今回は民法101条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
1 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
3 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
民法 第101条【代理行為の瑕疵】
条文の性格
民法100条に続き,101条も代理を定めた99条のサポート的立ち位置です。
代理は,委託者・代理人・相手方の必ず少なくとも3者以上が登場するため,考慮しなければならないことが多い傾向があります。
前条100条は,代理行為時に顕名が欠けた場合を規定していました。
本条101条は,代理行為の意思表示に瑕疵があった場合や,善意・悪意・有過失により,代理行為の有効無効が影響を受ける場合のルールを規定しています。
条文の能力
能動代理が主観の影響を受ける(瑕疵ある意思表示である)場合は代理人を基準に考える(101条1項)
代理人が相手方にした意思表示に瑕疵が有ったことによって影響を受ける場合,すなわち心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫が有るが故に無効又は取消すことができる場合は代理人を基準に考えます。
たとえば,錯誤で取消しができるかどうかは代理人が錯誤に陥っていたかどうかで考えるわけです。
同様に,代理人が悪意又は有過失状態で意思表示をしたことで,当該意思表示が影響を受ける場合も,代理人を基準に考えます。
たとえば,本人Aから土地を購入する代理権を授与された代理人Bが,Cから「土地売るよ」と言われて代理購入した場合に,Cからの申出は冗談(心裡留保)だったとします。
この場合のCの申出について,本人Aは冗談だと知らなかったとしても,代理人Bが冗談であることについて悪意又は有過失ならば,当該土地売買は無効となります。
意思表示の効果の帰属先は確かに本人ですが,意思表示を実際にするのは代理人であって本人は意思表示には関与しないので,主観での影響(善意・悪意・有過失や錯誤に陥っていたなど)は代理人を基準にしようという設計です。
受働代理が主観の影響を受ける場合も代理人を基準に考える(101条2項)
101条1項が,代理人が相手方にした意思表示(能動代理)の話だったのに対し,同条2項は相手方が代理人にした意思表示(受働代理)の話をしています。
101条2項も,受働代理の時も代理人を基準に判断する,と定めています。
基本的な考え方は同条1項の場合と同じです。(実際に意思表示を受けるのは代理人なので代理人基準で考えましょうという設計)
本人が悪意又は有過失なら代理人が善意でも,悪意扱い(101条3項)
民法は基本的に,とある事情について善意である場合に,保護されるパターンが多いです。
そのため,民法上で利害が衝突した際は,善意であると主張ができる側が有利になりやすいです。
この前提を頭に入れた場合,本人が悪意であるときに,善意の代理人に特定の法律行為をすることを委託して代理行為をさせた場合,善意を主張できるかが問題となります。
この問題に対して,上記の場合には,101条3項は本人の悪意と有過失も考慮することを定めています。
バッキバキにかみ砕いて書くと,本人がとある事情について悪意のときに,当該事情について善意の代理人に代理行為をさせた場合は,悪意として扱うということです。
このような設計になっている理由ですが,もし仮に本人が悪意のときに,善意の代理人を立てて代理行為をさせることで善意としての立場になれるとしてしまうと,本人が悪意になってしまったときには善意の代理人を立てることで,悪意の立場から常に意図的に逃れることができてしまうからです。
コメント
ちなみに,本人が善意で代理人が悪意の場合は?と思った方のために念のために記載すると,この場合は101条1項によって,代理人基準で判断されて悪意の立場として扱われます。
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。