第5節 条件及び期限

【民法132条:不法条件】なぜ不法な行為をしない条件はダメなのか?

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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ウリム

不法な条件を附した法律行為が無効なのは,なんとなくイメージできます。

でも,なぜ,不法な行為をしないことを条件にしてはいけないの?

不法な行為してないんだから別によくない?

本記事では,民法132条の不法条件と,不法行為をしないことを条件とした法律行為が無効になる理由について解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 不法条件の概要を理解できる
  • 不法条件が無効になると,どうなるのかがわかる
  • 民法133条後半の,不法行為をしないことを条件とした法律行為が無効となる理由を知ることができる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,ロゴデザイナー・現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:無効にしないと,不法行為を正当化することになる

不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。

民法132条 【不法条件】

不法な条件を附した法律行為は,無効です。

不法な行為をしないことを条件とした法律行為も,無効です。

 

民法132条は,不法な条件を附したことで,不法性を帯びた法律行為が有効に扱われてしまうことがないようにするものです。

不法性を帯びた法律行為が有効として扱われるということは,すなわち,法律が不法行為を正当化するということです。

 

解説:不法な行為をしないことを条件に附すと,契約が不法性を帯びる

不法な条件を附した法律行為は無効

不法な条件を附した法律行為が無効は,非常にイメージしやすいと思います。

 

たとえば,「Xを殺してくれたら,1,000万円払う」というような契約が,不法な条件を附した法律行為に該当します。

Xを殺すという不法な条件を附していることから,民法132条により,この契約は無効になります。

 

この“契約が無効”とは,どういうことでしょうか?

契約が無効ということは,契約は効力を有せず,この世に存在しないものとして扱われます

 

したがって,仮にXを殺害して条件を達成しても,契約は無効,すなわち,存在しないもの扱いなので,存在しない契約から1,000万円の支払い請求権は発生せず,1,000万円の支払い請求はできないことになります。

 

なぜ不法な条件を附した法律行為は無効なのか

無効にしないと,民法という法律が,不法行為を正当化してしまうことになるからです。

 

たとえば,前述の「Xを殺してくれたら,1,000万円払う」契約を,仮に有効としてみましょう。

Xを無事(?)に殺害した場合,契約が有効ならば,問題なく1,000万円の支払いを請求することができます。

依頼者が支払いを拒み,万が一,民事裁判になったとき,この契約は有効であるため,裁判所が「“ちゃんと”殺人行為をしたのだから,1,000万円支払なさい」と判決することもあり得ます

 

このように,不法条件を附した法律行為を有効としてしまうと,社会秩序を守るべき司法機関である裁判所が,“殺人行為を正当な行為として認めてしまう”ことになります

したがって,不法条件を附した法律行為を有効にしてしまうと,司法が不法行為を正当化してしまうため,不法条件を附した法律行為は無効とされています

 

不法な行為をしないことを条件とする法律行為も無効

ここまで解説した,不法な行為を“する”ことを禁止した民法133条前半の規定は,非常にイメージしやすいと思います。

 

対して,民法133条後半の『不法な行為をしないことを条件とするものも、同様(無効)とする。』は,少しイメージしにくいと思います。

ウリム

なんで不法な行為をしないことを条件にするのがいけないんだ…?

ちゃんと法律を守ってるんだからよくない…?

この後半の規定は,具体例を考えると理解しやすいです。

 

たとえば,「毎月1万円払ってくれたら,お前の店では万引きしない」というような契約が,不法な行為をしないことを条件とする法律行為です。

ウリム

万引きしないのが条件とか…,当たり前じゃね?

不法な行為をしない,というのは当たり前のことです。

 

この当たり前のことを条件に設定すると,法律行為が不法性を帯びるという,ちょっと不思議なことが発生します。

 

「毎月1万円払ってくれたら,お前の店では万引きしない」という契約を見て,皆さんはどのような印象を抱くでしょうか?

常日頃,万引きしている者が,店主に対して「万引きをやめて欲しいなら,1万円払え」というような,一種の脅迫のようなものと捉えることができます。

 

“毎月1万円支払う”・“万引きしない”,個々は決して不法なものではありません。

しかし,「不法な行為(万引き)をしない」ということを条件にすると,「毎月1万円払ってくれたら,お前の店では万引きしない」という脅迫のようなものになり,契約は一気に不法性を帯びることになります

 

このように,民法132条後半の規定は,不法な行為をしないことを条件にすることを禁止し,法律行為が不法性を帯びることを阻止するために存在しています

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

(現在準備中です!)

※次条の解説はこちらです。

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参考文献など

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この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

 

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