第5節 条件及び期限

民法129条:条件が成否未定中の権利の処分【128条と矛盾してない?】

2022年8月19日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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ウリム

条件が成否未定の間は,相手方の利益を邪魔することは出来ないですよね?(民法128条)

民法129条は,“条件成否未定の間に権利を処分できる”って書いてあるけど,矛盾…してない?

条件付権利を処分したら,相手方の利益を害しませんか?

本記事では,民法129条の,条件の成否未定の間における権利の処分等について解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 民法129条の趣旨が理解できる
  • 民法128条と矛盾しているんじゃないか?の違和感を解消できる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:条件付権利も,立派な一人前の権利

条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる

民法129条 【条件の成否未定の間における権利の処分等】

 

条件付法律行為の条件が成否未定の間でも,当該条件付法律行為から発生する条件付き権利は,立派な一人前の権利として扱われます

権利である以上,条件付き権利も,処分・相続・保存・担保とすることができます。

 

条件付法律行為の権利の処分等も,一般の規定に従います。

したがって,条件付き一身専属権や,差押えを受けた条件付き債権は譲渡(処分)できません

 

民法128条は,相手方の利益を害する可能性がある,停止条件付法律行為の“目的物”や“達成過程”を,処分・妨害などすることを禁止しています。

対する,民法129条は,条件付法律行為から派生した“権利”を処分することを許可しています。

 

解説:民法128条と129条を対比して知識整理しよう

条件付法律行為も立派な権利

物権であれ債権であれ,基本的には,権利者は自身が持つ権利を放棄する・譲渡するなど,自由に処分することができます

 

条件が付けられていて,その条件が成就するかどうか未定の間も,条件付法律行為(条件付契約など)から発生する条件付権利も,立派な一人前の権利として扱われます。

つまり,条件付権利も,条件成就前に譲渡するなどして,処分することが可能です。

 

たとえば,「次回の行政書士試験に合格したら親から100万円のお祝い金を貰える」という停止条件付権利(甲)を,Aさんが持っているとします。

お金を貸す側Bさんと借りる側Aさんが承諾しているのなら,Aさんは,この停止条件付権利(甲)を担保に入れて,120万円を借金することも可能というわけです。

 

民法128条 vs 民法129条

民法129条と非常に似た規定に,民法128条があります。

条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない

民法128条 【条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止】

条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

民法129条 【条件の成否未定の間における権利の処分等】

これら2つの条文は,共に,条件を付けた法律行為の成否が未定の間,どのように条件付法律行為や権利を取り扱うかと定めたものです。

 

民法128条と129条を並べて読むと…

ウリム

民法128条で『相手の利益を害することができない』って言ってるのに,

民法129条で『条件付権利を処分することができる』って…,

なんか矛盾している気がするけど気のせい?

と,パッと見,矛盾しているようにも見えます。

 

民法128条の解説で利用した「行政書士試験に合格したら,ロレックスをプレゼントする」という事例を改めて考えてみます。

Bさんが,ロレックスを売却(処分)したことで,相手の利益を害しています。

そのため,民法129条で許可されている“処分”をしたことで,民法128条の禁止規定に抵触してしまっているのでは?という矛盾です。

 

結論から言うと,民法128条と129条は矛盾していません

 

民法129条は,停止条件付法律行為から派生した“権利”を処分することを許可しています

条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

民法129条 【条件の成否未定の間における権利の処分等】

 

対して,民法128条は,相手方の利益を害する可能性がある,停止条件付法律行為の“目的物”や“達成過程”を,処分・妨害などすることを禁止しています

前述のロレックス売却事件では,停止条件付契約の“目的物”であるロレックスを売却(処分)したことが,民法128条の禁止規定に抵触したのです。

民法128条・事例
民法128条・事例

 

民法129条は,停止条件付契約の“権利”の処分を認めているのですから,ロレックス案件において,“ロレックスを貰える権利”を他人に譲渡(処分)することがOKということです。

民法129条・事例
民法129条・事例

 

したがって,民法128条と129条をサラッと流し読みすると,一瞬「矛盾してね?」と感じるかもしれませんが,矛盾していないことがわかります。

 

『一般の規定に従い』の意味

権利の中には,処分・相続・担保に供することが出来ない権利が存在します。

 

代表的なものとしては,一身専属権です。

一身専属権は,こちらの記事で解説しているとおり,“その人にのみ認められる特別な権利”です。

よって,一身専属権は,自由に処分することができません。

つまり,“一般の規定に従えば”,一身専属権は譲渡・相続など出来ないことになります。

 

一身専属権の具体例としては,生活保護受給権を知っておく必要があります

生活保護の申請中には,『許可が下りたら(停止条件),生活保護を受給できる』という停止条件付生活保護受給権が存在することになります。

前述のとおり“一般の規定に従えば”,一身専属権である生活保護受給権は,他人に譲渡(処分)したり,配偶者に相続させることはできません。

したがって,民法129条により,停止条件付生活保護受給権も,生活保護受給権と同様に,一般の規定に従い,譲渡(処分)・相続・担保にしたりすることはできません

条件の成否が未定である間における当事者の権利の義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

民法129条 【条件の成否未定の間における権利の処分等】

 

一身専属権以外で,自由に処分など出来ない権利としては,差押えを受けた債権などが存在します。

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

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※次条の解説はこちらです。

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参考文献など

参考文献

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

 

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