第5節 条件及び期限

【期待権を守れ!】民法128条:『相手方の利益を害することができない』の意味をわかりやすく解説

2022年8月17日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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ウリム

民法128条の『相手方の利益を害することができない』って,どういう意味なの?

利益を害してしまったら逮捕されるの?

本記事では,民法128条の趣旨と,条文中の『相手方の利益を害することができない』の意味をわかりやすく解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 民法128条の趣旨を理解できる
  • 『相手方の利益を害することができない』の意味がわかる

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:相手方の期待を裏切ってはいけない

条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない

民法128条 【条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止】

条件が成立した場合に,不利益を被る側は,条件成就を邪魔してはいけない,という至極当然の禁止規定を定めたものです。

 

法律行為に条件を付した場合,条件が成就した際に恩恵を受ける側は,ある一定の利益が発生する期待を抱くことになります。

これを期待権と言ったりします。

本条は,この条件成就による利益を期待する者の期待権を保護するものです。

 

条文中の『相手方の利益を害することができない』は,相手方の利益を害する行為を禁止し,万が一,この禁止規定を破った場合は不法行為責任を負う可能性があると,解釈されています。

したがって,相手方の利益を害する行為が無効になるわけではありません

 

解説:禁止規定を破っても,法律行為が無効になるわけではない

条件が成就した場合の利益とは?

条件とは,将来発生するかどうかが不確実である事実に,法律効果の発動・消滅をかからせるというものです。

民法では,条件には以下の2種類を認めています。

  • 停止条件:条件成就で,法律効果が発動する
  • 解除条件:条件成就で,法律効果が消滅する

 

※停止条件・解除条件については,こちらの記事で詳細に解説しています。停止条件と解除条件が,どっちがどっちなのか混乱する方におすすめです。

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ここから,民法128条の条文中の『条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益』が,どのようなものかを,①停止条件・②解除条件ごとに確認してみましょう。

条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

民法128条 【条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止】

 

①停止条件付法律行為における利益を侵害例

「Aさんが行政書士試験に合格したら,Bさんが持っているロレックスを,Aさんにプレゼントする」という契約が,停止条件付法律行為です。

 

このような契約がされている状況で,行政書士試験に合格発表前(条件成否確定前)に,BさんがロレックスをCさんに売ってしまった場合,Bさんの販売行為は,相手方(A)さんの利益の侵害に該当します

 

販売行為により,ロレックスの所有権をBさんは失ったことにより,“Aさんが行政書士試験に合格しても,Bさんは契約を履行出来ないため”です。

この“Bさんが契約を履行できない”が,Aさんの利益を侵害していると評価されます。

 

○解除条件付法律行為における利益を侵害例

「一度でも毎月の支払いが遅れたら,今後お取引をしない」という契約が,解除条件付法律行為です。

このような契約がされているとき,取引を強制終了するために,支払の受け取る側が,支払の振込先を敢えて教えず,故意に支払い遅延を発生させたような場合が,利益の侵害に該当します。

 

『相手方の利益を害することができない』の意味

民法128条には,条件付法律行為発生時には,『相手方の利益を害することができない』と書かれています。

条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない

民法128条 【条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止】

 

ウリム

できないから…なんなの...?

条文に書いてあっても,悪い人は条件成就を邪魔することだってあるよね?

民法128条の『相手方の利益を害することができない』というのは,“条件成就を妨害することを禁止し,この禁止規定を破ったら不法行為責任を負う(可能性がある)よ”という解釈です。

 

ポイントは,相手方の利益を害する行為をしたとしても,無効となるわけではない,という点です。

 

たとえば,前述の停止条件付法律行為のところで取り上げた,ロレックスを第三者に売ってしまった事件において,Bさん⇔Cさんの売買契約は無効にはなりません

 

ウリム

え? じゃあ,民法128条ってなんのためにあるの?

強制力も無いし…存在価値なくね?

もしも,その後,Aさんが無事に行政書士試験に合格(停止条件が成就)したとします。

このときに,AさんからBさんに対してロレックスの引渡しを請求した場合,Bさんは契約不履行に陥るため,損害賠償責任を負うことになります

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

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※次条の解説はこちらです。

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参考文献など

参考文献

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

 

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