,字のごとく,債務の弁済を受けるまで,債権者が担保物を手元に置いておくことができる効力です。

 

担保物という人質を,債権者が手元に置いておけることから,債務が弁済できなくなったときに確実に競売を行うことができます。

債務者に対して心理的圧迫を与えることで,「ちゃんと債務の履行をしろよ?」と,間接的に弁済を促すことができるのです。

 

では,留置的効力は,どの担保物権に認められるのか確認していきましょう。

まず,担保のスタンダードケースである質権は,留置的効力を有し,債権者が手元に担保物を置いておけます

これは質権の条文からも明らかです。

質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

民法342条 【質権の内容】

担保物を占有することが,質権の成立要件なので,質権を設定するには,債権者が手元に担保物を置いておくことが必要となります。

(ちなみに,占有し続けることは,質権の継続要件でもあります。)

 

次に,留置権は,権利名に“留置”と入っている通り,留置的効力を持っています

留置権は,担保物を手元に置いておくことしかできない担保物権なので,これ(留置的効力)が認められないと,何もできない権利になってしまいます。

 

対して,先取特権と抵当権は,留置的効力を有しません

以下の記事でも解説していますが,抵当権は,担保不動産を債務者が引き続き利用できるようにデザインされた担保物権であるため,敢えて留置的効力が無いとも言えます。

※詳しくはこちらを確認してください。

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ここまでをまとめると,下図のとおりとなります。

 

収益的効力

収益的効力とは,債権者が手元にキープしている担保物を,使用したり収益したりできる効力のことです。

 

“債権者が手元に担保物をキープしていること”が,収益的効力の前提であるため,留置的効力が無ければ,収益的効力は当然ありません

この時点で,先取特権と抵当権には収益的効力が認められないことがわかります。

 

したがって,収益的効力が認められる可能性があるのは,留置権と質権です。

 

留置権は,担保物を手元に置いておくことしかできない担保物権なので,収益的効力は認められません。

 

では,質権には認められるのかというと,質権においても,収益的効力は原則認められません

 

ウリム

おいおい...,結局全部の担保物権で認められないなら,何のための収益的効力なんだよ…

収益的効力は,極めて例外的な効力なのです。

担保物の所有権は,あくまでも債務者側にあります。

したがって,そう簡単には債権者が使用・収益できることを認めるわけにはいかないのです。

 

収益的効力が認められるのは,以下の例外的な2つのケースです。

  • 例外①:留置権,動産質において,債務者が使用・収益することをOKした場合
  • 例外②:不動産質である場合(債権者が,自由に債権者が使用・収益できる)

例外①は,債務者がOKと言っているのなら,債権者の使用・収益を認めても差し支えないためです。

例外②は,不動産は人々の衣食住の拠点になり得る資産的価値が非常に高いものなので,遊休状態になることを回避するためです。

 

※例外②については,こちらで詳しく解説しています。

収益的効力と,ここまでの話を整理すると,以下の通りとなります。

 

参考文献など

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

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最後まで読んでくださりありがとうございました!

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