第3節 行為能力

【未成年もビジネスでは大人】民法6条:未成年者の営業許可をわかりやすく解説

2021年2月26日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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未成年者が営業(ビジネス)をしている場合の契約って,制限行為能力者として取り消せるの?

今回は,民法6条の,未成年者が営業許可を得た場合の,制限行為能力者制度との関係を,3分でわかりやすく解説します。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 未成年者がビジネスを行う場合の,制限行為能力者制度との調整が理解できる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています

 

条文の性格

1 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する

2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

民法 第6条【未成年者の営業の許可】

 

民法典において,民法4条が親分、民法5条が子分な役割分担で,連携して未成年者の制限行為能力者制度・保護規定を定められています。

この民法6条も、親分である民法4条の,子分パート2として活躍します。

民法6条は「営業」に関する規定を定めていて、民法4条と連携するだけでなく、商法とも結びつきが強く、民法と商法を繋ぐ外交官みたいな条文です。

 

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条文の能力

営業とは

まず、営業という単語の意味を確認しておきます。

営業とは、営利を目的として同種の行為を反復的・継続的に行うことです。

 

行政書士・宅建試験で、この定義が事細かに聞かれることはないので、自分で起業してビジネスを行ってお金を稼ぐことくらいの認識でOKです。

 

許可された営業に関する未成年の行為は、成年がしたものと同じとする

民法5条1項により、未成年は法定代理人(親御さん等)の同意がなければ、法律行為ができません

これが大原則です。

1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

民法5条1項 【未成年者の法律行為】

 

「学生起業家」や「学生ベンチャー」などの言葉も誕生し、未成年であってもビジネスをスタートすることが珍しいことではなくなってきました。

高校生が在学中(未成年のうち)に起業する、というのが民法6条が想定している,未成年が行う営業の良いイメージ例かと思います。

 

起業した未成年は営業(ビジネス)を行う中で、契約などの法律行為を頻繁にするわけですが、ここに民法5条1項本文を、そのまま当てはめてみます。

1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

民法5条1項 【未成年者の法律行為】

 

すると、未成年は営業内で仕入れをしたり、契約したり、人を雇う度に、「お父さん・お母さん! 〇〇することの同意ください!」と、いちいち同意を得なければならないという、非常に面倒なことになります

スピードが命取りともなるビジネスの世界で、これは面倒かつ致命的です。

これでは、未成年者本人の自由意志やビジネスを行う自由を著しく損ないます。

 

そこで民法6条は、法定代理人が許可した営業に関する行為は、成人がした法律行為と同等扱いし、未成年者がひとりで営業を自由にできるようにしました

1 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する

民法 第6条1項【未成年者の営業の許可】

 

許可したのはいいけれど…

ここまで見てきたとおり、法定代理人の許可を得た未成年は、許可された範囲では、自分ひとりで有効な法律行為ができます。(民法6条)

それはすなわち、民法5条2項が定めている、いざとなったら取り消せるという,取消権が認められないということです。

1 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる

民法5条2項 【未成年者の法律行為】

 

許可された営業上の契約をしてしまった未成年者は、未成年(制限行為能力者)を理由に取り消すことをができないわけですから、どんな不利益(とんでもない借金)を背負ってしまったとしても救済されません。

まだ精神的・肉体的に未熟がちな未成年にとっては、大きなプレッシャーとなり得ます。

 

そこで民法6条2項は、一度営業を許可をした事実があっても、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、法定代理人はその許可を取り消したり制限してもOKと定めています。

2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる

民法 第6条【未成年者の営業の許可】

 

その営業に堪えることができない事由

その営業に堪えることができない事由とは、精神的障害(例:うつ病)などです。

 

コメント

民法6条2項で、未成年者が営業に耐えられなさそうな時は、その許可を取り消して保護することが可能です。

しかし,ここで気をつけなければいけないのが、相手方の保護です。

民法は、私たちの私生活上の取引行為でのルールを規定していますが、取引である以上、相手方がいます。

 

片方を厚く保護する=相手方が犠牲になる、という傾向があります

民法を学習する際は、民法は一体誰を保護しようとしているのか、という点を意識して学習すると良いので頭の片隅に入れておきましょう。

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

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※次条の解説はこちらです。

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参考文献など

参考文献

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

 

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