第7章 留置権

【担保物権四天王最弱】民法295条:留置権とは? わかりやすく解説!

2023年5月29日

伊藤かずま

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国際行政書士(第21190957号)
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ウリム

テキストを読み進めてて,担保物権という分野に差し掛かると,留置権というものがいきなり出てきます。

留置権というものは,どのような権利なのでしょうか?

本記事では,留置権がどのような権利なのか,その内容と,留置権の成立要件を解説いたします。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 留置権が担保物権四天王の中で最弱である理由がわかる
  • 留置権の内容と成立要件がわかる
  • 留置権を手に入れると,何ができるようになるのかが理解できる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:留置権は,担保物権四天王の中で最弱…。

民法295条 【留置権の内容】

1 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

留置権は,上記条文中の赤字『他人の物の占有者は,・・・その物を留置することができる』とあるように,他人の物を手元にキープすることが出来る,担保物権四天王のうちのひとつである物権です。

担保物権四天王
担保物権四天王

 

留置権の成立要件は,以下の4つです。

【留置権の成立要件】

  •  ①他人の物を占有していること
  •  ②債権がその物に関して発生していること(牽連性)
  •  ③債権の弁済期が到来していること
  •  ④占有が不法行為によって始まっていないこと

 

留置権は,担保物権四天王の中で唯一優先的弁済効力を有しないため,四天王の中で(個人的)最弱です。

※担保物権の効力に関してはこちらも是非お読みください! 非常に人気な記事です!

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解説:留置権を手に入れると,他人の物を手元にキープできる!

担保物権四天王

民法は,物を排他的・直接的に支配する権利である物権というものの存在を認めています。(民法175条

それら物権の中に,担保物権と呼ばれる物権たちが存在します。

担保物権とは,何かしらの債権の現実化を確実にするため,債権が履行されなかったときに備えて,物を人質として確保できる権利のことです。

民法典上では,担保物権は4つ認められています。

  • 留置権(295条)
  • 先取特権(303条)
  • 質権(342条)
  • 抵当権(369条)

以上の4つをまとめて,担保物権四天王と(おそらく筆者だけが)呼んでいます。

担保物権四天王
担保物権四天王

 

留置権とは?

担保物権は,すごーく簡単に言うと,物を人質としてキープする権利です。

そして,担保物権四天王のうちの留置権は,この「物を人質としてキープする」に全集中した権利です。

 

その詳しい内容は…,やはり条文に事細かに規定されていますので,さっそく確認してみましょう。

民法295条 【留置権の内容】

1 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

↑の赤字の部分が,本条文で最も大切な根幹部分ですので,ここだけ抜き出して確認してみます。

 

『他人の物の占有者は,・・・その物を留置することができる』

 

ウリム

ふむふむ,つまり「他人の物を占有している者は,その物を手元にキープ(留置)することができる」というわけですね…!

...あれ? 他人の物を手元にキープって…他人の所有権を侵害してませんか?

はい,そのとおりです。

留置権は他人の所有権に打ち勝って,他人の所有物を手元に置いておくことができるのです。

しかしながら,所有権というのは物権の王とも言われる,法律を勉強したことのない人でもほとんどの人が知っている権利です。

物権という非常に強力な権利のなかでも,とりわけて強力な所有権を制限(侵害)できるのが,留置権という権利なのです。

 

留置権の成立要件

ウリム

でもさ,僕らって所有権を持っていたら,自分の物って確保できる共通認識がありますよね?

なのに,どこかの誰かが留置権を持っているだけで,その人の手元に自分の所有物がキープされてしまうなんて…そんな世の中じゃ安心できなくないですか?

前述の通り,留置権を持っている人は,他人の所有権に影響を与えることができます。

しかし,皆さんご存知のとおり,所有権は,私たちの財産権を基礎付ける非常に大切な権利です。

したがって,他人の重要権利である所有権に影響を及ぼす留置権は,そう簡単に手に入りません。

 

先程,『他人の物の占有者は,・・・その物を留置することができる』と,民法295条の根幹部分のみを抜き出して留置権がどのようなものなのかを見ましたが,実は留置権が成立するための条件が条文の『・・・』部分に書かれています

 

ここからは留置権を手に入れるために必要な条件を,条文をもとに整理していきましょう。

民法295条 【留置権の内容】

1 他人の物の占有者は②その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、③その債権が弁済期にないときは、この限りでない

2 前項の規定は、④占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない

したがって,留置権を手に入れるための条件(=成立要件)は,以下を全て満たすこととなります。

【留置権の成立要件】

  •  ①他人の物を占有していること
  •  ②債権がその物に関して発生していること(牽連性)
  •  ③債権の弁済期が到来していること
  •  ④占有が不法行為によって始まっていないこと

上記4条件を全て満たしたとき,留置権を手に入れることができ,他人の所有物を手元にキープすることができます

本記事では,留置権がどのような権利なのかについて解説する記事ですので,各成立要件たちの細かい知識は別の記事に委ねます。

 

留置権の具体例

留置権発生のための4要件を満たす具体例は,よく「自動車整備」の例が挙げられます。

すなわち,お客さんが車検などで自動車整備をお店に依頼するような状況です。(代金支払時期=弁済期は,整備完了時とします)

留置権 自動車整備事例
留置権 自動車整備事例

この事例において,整備完了後に整備代金をまだ支払っていないケースで留置権が発生します。

 

①他人の物を占有していること

→お客さんの車をお店が預かって(占有して)いる

 

②債権がその物に関して発生していること(牽連性)

→お店側のお客さんに対する整備代金請求権という債権が,整備をする車という物に関して発生している

 

③債権の弁済期が到来していること

→整備が完了し,整備代金請求権が発生し,その支払いがまだされていない

 

④占有が不法行為によって始まっていないこと

→有効に成立した自動車整備請負契約によって,お客さんの車を預かっている

 

以上の様に,自動車整備のケースでは,留置権の成立4要件を満たしていることが確認できます。

よって,自動車整備を担当したお店は,お客さんが代金を支払うより先に車を返せと要求してきたとしても,お客さんが代金を支払うまで,お客さんの車を預かっておくことができます。

留置権行使事例
留置権行使事例

 

留置権を手に入れるとできること

ここまで,留置権という権利がどのような権利なのか,また,留置権を手に入れる4要件を見てきました。

 

すなわち,留置権という権利は『他人の物の占有者は,・・・(成立4要件を満たしたとき)・・・その物を留置することができる』と条文にある通り,他人の物を手元にキープできるものです。

ウリム

他人の物をキープできるのはわかったけど,キープして・・・あとは?

 

留置権以外の,他の担保物権(先取特権・質権・抵当権)では,担保にとった他人の物を,競売(オークションのようなもの)にかけて売り払い,その代金を手に入れることができることができます

留置権以外の担保物権が持つ,競売にかけて売り払い,代金を手に入れることができる,この効力を優先的弁済効力といいます。

※優先的弁済効力など,担保物権の効力に関する横断理解は以下の記事で解説しています! 是非読んでみてください!

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留置権は担保物権四天王の中で唯一優先的弁済効力を有しないとされています

つまり,先ほどの自動車整備の例では,お店は代金が一向に支払われないからといって,勝手にお客さんの車を競売にかけてお金に変えて,代金を回収することができないのです。

 

優先的弁済効力を有しないとは,つまり,他人の物を手元にキープするところまでしかできない!ということです。

 

留置権は法定担保権という,民法295条に定められた(法定された)4要件を満たせば自動的に発生する権利であるため,優先的弁済効力が無いものとし,その効力の強さは控えめに設計されています。

優先的弁済効力は無いものの,他人の物を手元にキープし続けることはできるので,代金を支払わなければ,自分の物が他人のもとから返ってこないという心理的圧迫をかけることで,代金支払いの履行を確保しようという思惑で設計されているのです。

 

留置権に優先的弁済効力が認められない理由としては,確実に整備代金を回収したいのなら,お互いの約束・契約で効力が発生する約定担保物権である質権や抵当権を設定すればよいからです。

非常にしつこいですが,留置権は優先的弁済効力を有せず,他人の物を手元にキープするところまでしかできないことが,留置権の基礎の基礎になります

他の担保物権たちが,優先的弁済効力を有していることと比較すると,担保物権四天王の中では,留置権が最も弱い権利であり,四天王最弱ということになります。

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

(絶賛準備中! 気長にお待ちください!)

※次条の解説はこちらです。

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参考文献など

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