第1目 総則

【民法492条:債務者の義務解放を前倒し!】弁済の提供とは?わかりやすく解説

2023年6月27日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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ウリム

弁済については民法473条でよくわかりました!

でも,弁済に名前の似た,弁済の提供という概念・制度があると聞いたのですが…?

本記事では,弁済の提供という概念・制度と,なぜこのような弁済とは別の概念が存在するのという理由について,詳しく解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 弁済の提供制度の概要を基礎から理解できる
  • 民法が弁済の提供を採用している理由を知ることができる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
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読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
 

※本ブログでは,記事内容を要約したものを先に【結論】としてまとめ,その後【解説】で詳細に説明をしていますので,読者さまの用途に合わせて柔軟にご利用ください!!

結論:弁済の提供は債務者に有利な制度!

民法492条 【弁済の提供の効果】

債務者は,弁済の提供の時から,債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる

弁済の提供の導入経緯

債権者が非協力的なときなど,いついかなるときにも,弁済が完成する瞬間まで債務者が債務不履行責任などから解放されない原則ルール(民法473条)を貫いてしまうと,弁済を積極的に真摯に実行しようとした誠実な債務者は不利に扱われることになります。

そこで民法473条の原則を修正し,債務者の義務解放ポイントを前倒しする制度である弁済の提供を採用することとなりました

 

弁済の提供とは

弁済の提供とは,弁済という行為を債務者側の「提供」行為と,債権者側の「受領」行為に分けて考え,一定の場合において,債務者側の「提供」がされた時点で,債務者を債務から発生する義務から解放するという制度のことです。

時系列的に,「提供」が「受領」より必ず先に到来するため,「提供」と「受領」の時間差分,債務者を早く義務から解放することができます。

弁済の提供:義務解放の前倒し

 

弁済と弁済の提供の効果の違い

弁済は,債権(とそれに対応する債務)を消滅させ,債務者が義務から解放されます。

民法473条 【弁済】

債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは,その債権は,消滅する

 

弁済の提供は,債務者が義務から解放される点は弁済と同様ですが,債務はその時点で消滅しないという違いがあります

民法492条 【弁済の提供の効果】

債務者は,弁済の提供の時から,債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる

 

解説:弁済の提供は,債務者を義務から解放する

「弁済の提供」制度が採用されている理由

民法473条の記事で『弁済』について解説したとおり,弁済がされた場合,債務者は義務から解放され,債権者は損害賠償請求権や解除権を失うという強力な効果が発生します

つまり,弁済の前では債務者は債務履行義務・債務不履行時の責任・(特定物債権の場合)善管注意義務などの多くの義務を負い,弁済の瞬間からはそれらの義務から一気に解放されるのです。

すなわち,弁済前後で,債務者が負っている責任には天と地ほどの差があり,債務者は債務が弁済される“瞬間”を目指して行動・努力することになります

したがって,債務者からすると,弁済というポイントは,なるべく早く来て欲しいという立場であることをおさえておいてください。

 

債権の中には,お金を払う・借りていた物を返す・商品を渡す…など,債務者から債権者への物的給付を伴うものが多く存在します。

このような債権は,債権者の“受領”という行為が必要であり,弁済が完成するために①(債務者の)提供行為と②(債権者の)受領行為の2つの行為が完了する必要があるということになります。

ようするに,弁済=①提供+②受領ということになります。

 

そうすると,「気分が乗らないから給付物を受け取らない」とか,「損害遅延金目的で雲隠れしてやろう…フッフッフ」のように,債権者が弁済に対して非協力的なときには②受領が揃わず,弁済が完成せず,債務者が不利益を被る可能性があります。

つまり,債権者が非協力的なときなど,いついかなるときにも,弁済が完成する瞬間まで債務者が債務不履行責任などから解放されない原則ルールを貫いてしまうと,弁済を積極的に真摯に実行しようとした誠実な債務者に不利であり,また,酷な状況となってしまいます

そこで,弁済の瞬間に債務が消滅するという民法473条の原則ルールを修正する必要が生まれ,これに対応するため,民法は「弁済の提供」制度を導入することとなったのです。

 

弁済の提供とは?

ここまでで,弁済の提供という制度が採用されている理由について解説をしました。

 

ここからは,弁済の提供という概念の中身について,確認しましょう。

弁済の提供とは,弁済という行為を債務者側の「提供」行為と,債権者側の「受領」行為に分けて考え,一定の場合において,債務者側の「提供」がされた時点で,債務者を債務から発生する義務から解放するという制度です

(※注意:もちろんですが,すべての弁済に“②受領”が必要なわけではありません。 たとえば,不祥事を起こした従業員が,会社の指示で謹慎するという債務の弁済(履行)は,①提供は必要ですが,②受領は必要の無いものとなります。)

つまり,民法473条の原則ルールでは,弁済=①提供+②受領のうち①②の両方揃わなければ,債務者は債務の義務から解放されないところ,弁済の提供では,①(提供)のみで債務者を義務から解放しようというのです

これはそのまま民法492条に書かれています。

民法492条 【弁済の提供の効果】

債務者は,弁済の提供の時から,債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる

 

これは債務者に有利な制度であり,債権者が非協力的で②(受領)が揃わないときに特に有効なものとなります。

なぜなら,弁済を①提供+②受領と捉えたとき,時系列的に“必ず①提供があってから,②受領のタイミングが来ます”。

弁済の提供:①提供と②受領の前後関係
弁済の提供:①提供と②受領の前後関係

①提供をしてからでないと,②受領を行うことはできないからです。

 

そうすると,大なり小なり存在する①提供と②受領の時間の差の分,債務者が負っている義務から解放されるタイミングが早くなり,債務者が有利な立場となれるのです。

弁済の提供:義務解放の前倒し

 

弁済=債権・債務が消滅 vs 弁済の提供=責任からの解放

本記事の最後で,弁済と弁済の提供との効力の違いについて少し触れておきます。

 

弁済は,債権(とそれに対応する債務)を消滅させ,債務者が義務から解放されます

対する弁済の提供は,債務者が義務から解放される点は弁済と同様ですが,債務はその時点で消滅という違いがあります

 

これは民法473条【弁済】と,民法492条【弁済の提供の効果】を見比べればわかります。

民法473条 【弁済】

債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは,その債権は,消滅する

民法492条 【弁済の提供の効果】

債務者は,弁済の提供の時から,債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる

弁済を定めた民法473条は『その債権は,消滅する』,弁済の提供を定めた民法492条では『責任を免れる』と表現されています。

つまり,弁済の提供では,あくまでも債務者を債務不履行による責任から解放するだけであって,債務を消滅させるのは弁済の役割ということです

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

(絶賛準備中です! もう少しおまちください!)

※次条の解説はこちらです。

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