
地役権が消滅時効で消滅するのは,使ってない部分だけって聞きました!
言っていることはわかるのですが,なんでこんなルールになっているの?
本記事は,民法293条の,地役権の消滅時効による未使用部分の一部消滅についての解説をしています。
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち
読者さんへの前置き
※赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:地役権は,使わない部分のみが時効消滅する
地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。
民法293条
※本記事は,以下の記事を読んでいることを前提に記載している箇所があります。 未読の方は,先に読んでから戻ってきた方が理解しやすいため,ぜひ読んでみてください。
地役権者が地役権の一部を行使していない事情があるときは,その部分のみが時効消滅します。
これは,上記記事の「地役権のスタンス②:民法は地役権を存続させようとする」により,利用している地役権部分は残存するようにして,地役権消滅による土地の価値低下を最小限にとどめようとするものです。
解説:”民法は地役権を存続させようとする”という民法の地役権へのスタンスを理解する
293条の理解には,民法の地役権に対するスタンスを理解する
地役権は,要役地の利用価値を向上させる特徴があり,それが日本経済の発展に資する側面があります。
法律も,この点を評価しており,民法は,地役権ができる限り存続させる(また,成立しやすい)スタンスで制度を設計しています。
本記事で解説する民法293条も,このスタンスで作られています。
地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。
民法293条
つまり,地役権の一部分を使用していないことで消滅時効が完成した場合,地役権の全てが時効消滅するのではなく,“使用していない部分だけが時効消滅する”ことで,使用している部分の地役権を残存させ,地役権ができる限り存続するようにしているのです。
また,使用を継続している地役権部分を存続させることで,消滅時効が進行していないと期待している地役権者の期待を保護し,不意打ち的な要役地の価値低下を避けるためなのも理由のひとつです。
民法293条の具体例
使用していない地役権部分の時効消滅の具体例として,下図のように通行地役権を設定し,2つの通路A・Bを開設していた場合で確認しましょう。

この状況で,通路Aが地震などで損壊して通行不能になったのに,改修などせずに一定期間利用していなかったような場合には,地役権は消滅時効が進行します。

このような状況で消滅時効が完成した場合,通路A・Bの双方が時効消滅するのではなく,利用していなかった通路Aの部分の通行地役権が消滅し,通路Bの部分は引き続き通行地役権が存続する,というのが民法293条の定めているルールです。

※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。
(現在準備中です!)
※地役権の消滅時効の起算点や,進行条件については,こちらの記事で解説しています。 ぜひ併せて読んでみてください。
※共有者間の地役権の消滅時効や取得時効についてのポイントは,以下の記事たちでまとめています。ぜひ読んでみてください!
参考文献など
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
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最後まで読んでくださりありがとうございました!