
民法410条の『債権は,その残存するものについて存在する。』って…,なにこれ?
何言ってんの?
日本語でおk
本記事は,民法410条の選択債権関係において,選択権者の過失によって選択肢が不能になった際の処理について,初学者向けにイラストを用いてわかりやすく解説しています。
本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。
- 不能による選択債権の特定のルールを基礎から理解できる
- 条文中の『債権は,その残存するものについて存在する。』の意味がスッキリわかる
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち
読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
※本ブログでは,記事内容を要約したものを先に【結論】としてまとめ,その後【解説】で詳細に説明をしていますので,読者さまの用途に合わせて柔軟にご利用ください!!
【結論】選択肢の履行不能+選択権者の過失=債権は範囲縮小しつつも生存!
民法410条 【不能による選択債権の特定】
債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
選択権者の過失によって,選択債権の給付候補の中に履行不能が発生した場合,債権はその他の生き残っている給付を範囲として生き残り続けます。
つまり,選択権者の過失によって履行不能が発生したとき,債務者は生き残っている給付の中から債務を履行すればOKということです。
その理由は,以下の3点からです。
- 選択債権というものは「債権者は,選択肢のうち,いずれの給付でもOKという認識を持っている」という事情が存在するため
- どの選択をするのかについては,選択権者が全権を担っているため
- (選択権を持たない)債権者は,給付されなかった選択肢が履行不能だろうが,単純に選ばれなかったのかはどうでもよいため
【超図解・解説】どの選択をするのかについては,選択権者が全権を持っている
選択権者の過失で不能→残りから給付すればOK
民法410条は,とても難解な日本語で書かれています。
民法410条 【不能による選択債権の特定】
債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
非常にわかりづらいですが,言っていることはそんなに難しくありません。
この記事を読み終わったときには,選択債権マスターになっていること間違いなしです。
では,解説していきます。
まず,民法410条の条文を,以下のように①②③と分解して,順に追っていくと確実に理解できます。
民法410条 【不能による選択債権の特定】
①債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、
↓
②その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、
↓
③債権は、その残存するものについて存在する。
(※ここからは,選択債権(民法406条)の解説では毎度おなじみの誕生日プレゼントの事例を使って説明していきます!)
①:債権の目的である給付の中に不能のものがある場合
まず,債権の目的(給付内容)の中に,不能がある場合を考えます。
たとえば,誕生日プレゼントの候補のひとつであるバッグが予約限定品で,期限内に予約をしておらず,入手不可能になったような場合です。


②:その不能が選択権を有する者の過失によるものであるとき
そして,①の不能が選択権者の過失によって引き起こされたケースに範囲を絞ります。
すなわち,先ほどの例において,予約する義務を負っていたのが彼氏だったのに,彼氏が予約をうっかり忘れてしまっていたようなケースです。

③:債権は,その残存するものについて存在する
①②により,選択権者である彼氏さんのせいで,選択債権の給付の候補のうち,ひとつが不能になりましたが…
このとき,選択債権は,残っている給付選択肢たちを範囲として,生き残り続けます。

ちょっとわかり辛いぞ!
つまり,先ほど予約をミスってしまった彼氏さんは,残りのプレゼント候補の中からいずれかを選んで,彼女さんにプレゼントすればOKなのです。


なぜ,選択権者がミスっても,他の給付でOKなのか?

んんん…?
なんかちょっと,この条文…民法ルールに違和感があります…!
だって,選択権者とはいえ,債務者である彼氏さんがミスしたせいで給付不能になったのに,ペナルティは特に無しで,他の給付をすればOKだなんて…おかしくない?
このような疑問・違和感を抱いた読者の方もいるのではないかと思います。(受験生時代の自分も最初はおかしくない?と思ってました)
ですが,選択債権というものをキチンと理解すると,その疑問も綺麗さっぱり晴れるので,ここからはこの疑問・違和感を取り払いたいと思います。
改めて用語と状況を整理しておきます。
誕生日プレゼントの事例において,債務者・債権者・選択権者がごっちゃにならないようにしておく必要があります。
- 債務者=選択債権の給付をする,プレゼントを渡す彼氏さん
- 選択権者=誕生日プレゼントの事例においては,彼氏さん
- 債権者=選択債権の給付を受ける,プレゼントを貰う彼女さん
つまり,選択権者=債務者=彼氏 vs 債権者=彼女という対立構造なのを理解してください。

そしてここに,こちらの記事でも解説しましたが,選択債権というものは「債権者は,選択肢のうち,いずれの給付でもOKという認識を持っている」という事情のもと成立している債権です。
なぜなら,選択権を持っているのは彼氏さんであり,どの給付になるかについて彼女さんは何も権限を持っていないからです。
したがって,債権者=彼女さんは,給付のどれかひとつでも貰えればそれでOKなのです。

よって,他の給付されなかった選択肢たちが,彼氏さんが選択しなかったから貰えなかったのか,彼氏さんのミスで履行不能(バッグが入手不能)になっていたのかは,どーでもよいのです。


したがって,選択権を持つ彼氏さんの過失で選択肢の給付が履行不能になったとしても,どれを給付するのかの全権を持っているのは彼氏さんであるので,彼氏さんは生き残っている選択肢から給付をすればOKなのです。
選択権者以外の要因で不能のときは?

選択権者の過失によって不能が発生した場合は理解できました!
では,選択権者以外が原因…たとえば彼女さん(債権者)のミスや,天災などで履行不能になったときはどうなるの?
その場合は,本条の民法410条は適用されないので,選択権者は履行不能の選択肢も含めて選択権を行使できます。
履行不能の選択肢を選んだ場合,当然履行は不可能なので,民法415条などの債務不履行による損害賠償の処理に流れることになります。
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

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※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。
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参考文献など
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最後まで読んでくださり,ありがとうございました。