第3節 行為能力

民法20条:制限行為能力者の相手方の催告権をわかりやすく解説

2021年3月19日

伊藤かずま

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国際行政書士(第21190957号)
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今回は民法20条を3分でわかりやすく解説します。

※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています

1 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす

 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

 特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

民法 第20条【制限行為能力者の相手方の催告権】

条文の性格

制限行為能力者についての言及が始まったのが民法5条からでした。

長かった制限行為能力者を規定している条文たちも、残りはこの20条と次回の21条で終わりになります。

今までの5条~19条までの条文たちは、意志能力が十分でない者、すなわち制限行為能力者たちを手厚く保護することに徹していました

復習ですが、例えば取消権の様なチート能力を与えるなどする事で、想定外の不利益な契約などから身を守ることを可能にしていましたね。

今回の20条と次回の21条も、制限行為能力者について定めているの同じです。

ただ、20条と21条は制限行為能力者側ではなく、制限行為能力者と法律行為をして相手側の保護について規定しています

同じ目的を持つ組織の中にいて、違う立場に立つ条文ですね。

名探偵コナンだと、黒の組織に属しながらも、コナンや蘭の味方をするベルモット的な存在でしょうか。

この20条は押さえておくべき用語やポイントがいくつかあるので確認していきましょう。

 

条文の能力

20条は、主に制限行為能力者と契約等した相手方を守るために存在します。

取消権というチート能力を持つ制限行為能力者に対して、20条は相手方に対して催告権という権利を与え、相手方の保護を実現しています

 

催告権とは

催告権とは、制限行為能力者との法律行為を有効と確定してよいか、一定の期間内に返事をしろ、と要求できる権利です。

催告権を行使して、制限行為能力者側が契約を有効と一度認めたら(追認したら)、もうそれ以降は制限行為能力者といえども、取消権を使うことはできません。

わざわざ念押ししてまで契約が有効かどうか確認して、それに対して契約を有効と認めているのだから当然っちゃ当然ですよね。

確認後に「やっぱり取り消します」が通ってしまうとするなら、確認の意味がなくなってしまいます。

また、催告権を持っているのは相手方側だけで、制限行為能力者側は持っていませんので注意しましょう

相手方側に催告権を与えられている理由ですが、相手方は、いつ制限行為能力者の持つ取消権によって契約等が取り消されるかわからない不安定な状態に置かれています。

相手方は催告権を行使をすることで、制限行為能力者の取消権を消滅させることができ、自ら契約を安定した状態に持って行くことが出来るわけです。

つまり、催告権は、チート能力である取消権を封印することができる魔法みたいなものなんですね。

 

追認とは

追認とは、追認できる人が催告に対して、催告対象の法律行為を有効と認めることです

追認は一度したら取り消すことができません

 

相手方は誰に対して催告できるのか

主に、以下の人たちに対して催告することが出来ます。

  1. 制限行為能力者から行為能力者になった場合の本人
  2. 成年後見人, 保佐人, 補助人, 法定代理人(親権者)
  3. 制限行為能力者本人

※1.の「制限行為能力者から行為能力者になった場合の本人」の例は、契約時は未成年者だったが後に成人した場合です。

 

催告を無視したらどうなるのか

催告を無視すると、契約を有効とするパターンと、取り消されて無かったことにするパターンの、2通りの場合があり得ます

どっちになるかは丸暗記は大変ですので、次のポイントを抑えて憶えましょう。

ポイントは、催告された人が自分ひとりで有効に法律行為ができる=行為能力者かどうかによって、催告を無視した場合の結果が分かれるのがポイントです。

 

行為能力者が催告を無視したら追認したとみなす

催告された人が、自分ひとりで有効に法律行為ができる=行為能力者なら、無視した場合は、追認があったとして契約は有効となります。

つまり

  1. 制限行為能力者から行為能力者になった場合の本人
  2. 成年後見人, 保佐人, 補助人, 法定代理人(親権者)

が無視したら、追認されたとして法律行為は有効扱いになります。

この人達は、自分で有効な法律行為ができる人達です。

なので「催告を無視した場合に自分が不利になることも理解できるよね?」ということです。

無視を決め込んだ催告された人よりも、わざわざ催告までしてくれた相手方を保護して、契約などを有効として固め、制限行為能力者側の持つ取消権を消滅させます。

 

制限行為能力者が催告を無視した場合は、取り消されて行為は無かったことになる

催告された人が、自分ひとりで有効に法律行為ができない=制限行為能力者なら、無視した場合は、契約等は取り消されたとしてその法律行為は無かったことになります

つまり、

3. 制限行為能力者本人

が無視したら、追認を拒否したとして、法律行為は無かったことになります。

「追認する?しない?どーするの?」と言われても、制限行為能力者は事理弁識能力が無い又は不十分なので、判断することが出来ないわけです

自分自身で法律行為の不利益を判断できないから、制限行為能力者には取消権を認めているのに、催告によって事理弁識能力がないのに自分自身で判断を迫られて、そこで判断しなかったら取消権を取り上げてしまう…、というルールでは本末転倒です。

そこで、自分自身で判断できない制限行為能力者に対して催告がされ、その催告を無視したり返答しなかった場合は、取消権が自動的に発動するようにし、契約が有効に成立してしまって予想外の不利益を被らないようなルールとなっています。(民法20条4項)

つまり、制限行為能力者本人に対しての催告には返答をしなくても、制限行為能力者にとって不利益な契約が勝手に有効に成立することのないように20条4項が定めているのです。

これによって、少なくとも制限行為能力者が不測の事態に陥ることは防げるわけですね。

もしかしたら、今までの制限行為能力者本人が催告された場合の説明で、「でも催告されたことに対して返答しない、無視した制限行為能力者側にも非はあるんじゃないの? それでも制限行為能力者側が守られるの?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

催告に回答しなかったとしても、制限行為能力者本人に非が無いパターンもありえます。

例えば、まだ「オギャー」としか言えない乳児の赤ちゃんに対して、賃貸借契約をした相手方が「賃貸借契約を有効としていいですかー?」って催告した場合です。

赤ちゃんは未成年者なので、制限行為能力者に該当しますが、まだ会話ができないので当然催告への返答は出来ません。

この時、催告に返答しなかった制限行為能力者には非がある!って赤ちゃんを責める人はいないと思います。

具体例の赤ちゃんも含めて、基本的に制限行為能力者は返答する判断力はないので、制限行為能力者本人に催告が来た場合、返答しないことに民法はペナルティを用意していないんですね。

相手方としては、催告することで契約をしっかりと有効化したいのなら、後見人や親権者などの、キチンと判断できる人に対して催告しましょうね、ということです。

 

コメント

制限行為能力者本人に対して催告があった場合の説明の際、赤ちゃんの具体例を出させて頂きました。

法律の勉強をする際、具体例で確認するときは少し極端な例をイメージするとわかりやすかったりするのでオススメです。

未成年ってだけでも、乳児~大学生と実はいろんなパターンがあり得るわけです。

条文に書いてあることの感覚に共感できないときは、極端な例をイメージしてみてください。

きっと条文が守りたいものが見えてくるはずです。

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