今回は民法12条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
民法 第12条【被保佐人及び保佐人】
条文の性格
この条文の個性は、民法8条に記載されているのが全てですね…。
ほぼ生き写しの様な姿をしていますので…。
良かったらこちらを読んでみてください。
条文の能力
能力としても、ポイントは第8条をおさえて頂ければOKです。
コメント
そこで、ちょっと例外的ですが、コメントとして、他の条文ページに書けなかった制限行為能力者制度としておさえておきたいポイントを書いておきます。
後見人に同意権が無いの意味
後見人には無くて、保佐人・補助人・親権者には有るもので、同意権があります。
ただ、同意権が無いとか有るとかいきなり言われても意味不明かと思います。
(私は最初はさっぱりわかりませんでした...。 同意権が何なのか、誰が何をできてその結果どうなるのか、そしてなぜ後見人には無いのか、全てがパッパラパーでした。)
さて、ここを順を追って説明します。
同意権とは
まず同意権とは、同意することで制限行為能力者がした法律行為を有効にする権利のことです。
民法第5条1項, 2項や第13条4項を読めばわかりますが、被保佐人・被補助人・未成年者たちの法律行為は、(サポートする人=同意権を持つ人の)同意が無いときは取り消せる、と記載されています。
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
民法 第5条【未成年者の法律行為】
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
民法 第13条【保佐人の同意を要する行為等】
つまり保佐人・補助人・親権者たちは、制限行為能力者が同意無く勝手に法律行為をしたとき、その法律行為を後から同意することで有効な法律行為へと変えることができるのです。
これが、同意権の効力であり、同意権が有るということです。
後見人に同意権が無いとは
同意権の意味はこれまで見てきました。
では、後見人に同意権が無いのはなぜなのか確認しましょう。
まず、民法9条を見ると他の制限行為能力者達とは違う文章で書かれている事がわかります。
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
民法 第9条【成年被後見人の法律行為】
条文をそのまま理解すると、成年被後見人がした法律行為は同意の有る無しは1ミリも関係無く、日用品の購入か日常の法律行為以外は全て取り消せるわけです。
元々、成年被後見人は有効な法律行為をするために必要な意思能力を完全に欠いているわけです。
そこを保護するために行為能力に制限を設けているわけですが、他の制限行為能力者と違い、「完全に意思能力を欠いている成年被後見人の法律行為は原則全て有効に成立していない」が原則なのです。
なので、成年被後見人には日用品購入や日常の法律行為の例外を除いて、全ての法律行為を有効としないのが本来の正しい姿です。
何度も言いますが、有効な法律行為になるために必須の意思能力が無いのですから。
もともと、成年被後見人の法律行為は例外を除き全ての法律行為が有効ではないのが本来の姿です。
これを言い換えると、同意によって後から有効とする必要が無いのが成年被後見人がした法律行為の本来の姿です。
そのため、後見人は法律行為が取り消せれば良いので有って、同意権によって法律行為を有効化する必要はありません。
そのため、参考書などには「後見人には同意権が無い」と書かれているのでした。