民法494条で供託制度は深く理解できました!
でも,供託制度でも救われない者がいると聞きましたが...,どのような人たちなの?
本記事は,民法497条の【供託に適しない物等】について,制度の存在意義や利用できる具体例について,わかりやすく解説しています。
本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。
- 供託制度でも救われない者がいることがわかる
- そのような者も救えるように民法が救いの手を差し伸べていることがわかる
- 民法497条の制度趣旨や具体例を基礎から知ることができる
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち
読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
※本ブログでは,記事内容を要約したものを先に【結論】としてまとめ,その後【解説】で詳細に説明をしていますので,読者さまの用途に合わせて柔軟にご利用ください!!
【結論】供託制度が機能するかどうかは目的物に左右される!
民法497条 【供託に適しない物等】
弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。
一 その物が供託に適しないとき。
二 その物について滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。
三 その物の保存について過分の費用を要するとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。
"弁済"と"弁済の提供"のスキマに取り残された目的物保管義務からの解放を目的とした供託制度ですが,供託制度をもってしても取り残される者がいます。
本条497条はそのような者の救済ルールです。
弁済の提供をしても受領がされないとき,弁済者は債務から発生する各義務から解放してもらうために,目的物を供託することができます。
しかし,目的物の性質上,供託ができない・難しい・不可能である場合,供託が実行できず,債務は残り続け,弁済完了に向けて誠実に動いていた債務者が引き続き債務に縛られ続けてしまいます。
このようなときに目的物を競売に付し,その代金を代わりに供託することを認め,債務者を義務から解放することを許すのが,この民法497条です。
【解説】供託制度でも救われない者が存在する!
供託制度のおさらい
この記事は,民法494条(供託)の知識を知っていることを前提に解説しています。
そのため,供託制度について知識がちょっと怪しいな…という方は,是非以下の記事を先に読んでから,この記事を読み進めてください。
債権を消滅させる法的効果を有する弁済と,債権を消滅させるには至らない弁済の提供とのスキマに取り残されてしまった目的物保管義務を処理するため,民法494条において供託制度が定められているのでした。
そして,供託制度を悪用すると持参債務が意味を成さないものとすることも可能のため,供託については一定の条件を満たしたときのみ,債務者が利用できる制度でした。
一定の条件って,弁済の提供をした場合において債権者がその受領を拒んだときか,
債権者が弁済を受領することができないとき…だったっけ?(民法494条1項)
そのとおり!
供託ができるのは『弁済者が弁済をしたいのに,どうしてもできない…』という状況のときだけ
だったね!
供託制度でも救われない者たちへ・・・
供託制度は,弁済(=①提供+②受領)において,②受領が完了できない場合に備えて用意されているわけですが,実は供託制度もってしても救われない者たちがいることがわかっています。
たとえば,牛乳10トンの売買契約において,売主は弁済の提供をしたのに,買主が受領を拒むなどしているとしましょう。
このとき,民法494条1項により,弁済者である売主は牛乳10トンを供託所に供託できるはずです。
民法494条1項1号 【供託】
弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
しかしながら,牛乳は鮮度が大事ですので,供託を利用しようにも,供託で預ける手続きなどをしている間や預けている期間中に,温度変化や常温待機のせいで腐ってしまう可能性があります。(特に夏場)
また,牛乳10トンは非常に大きい取引量であり,そうすると,売主が持っている巨大冷蔵庫から牛乳10トンを動かすことは得策ではありません。
さらに,預けた時点で品質に異常が出てしまっていたら,後から供託経由でやっぱり受領しようとした買主から「預けた時点で腐ってたぞ! 債務不履行だ!」と言われてしまうことも考えられ,トラブルに発展する可能性があります。
かと言って,売主が自身で保管するにも牛乳10トンを,品質を維持しながら巨大冷蔵庫で保管しようにも場所も電気代もかかってしまいます。
このように,供託の目的物の内容によっては,供託制度を用いても救われない者がいるのです。
供託制度でも救われないときは,目的物をお金に変えて,そのお金を供託OK!
それでは,前述のような供託制度でも救われない者をどうするのかというと,ちゃんと民法は救済の道を用意してくれています。
それが民法497条です。
民法497条 【供託に適しない物等】
弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。
一 その物が供託に適しないとき。
二 その物について滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。
三 その物の保存について過分の費用を要するとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。
『弁済者は・・・目的物を競売に付し,その代金を供託・・・できる』とあるとおり,目的物を競売で売って,その代金を供託所に預けることができます。
つまり,供託制度において,目的物が状態変化などを起こす物で供託に耐えられないなら,代わりに状態変化が起こらないお金を預けておこうということです。
これにより,牛乳10トンは競売を通して欲しい業者(給食業者や食品加工会社など)に渡り,売主は供託制度を利用することで債務を消滅し,債務から発生するあらゆる義務から解放されることとなります。
民法497条を利用できる場面
民法497条を利用するためには,そもそも供託制度を利用する条件『弁済者が弁済をしたいのに,どうしてもできない…』に加えて,追加の条件をクリアする必要があります。
それが以下の1~4号です。
民法497条 【供託に適しない物等】
弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。
一 その物が供託に適しないとき。
二 その物について滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。
三 その物の保存について過分の費用を要するとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。
以上の1~4号のどれかを満たす必要があります。
さきほどの牛乳10トンをあてはめてみると・・・,
まず大量の生鮮品であることから,『供託に適しない』(民法497条1項1号)に該当しそうです。
また,牛乳が痛むことで『損傷・・・による価格の低落のおそれ』(同2号)もありそうですし,保存にも大型冷蔵庫+多額の電気代が必要でしょうから『保存について過分の費用を要する』(同3号)といえそうです。
そして,そもそも牛乳10トンを供託所に運び入れることすらほぼ不可能と思われますので『供託することが困難な事情がある』(同4号)も満たす可能性も十分に検討できそうです。
よって,牛乳10トンの場合は1~4号を少なくともひとつは満たすと言えそうですから,民法497条を利用できると考えられます。
牛乳の例は1~4号すべてにあてはまりそうだけど,1~4号のどれかひとつにあてはまれば民法497条は利用できるからね!
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
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参考文献など
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