今回は民法11条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
民法 第11条【保佐開始の審判】
条文の性格
この民法11条から14条までの4つの条文は、制限行為能力の保佐制度に関連するルールを定めてます。
その条文の書きっぷりや構成は、民法7条から10条の後見制度のほぼ同じで、まさしくクローンです。
もちろん、細かいところは違いますが(そしてその違いが試験で問われます)、後見制度と同じく制限行為能力者を護ろうとする同じDNAを持っていることがヒシヒシと伝わってきます。
この辺り、行政書士試験や宅建試験に向けて民法初学者向けに書いている当ブログをガイドラインとして概要をざっくり把握してみてください。
その後、民法7条~10条の後見制度と民法11条~14条の条文を、六法で見比べながら読むと条文に流れているDNAが見えるはずです。
ここで、DNAが見えたなら条文での勉強の面白さがわかってくると思います。
↓後見制度を定める民法条文一覧(民法7条〜10条)
条文の能力
民法11条は、そのDNAを7条と同じとするので、①被保佐人には誰がなれて、②保佐開始はどの様にするのかが規定されています。
ちなみに②の保佐開始の方法は、条文に列記されている者が請求可能者であり、審判をするのが家庭裁判所となっており、7条の後見開始と全く同じです。
違いがあるのが、誰が被保佐人になれるのか?です。
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者
被保佐人として保護してもらえる権利を持つのは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者です。
つまり、精神的な障害により、自分の法律行為の危険性を判断する能力がギリギリ有るけどほぼ無い状態の人です。
成年被後見人と被保佐人の比較
成年被後見人と被保佐人とを分けるのは、制限行為能力者とするかどうか審判される人の、精神上の障害の深刻度です。
成年被後見人と被保佐人になれる人の条文の記載を比較して見てみましょう
- 成年被後見人→ 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者→常に事理弁識能力が完全に無い
- 被保佐人→精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者→事理弁識能力はギリギリ有るがほぼ無い
つまり、障害の深刻度(=事理弁識能力の欠落度)としては成年被後見人>被保佐人です。
また、成年被後見人と被保佐人は、取り消しができる範囲の広さが成年被後見人>被保佐人となってます。
つまり、保護の広さも成年被後見人の方が広く、成年被後見人の方が厚く保護されています。
後見制度と保佐制度で分けている理由
ここまで見てきた通り、民法7条と民法11条が定めるとおり、民法は事理弁識能力の欠落度で後見制度と保佐制度を分けて用意しており、比較すると成年被後見人の方が取消し可能範囲が広く、手厚く保護されています。
なぜでしょうか?
理由は、多段階的な制限行為能力者制度を用意することで、様々な事理弁識能力の不足に対して、柔軟に保護しようとしているからです。
もし制限行為能力者制度が、後見制度のひとつしかない世界の場合、事理弁識能力を欠く状態にならない保護されないことになります。
欠いてはいないけど、ほぼ事理弁識能力のない人が保護されず、自分に不利益な法律行為の危険にさらされるわけです。
そこで、民法は多段階的な制度を用意し、個々人の事理弁識能力に対して、法律行為を取り消せる範囲を合わせられるようにし、柔軟な保護体制を整えているのです。
コメント
参考書の一覧表などは、知識を全体的に見渡すには適していますが、憶えるのには向いていないと私は思っています。
一覧表は、条文などで仕組みや制度趣旨をしっかりと理解した上で、自分の頭の中に刻み込む時に利用すると効果を発揮すると考えています。
いきなり一覧表を丸暗記すると、そこにストーリーはないので、無機質でつまらないです。
なぜか条文の読み込みは敬遠されがちですが、参考書のまとめ一覧とかを延々と眺めるくらいなら、条文を読む方が得られるものは多いと思います。