期限の利益が強制的に喪失してしまうパターンがあるらしいじゃないですか!
一体どんなパターンなの?! 勝手に喪失されても困るよ!
本記事では,民法137条の,期限の利益の喪失の概要と,期限の利益が喪失するパターンの共通原理を解説しています。
本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。
- 期限の利益が強制的に喪失する3パターンを理解できる
- 期限の利益が強制的に喪失するパターンに共通する原理を知ることができる
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち
読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:期限の利益を強制的に消滅させることで債権者を保護する
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
民法137条 【期限の利益の喪失】
期限の利益とは,債務者が負う義務の履行を先延ばしにできる権利のことです。
民法137条は,債務者が持つ,期限の利益が強制的に喪失させられるパターンを規定した条文です。
期限の利益を強制的に喪失させられるということは,つまり,義務の履行を先延ばしができなくなり,即座に義務を履行しなければいけないということになります。
期限の利益も立派な権利です。
それを所有するのは債務者であり,法律のチカラ(すなわち国家権力)で強制的に所有権者たる債務者から期限の利益を取り上げるには,それ相応の理由が必要になります。
民法137条に規定されている以下の3つの事象が,債務者から強制的に期限の利益を取り上げる正当な理由であると,民法は考えています。
- ①:債務者が破産した
- ②:債務者が担保の価値を低下させた
- ③:債務者が約束した担保を供しない
以上の①~③は,いずれも,期限の利益を認めてくれている友好的な債権者を危険な立場に陥れるものです。
協力的な債権者を犠牲にしてまで期限の利益を存続させるべきではないとして,民法137条が強制的に期限の利益を債務者から取り上げます。
解説:債権者が危険に晒されたときの救済的条文
重要なことのほとんどは,上記の結論フェーズにて記載してしまったので,解説フェーズでは民法137条各号に定められたケースを確認していきたいと思います。
民法137条1号:債務者の破産
債務者が破産した場合,金銭的に窮地に陥っていることになります。
期限の利益によって,義務を先延ばしにしてもらっている債務者が金銭的に緊急事態に陥っているということは,履行期を迎えても義務の履行が困難である可能性がかなり高いことを意味します。
したがって,期限の利益を強制的に喪失させ,債権者が義務の履行の請求をすぐにでも行えるようにし,債務者の残存財産から返済を確保できるようにすべきです。
よって,民法は債務者が破産手続を開始した時点で,期限の利益を喪失させます。
民法137条2号:債務者が担保の価値を低下させた
担保とは,義務の履行が確保できなくなった際の,債権者の債権回収のよりどころとなるものです。
担保を確保することで,債権者が安心して義務の履行を先延ばしにしてくれている側面があります。
その担保を“債務者が”紛失(滅失)したり,損傷したり,減少させたりしたとき,それでも期限の利益が継続してしまうと,担保価値が低下して回収不可のリスクが上昇しているのに,期限到来まで債権者は義務の履行請求が出来ないことになります。
基本的に期限の利益は債務者のために存在しており,あくまでも債権者の協力あってのものです。
債権者の協力の下で,債務者は期限の利益を認めてもらっているのに,その債務者が担保価値を低下させるような不義理をはたらく場合にまで期限の利益を継続する必要はありません。
よって,民法は“債務者が”担保価値を低下させた場合,期限の利益を強制的に喪失させます。
ちなみに,民法137条2号には『債務者が担保を滅失~・・・とき。』とあるように,債務者以外が担保価値を低下させたときには期限の利益は喪失しません。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
民法137条 【期限の利益の喪失】
たとえば,担保として抵当権を設定した不動産に,第三者が運転する大型トラックが自己で突っ込んできて損壊したような場合は,債務者が担保価値を低下させたわけではないので期限の利益は継続します。
民法137条3号:債務者が約束した担保を供しない
担保を供する約束をしたのに,債務者が担保を供する約束を守らない場合にも,期限の利益は喪失します。
義務を履行しない者に,権利は主張できない,というわけです。
不動産に抵当権を設定して担保に供するという契約をしているにも関わらず,抵当権設定登記をしない・協力しないような場合が,民法137条3号に該当します。
期限の利益の喪失するパターン=債権者を危険にさらした
ここまで見てきたとおり,債務者が期限の利益を強制的に喪失するのは以下の3パターンです。
- ①:債務者が破産した
- ②:債務者が担保の価値を低下させた
- ③:債務者が約束した担保を供しない
これらに共通するのは,
債権者を危険にさらした
です。
期限の利益はあくまでも債権者側の協力によって成り立っているため,その友好的態度を取ってくれている債権者を危険にさらした時点で,債務者は期限の利益を主張する権利を失うべき,と民法は考えているのです。
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。
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参考文献など
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