今回は民法175条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
物権は,この法律その他の法律に定めるもののほか,創設することができない。
民法 第175条【物権の創設】
条文の性格
民法の物権編のトップバッターの条文で,物権法定主義を定めます。
条文としては,物権は法律で定められているものしか認められない,ということのみを定めた非常に短いものです。
以上で解説終わりではさみしいので,物権そのものから,物権法定主義が導かれるまでの重要用語たちの繋がりを見ていきましょう。
条文の能力
物権とは
物権とは,物を直接的支配をする権利のことです。
民法には,大きく分けて物権と債権という2つの権利が規程されていますが,権利の強さとしては物権のが圧倒的に強いです。
物権の王とも言える権利に所有権があります。 おそらく法律の勉強を1ミリもしたことのない人でもほぼ間違い無く名前をくらいは知っているであろう物権でしょう。
所有権は,物を使うも壊すも,あげるも貸すも,捨てるも何をするのも自由に行うことが出来る物権です。 まさに物の生殺与奪の権です。
この物権の持つ,物に対して自分が自由に処分できる権利の性質を,「直接的支配する権利」と先ほど表現したわけです。
物権の排他性
名実ともにトップクラスの物権である所有権がイメージしやすいと思いますので,ここからは所有権を例に進めます。
自分が所有権を有している物(甲)を自由に処分出来る,すなわち甲に対して物権の直接的支配が認められると言うことは,裏返せば,他人は甲については手も足も出せず何も出来ないことになります。
これを物権の排他性と言います。
一物一権主義
ある物に自分の所有権が認められれば,物権の排他性によって,他人はその物について排他されるわけですから,その物について重ねて他人の所有権が成立することはありません。
なぜなら,すでに,ある人の所有権が認められている物に対して,別の人が所有権を主張できるとすると,物を自由に処分することが出来る人が自分以外にも存在することになります。
そうなると,所有権によって排他的支配をしていたはずなのに,自分の知らないうちに処分されていた…,なんてことが起こりかねません。
すなわち,ひとつの物に所有権(物権)が2つ以上成立することを認めると,物権の直接的支配と排他的支配が否定されることになります。
物への直接的支配と排他的支配が認められないのならば,それは所有権(物権)という権利が認められないということになります。
したがって,あるひとつの物に同じ物権が2つ以上成立することは,物権という権利の性質上あり得ないわけです。
この原則ことを一物一権主義といいます。
法定物権主義
ここまでで,物権の定義の直接的支配から始まり,物権の排他性,一物一権主義と導かれた順に見てきました。
民法175条は物権法定主義を定めていますが,この物権法定主義は,一物一権主義と繋がりがあります。
まず,物権法定主義とは,物権は法律に定められたものしか認められないというものです。
物権は,物を排他的支配できるめちゃくちゃ強力な権利です。
しかも,一物一権主義から,一旦ある物に対して物権が成立すると,原則として他人はその物に成立した物権に対してなす術がありません。
そのため,私たち個人が自由気ままに,勝手に物権を新たに創設できるとなると,物権創設の早い者勝ちの世の中になり,社会秩序を破壊する可能性が高いため,民法によって,人の手による物権の創設は封印されることとなりました。
コメント
物権の総則に入ると,物権の定義や概念がたくさん出てきます。
それぞれをバラバラに憶えるのではなく,物権とはなにか?という物権の定義からスタートして,それぞれの概念がどの様に繋がっているのかを理解しながら憶えておきましょう。
今回は,175条の『物権法定主義』が条文の内容でした。
『物権法定主義』という言葉と概念だけを単体で憶えず,『物権の定義』→『物権の排他性』→『一物一権主義』→『物権法定主義』と,全てが繋がっていることを理解し,憶えておきましょう。
(※補足 実は抵当権という直接的支配性や排他性を有しない物権も有ります。 本記事では物権の持つ原理原則の説明を優先するため,途中から所有権を例に挙げ,「所有権」と「物権」をやや曖昧な使い分けをし及び間違いではないが厳密には正確ではない,わかりやすさを重視した説明をしていることをご容赦ください。)
最後まで読んでくださりありがとうございました。