第6章 地役権

民法283条:地役権の取得時効の要件と加重理由をわかりやすく解説

2022年6月7日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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地役権を時効取得するには,要件が加重されているらしいけどなんで?

本記事は,地役権の取得時効の成立要件と,要件が追加されて加重されている理由について解説しています。

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

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読者さんへの前置き

赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:地役権の取得時効の成立要件は2つ追加され,成立が難しくなっている

地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

民法283条 【地役権の時効取得】

民法162条に規定されている取得時効の成立要件は,以下のとおりです。

 

【短期取得時効】

  • ①所有の意思
  • ②平穏かつ公然
  • ③他人の物
  • ④10年間の占有の継続
  • ⑤善意
  • ⑥無過失

【長期取得時効】

  • ①所有の意思
  • ②平穏かつ公然
  • ③他人の物
  • ④20年間の占有の継続

地役権を時効取得するには,上記の民法162条に規定されている要件に加え,以下の2つの要件も追加で満たさなければいけません。

【地役権取得時効 加重要件】

  • 継続的に行使されていること
  • 外形上認識することができるもの

 

地役権を時効取得できるなんて状況の多くは,承役地の所有者が好意で通行を黙認してあげているケースが大半を占めます

よって,承役地の所有者の好意に乗じて,地役権を時効取得するのは道義上問題があるため,要件を加重し,取得時効の完成の難易度を上げて調整を図っています。

※民法162条の取得時効の成立要件と,推定される・されないはこちらで解説しています。

※取得時効の“平穏”と“公然”の意味はこちらで解説しています。

 

解説:“継続的”の意味をしっかり押さえておく

要件加重理由=心優しい承役地の所有者を保護するため

前述したとおり,地役権を時効取得するには,以下の2つの要件が加重されており,その成立難易度が上げられています

  • 継続的に行使されていること
  • 外形上認識することができるもの

 

そもそも,なぜ2つも要件が加重されているのでしょうか。

 

地役権が時効取得できる,というケースは,10年や20年という,かなりの長期に渡って,承役地を通行などする権利も無いのに,繰り返し承役地を通行などしている行為が,繰り返されている状況です。

このようなケースは,承役地の所有者が,好意で通行させてあげており,無権利行為について目をつむってあげていることが多いです。(好意で通行させてあげていないなら,時を見計らって苦情を申し入れるはずです。)

 

したがって,あくまでも承役地の所有者が好意で許してくれていた“地役権っぽい行為”を,時効制度を味方につけて,「地役権手に入れたもんねー!」と主張するのは,道義的にどうなんだって話になるわけです

そこで,民法は283条で⑦継続的に行使されている・⑧外形上認識することができるもの,という2つの要件を課して,心優しい承役地の所有者を保護することにしたのです。

 

“継続的”の意味

心優しい承役地の所有者を保護するため,取得時効の要件が加重されているのでした。

 

では,なぜ以下の2つの要件が,心優しい承役地の所有者の保護に繋がるのでしょうか?

  • ⑦継続的に行使されていること
  • ⑧外形上認識することができるもの

 

まず,⑦の“継続的”ですが,判例は以下の2つを満たすものを“継続性”があると解釈しています。

【⑦“継続”の解釈】

  1. 通路を開設していること
  2. 要役地所有者自身の手によって通路を開設していること

通路を開設する必要があるため,ただ単に承役地を通行していただけではダメです。

また,通路を開設するのは,要役地所有者(取得時効の成立を主張する者)自身で開設しなければいけません

 

そして,⑧外形上認識することができるもの,とすることで,承役地の所有者に気づかれずこっそり時効成立なんてことをさせないようにしています。

 

つまり,⑦⑧の要件を加重することで,「自分の承役地に,整備された通路が存在して,それがパッと見ればわかるやん!」ってレベルの状況が存在するのなら…,

そんなバリバリ視認できる地役権っぽい状況を,10年や20年認めてたなら,もう流石に取得時効の成立を認めても文句ないやろ?

ってことで,要役地所有者に地役権の時効取得を認め,承役地の所有者に我慢してもらおう,という落としどころで両者のバランスを図っているのです。

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

※次条の解説はこちらです。

参考文献など

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

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最後まで読んでくださりありがとうございました!

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