第3節 行為能力

【チート魔法の取消権】民法9条:成年被後見人の法律行為をわかりやすく解説

2021年3月3日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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ウリム

成年被後見人は自分ひとりで,何が出来て,何が出来ないの?

本記事では,民法9条に規定されている,成年被後見人がひとりでできる法律行為・できない法律行為について解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 成年被後見人ができること・できないことを整理できる
  • 『日用品の購入その他日常生活に関すること』が,ただし書きに規定されている理由がわかる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています

 

条文の性格:成年被後見人がひとりで出来ること・出来ないことを定める

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

民法 第9条【成年被後見人の法律行為】

民法7条から続く,後見人制度の中でも中核を担う条文です。

成年被後見人に対して,取消権というチート能力を授ける魔法使いの師匠的雰囲気を感じる条文です。

 

成年被後見人は,自身が行った法律行為を後から一方的に取り消すことができます。(民法9条本文)

これが大原則です。

 

ただし,この大原則には1つの例外が規定されています。(民法9条ただし書き)

例外は,日用品の購入その他日常生活に関することの法律行為は,たとえ成年被後見人でも取り消せないというものです。

 

まとめると,成年被後見人は,日用品の購入その他日常生活に関することの法律行為以外は,取り消せるということです。

 

行為能力者・成年被後見人が,”ひとりで”有効に”できる法律行為の範囲を図にすると以下のとおりです。

行為能力者vs成年被後見人・行為能力範囲図
行為能力者 vs 成年被後見人・行為能力範囲図

 

制限行為能力者?成年被後見人?取り消す?など,用語があやふやな方は以下の記事で詳しく解説していますので,あわせてご確認ください。

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条文の能力:日用品の購入は少額かつ高頻度で行うので例外的に取り消せない

原則:成年被後見人の行為は取り消せる

民法9条の「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。」とシンプルに書いてある通り、成年被後見人の行為は基本的に取り消せる、これが大原則です。

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

民法 第9条【成年被後見人の法律行為】

条文の「ただし~」以降に書かれている例外以外は、全て後から取り消すことができます。

 

例外:日用品や日常生活に関する行為だけが例外

後から法律行為を取り消しまくることができる、チート能力者である成年被後見人であっても、取り消せないものがあります。

それが、日用品の購入その他日常生活に関する行為です。

日用品の購入や日常生活に関する行為とは、コンビニやスーパーでの買い物などです。

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

民法 第9条【成年被後見人の法律行為】

 

ウリム

日用品の購入や日常生活に関する行為を取り消せない理由は何ですか?

いっそのこと全部取り消せるようにすればよかったのでは?

日用品の購入などは取引額もそれほど高額では無いケースがほとんどです。

”日用品”という日々の消費活動で消費するものに数十万円・数百万円するものは無いですよね。

したがって,仮に万が一,日用品の購入や日常生活に関する行為によって,成年被後見人に経済的損失が発生しても、それは非常に少額な損失です。

 

また,日用品は日常生活で基本的に消費するものですので,いずれ使用・消費する機会は多く,経済的損失も発生しにくいです。

 

よって,可能な限り成年被後見人本人の自由意志を尊重する日用品の購入取引の相手方であるスーパーやコンビニなどの保護をする趣旨により,成年被後見人でも日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せないとされています。

 

この話を加味し,”ひとりで有効に”できる法律行為の範囲を視覚化すると,前述の以下の図のようになります。

こうして見ると,成年被後見人がひとりで有効にできる法律行為の範囲はかなり狭いことがわかります。

行為能力者vs成年被後見人・行為能力範囲図
行為能力者 vs 成年被後見人・行為能力範囲図

 

コメント

民法9条を見ると、「ただし~」と書いてあるのですが、この「ただし~」以降に書いてあることを、一般に但し書きと言ったりします。

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

民法 第9条【成年被後見人の法律行為】

法律の条文は、原則(本文)→例外(ただし書き)と書かれているパターンが多いです。

条文を読むときのコツですので憶えておきましょう。

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

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※次条の解説はこちらです。

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参考文献など

参考文献

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

 

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