
民法281条は地役権の付従性と随伴性を定めているらしいけど,具体的にはどういうことなの?
あと,281条1項の『要役地について存する他の権利の目的』のところの意味がよくわからないです…。
本記事は,上記のような疑問に対する解説をしています。
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
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読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:地役権は,要役地の所有権と運命共同体
1 地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
民法281条 【地役権の付従性】
民法281条は,地役権の付従性と随伴性を定めており,それぞれの性質は以下のとおりです。
- 地役権の付従性:地役権を要役地と切り離して,地役権のみを譲渡することができない
- 地役権の随伴性:要役地が第三者に譲渡されたら,地役権も譲受者に移る
条文中の『他の権利の目的』とは,要役地に設定した地上権や抵当権の“設定先”に,地役権がなれる,という意味です。
※法律用語としての”目的”については,こちらの記事で解説しています。 是非あわせて確認してみてください!
例えば,要役地を使用できる地上権を設定した場合,別段の定めが無いのなら,地上権の目的である地役権にも地上権の効力は及びます。
よって,地上権者は,要役地に加えて,地役権の範囲内で承役地も使用できることになります。
解説:1項本文→2項→1項ただし書き,の順で理解しよう
281条1項本文
1 地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。
民法281条1項
民法281条1項本文により,要役地の所有権が第三者に移った場合,地役権も一緒に第三者へと移ります。
これを,地役権の随伴性と言います。
また,『要役地について存する他の権利の目的となる』とは,(地役権は,)要役地の上に存在する他の権利の目的となるという意味です。
1 地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。
民法281条1項
たとえば,抵当権を例にするなら,抵当権の設定先が要役地と設定されているのなら,この抵当権の効力は地役権にも及びます。
すなわち,「地役権は,要役地について存在する抵当権の目的となる」わけです。
したがって,要役地を設定先とした抵当権が譲渡された場合の,抵当権の譲受人は,要役地の抵当権に加えて地役権も取得することになります。
281条2項
2 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
民法281条2項
民法281条2項は,地役権を要役地から分離して譲渡することを禁止しています。
これを,地役権の付従性と言います。
また,地役権は,要役地から分離して,他の権利の目的とすることができません。
たとえば,要役地自体は賃貸借しないけど,通行地役権だけ賃貸借するなんてことはできません。
もしもそんなことが可能だとすると,地役権賃借人は,要役地は何の権利も持たないので要役地を使えないのに,通行地役権として承役地の通行だけ行える…でも要役地には入れない,という意味不明な状況が出来上がります。
このような状況は,権利関係をいたずらに複雑にするだけなので,民法281条2項により禁止されています。
281条1項ただし書き
1 地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
民法281条1項 ただし書き
民法281条1項ただし書きは,民法281条1項が任意規定であることを定めています。
よって,原則は,民法281条1項の規定通りですが,例外として,当事者によって設定行為により,別段の定めをすることができます。

え,じゃあ,『地役権は,要役地の所有権に従たるものとして,その所有権とともに移転する』の別段の定めとして,『地役権を,要役地の所有権に従たるものとせず,所有権と別に移転させる』って定めて,地役権の付従性を否定していいの?
このような定めはできません。
なぜなら,281条2項がそれを禁止しているからです。
2 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
民法281条2項
(本記事の解説順序が,“281条1項本文→281条2項→281条1項ただし書き”という変な順番になっているのは,上記の混乱しやすい点を理解しやすい流れにするためです。)

地役権を所有権と分離して譲渡することは,民法281条2項が禁止しているのはわかりました。
じゃあ,民法281条1項ただし書きの別段の定めは,具体的にどんなことを設定できるの?
その答えとなる具体例としては,「要役地の所有権が移転した場合,地役権を消滅させる」ような定めです。
このような定めの場合,地役権は所有権と分離して消滅しているのであって,所有権と分離して譲渡しているわけではないので,民法281条2項に抵触せず,民法281条1項ただし書きに該当する別段の定めと言えます。
付従性と随伴性
地役権の付従性と随伴性は以下のとおりです。
- 地役権の付従性:地役権を要役地と切り離して,地役権のみを譲渡することができない
- 地役権の随伴性:要役地が第三者に譲渡されたら,地役権も譲受者に移る
付従性と随伴性は,主に担保物権の性質のところに出てくる概念です。
付従性と随伴性は,言葉自体が似ているので,ここで,それぞれのイメージをざっくりと理解しておきましょう。
付従性
地役権がくっついている所有権が消滅するときは,地役権も一緒に消滅する,という“死ぬ時はいつも一緒だ!”というイメージが付従性です。
地役権だけを要役地(の所有権)と切り離して譲渡できないのですから,所有権に常に地役権はくっついていることになります。
その状態で所有権が消滅したのなら,地役権も寿命を迎え,一緒に死ぬということです。
つまり,地役権の生死は,くっ“付”いている所有権の運命に“従”うということで,付従性です。
随伴性
要役地の所有権が第三者に譲渡された場合,地役権も一緒に移転する,という“お伴として随行いたします!”というイメージが随伴性です。
前述の付従性が,権利が消滅するという権利の寿命が尽きる“死ぬ時の話”をしているのに対し,随伴性は付従性が出てくる時までの間,所有権と地役権はいつもどこでも一緒という“経過の話”をしていると憶えておくといいでしょう。
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。
参考文献など
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
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最後まで読んでくださりありがとうございました!