第5節 条件及び期限

【暗記不要の絶対正解法】民法131条:既成条件をわかりやすく解説

伊藤かずま

【告知】夏コミC104出展します!

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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初学者&独学&4ヶ月&一発合格(202点)で行政書士試験に合格しました。
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ウリム

停止条件・解除条件だけでも,どっちがどっちか混乱するのに,そこに達成済みだったとか,達成されないことが確定していたとか...

ごちゃごちゃ言われて,なかなか暗記できません!!

本記事では,民法131条の既成条件について,暗記できなくて困っている方に向けて,”暗記不要で絶対正解にたどり着ける方法を解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 既成条件の概念がわかる
  • 既成条件の全てのパターンについて,暗記しなくても正解できる方法が身に着く

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:条件成就済み・成就不可の法律行為の取扱い方法を定めている

1 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。

2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。

3 前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第128条及び第129条の規定を準用する。

民法131条 【既成条件】

条件を付けたものの,既に条件が成就していた・既に条件が達成されないことが確定した場合に,法律行為をどのように処理するのかを定めています。

取扱いパターンとしては,以下の4パターンが存在します。

  • ①:既に条件成就済み+停止条件=無条件
  • ②:既に条件成就済み+解除条件=無効
  • ③:既に条件成就不可+停止条件=無効
  • ④:既に条件成就不可+解除条件=無条件

 

民法131条3項は,既に条件成就済みor不可の事実を当事者が知らない間に,条件付法律行為をどのように扱うことができるのかを定めています。

 

解説:暗記せずに,図に描いて答えを導こう!

基礎知識の“停止条件・解除条件”をキチンとおさえ,図で解けるようにしよう

この条文をちゃんと理解するには,停止条件・解除条件が,どっちがどっちかを正確に暗記し,図を書いて解けるようにすることがポイントです。

※停止条件と解除条件の定義や図解についてはこちらの記事で詳しく解説しているので,本記事では簡略に説明いたします。

あわせて読みたい

停止条件とは,条件が成就することで法律効果が発生するものです。

停止条件・図解
【図解】停止条件

 

対して,解除条件は,条件が成就することで法律効果が消滅するものです。

解除条件・図解
【図解】解除条件

 

民法131条1項:既に条件成就済みパターン

1 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。

民法131条1項 【既成条件】

条件を付けたのはいいんだけど,フタを開けてみたら,既に条件が成就してしまっていたケースが民法131条1項の想定するところです。

既に達成されていた条件が,停止条件なのか解除条件なのかで取扱いが変わります。

 

停止条件が既に達成されていた場合

停止条件の場合,条件が達成されるまで法律効果は停止しているため,現在の足元から,条件成就ポイントまでの未来は“停止を表す点線”となります。

停止条件・図解
【図解】停止条件

“停止を表す点線”上を未来に向かって進み,条件成就ポイントに到達すると,そこから先は法律効果が発動した“足元が実線”の世界になります。

既成条件・民法131条1項・停止条件
既成条件・民法131条1項・停止条件-1
既成条件・民法131条1項・停止条件
既成条件・民法131条1項・停止条件-2
既成条件・民法131条1項・停止条件成就
既成条件・民法131条1項・停止条件成就

しかし,停止条件が既に達成されていたということは,条件成就ポイントは未来ではなく,過去の方に存在することになります

既成条件・民法131条1項・停止条件成就済み
既成条件・民法131条1項・停止条件成就済み

そうすると,条件成就ポイントより未来側は実線,すなわち,“今現在も法律効果が発動している赤線”状態になります

したがって,停止条件が既に成就していた場合は,何もしなくても法律効果が発動します,言い換えれば,何も条件を付けていないのと同じであり,これは“無条件”と考えることが出来ます。

以上から,既に条件成就済み+停止条件=無条件が導かれることになります。

 

解除条件が既に達成されていた場合

ここまでの話と同じように,解除条件が既に達成されてしまっていた場合を考えてみましょう。

解除条件を設けた場合,通常であれば,今現在の足元は“法律効果が発動中を意味する実線”です。

解除条件・図解
【図解】解除条件

このまま未来に進むことで,条件成就ポイントに到達すると,法律効果が消滅するため,そこから先の未来は何も無い世界となります。

 

ここで,解除条件が設定時に既に達成されていたケースを考えてみると,条件成就ポイントは過去の方に位置します。

そうすると,条件成就ポイントより未来側は何もない,すなわち,“今現在は法律効果が何もなく,さらに将来に渡って再度有効になることもありません”

したがって,解除条件が既に成就していた場合は,何をしても法律効果が発動することありません。

言い換えれば,発動することの無い法律行為は存在しないも同然であり,これは“無効”と考えることができます

以上から,既に条件成就済み+解除条件=無効が導かれることになります。

 

民法131条2項:既に条件成就不可パターン

2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。

民法131条 【既成条件】

民法131条2項は,条件を設けたはいいけど,その条件が達成されないことが実は既に確定してしまっていた場合に,法律行為をどう扱うかを定めています。

これも,停止条件・解除条件ともに,図を書くことで確実に正解にたどり着くことができます。

図を使った解き方は,民法131条1項の場合とほぼ同じなので,サクッと行きましょう。

 

停止条件が達成されないことが,既に確定していた場合

停止条件が達成されないことが確定済みということは,どこまで未来に向かって進んでも,条件成就ポイントが存在しないということです。

すなわち,停止条件の場合,今の足元の点線がこれから先の未来ずっと続くことになります。

よって,達成されることの無い停止条件を設けた場合,その法律行為はずーーーっと停止し続けるため,この法律行為はこの世に存在しないようなものなので,“無効”です

以上から,既に条件成就不可+停止条件=無効が導かれます。

 

解除条件が達成されないことが,既に確定していた場合

解除条件が達成されないことが確定済みの場合も,どこまで未来に向かって進んでも,法律効果が解除される条件達成ポイントが存在しません。

すなわち,解除条件の場合,今の足元の実線が,未来に向かって永遠に続くことになります。

よって,達成されることの無い解除条件を設けた場合,その法律効果はずーーーっと有効であり続けるので,この法律行為は実質無制限であるため,無条件と考えることが出来ます

よって,既に条件成就不可+解除条件=無条件となります。

 

民法131条3項:既に条件成就済みor不可の事実について不知間の取扱い

3 前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第128条及び第129条の規定を準用する。

民法131条3項 【既成条件】

民法131条3項は,既に条件が成就していた(民法131条1項),又は条件成就されないことが既に確定していた(民法131条2項)ことについて,当事者が知らない間は,条件成就の妨害は禁止(民法128条)であり,当該法律行為を処分・相続・保存・担保に供することができる(民法129条)ことを定めています。

 

停止条件が既に達成済みだった場合,この法律行為は無効です。

無効の法律行為(や,そこから発生する権利)は,無効ゆえ,存在しないものとして扱われます。

存在しない法律行為や権利は存在しないのですから,当然に誰かに譲渡するとかはできません。

しかし,現実には無効な法律行為(や権利)も,当事者たちが無効であることを知らない場合は,処分等を許すことにしたのが民法133条3項です。

 

無効であることを知らない当事者が行った処分行為を前提として,その後の法律行為や事実関係が積みあがっていくため,後から無効として法律関係を混乱させないためのルールです。

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

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※次条の解説はこちらです。

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参考文献など

参考文献

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

 

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最後まで読んでくださり,ありがとうございました。

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