第3節 代理

民法106条:復代理人の権限をわかりやすく解説【復代理人は本人の代理人】

2021年12月3日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
国際結婚/在留VISA/永住者/定住者/帰化は,是非お気軽にウィステリア国際行政書士事務所までご連絡ください。

事務所HPはこちら

初学者&独学&4ヶ月&一発合格(202点)で行政書士試験に合格しました。
読者さまからのコメントにあった『本当の意味での初学者にとっての解説書』を完成させるべく,本サイトを運営中。

今回は民法106条を3分でわかりやすく解説します。

※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
太文字は,解説中で大切なポイントです

1 復代理人は,その権限内の行為について,本人を代表する

2 復代理人は,本人及び第三者に対して,その権限の範囲内において,代理人と同一の権利を有し,義務を負う。

民法 第106条【復代理人の権限等】

条文の性格

106条は,復代理人の権限の範囲と,持てる権利及び負う義務の範囲を定めています。

復代理人は原代理人では無いですし,本人でも無い立場の人間です。

それでいて復代理人として原代理人から任命され復代理の権限も授与されるのに本人の代理人たる立場というかなり特殊な立ち位置なのが復代理人です。

その立場の特殊性たる所以によって,復代理人は何が出来て(権限の範囲),誰に対して何を要求し,又は要求される(権利と義務の範囲)のか,その明確な線引きをしておかないと後々揉めるので,106条が明文化の仕事を引き受けています。

読者の方が学生さんならサークルで,社会人の方なら会社で,先輩や上司の指示が曖昧なせいで自分のタスクや仕事じゃないと思ってたのにやってないと言われ,「え?!これって自分がやるものだったの?!」って思った経験が一度はあるのではないでしょうか?

106条は,そんな「頼んだじゃないか!」「聞いてない!」という不毛な争いを避けるために用意された条文です。

 

条文の能力

前提:復代理人で勘違いしやすい点のまとめ

復代理人は原代理人によって選任される

原任意代理人は本人から選任されます。

原法定代理人は法律の要件を満たすことで当然に選任されます。

そして復代理人は,原代理人によって選任されます

本人から復代理人が選任されるのではありません! 非常に勘違いされるので気をつけてください!

 

復代理人の復代理権は原代理人から与えられる

※「→」を左から右の者へ代理権授与を表すとします。

代理権の授与の流れを整理します。

原代理人に対する権限の権授与は,本人→原代理人です。

一方で,復代理人に対する権限の授与は,本人→原代理人→復代理人という関係になります。

繰り返しになりますが,たまに本人→復代理人だと勘違いしている人がいるので注意してください。

 

次に,授与される権限の広さについてもここで整理しておきます。

本人は自分については原則何でもできる権限を持つのは当然ですよね。 その中のごく一部の権限を原代理人に委託しますので,権限範囲は①本人>原代理人という関係になります。

そして,原代理人が復代理人を選任及び復代理人へ権限を分け与えるのですが,当然原代理人は原代理人が持っている代理権以上を復代理人に分け与えることはできないため,ここでの権限範囲は②原代理人≧復代理人という関係となります。

①と②より,③本人>原代理人≧復代理人という権限範囲の関係になることは確認しておきましょう。

 

106条1項: 復代理人は,代理人の代理人ではなく,本人の代理人

選任も,権限授与も原代理人がするのなら,復代理人は原代理人の代理人か!というと,それは違います。

選任も,権限授与も原代理人がするけども,復代理人は本人の代理人です。

このことは106条1項に明記されています。

復代理人は,その権限内の行為について,本人を代表する。

民法 第106条1項【復代理人の権限等】

代表は代理に読み替えてもらってOKです。

106条1項は,条文に書かれていること以上の解説はありません。

 

106条2項:復代理人の権利と義務は,権限範囲に従う

さて,本人・原代理人・復代理人の持つ権限範囲は③本人>原代理人≧復代理人の関係式が成り立つのでしたね。

③の権限範囲のうち,本人はひとまず無視して,原代理人と復代理人の権限範囲が④ 原代理人>復代理人だった場合を考えてみます。

たとえば,

原代理人はPS, PS2, PS3, PS4, PS5を本人の代わりに買って来る代理権を持っているとします。

一方で,復代理人はPS, PS2, PS3, PS4を本人の代わりに買って来る代理権を持っているとします。

この時,PS5が品薄でどうしても見つからなかった時,原代理人はPS5を代理購入する義務を負いますが,復代理人は同義務を負いません。

復代理人はPS5については購入代理権を持っていないので,PS5について責任を追及されても困るからです。

つまり106条2項は,復代理人は与えられた権限の範囲に合わせた分だけの義務を負いますよ,という至極当然のことを言っているだけなのです。

 

コメント

前述のPS案件のとおりに原代理人と復代理人が権限を持っているとします。

もしも,復代理人が権限外のPS5を買って来てしまった場合は,本人は原代理人にPS5の購入代理権を与えているのだから有権代理でしょうか?

実は,無権代理になります

たしかに本人→原代理人でPS5の購入代理権を与えていますが,原代理人→復代理人ではPS5の購入代理権を与えていないので,権限外のことをしたとして,無権代理扱いとなります。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

※代理の基礎となる99条は,こちらで解説しています。

※前条の解説はこちらです。

※次条の解説はこちらです。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
国際結婚/在留VISA/永住者/定住者/帰化は,是非お気軽にウィステリア国際行政書士事務所までご連絡ください。

事務所HPはこちら

初学者&独学&4ヶ月&一発合格(202点)で行政書士試験に合格しました。
読者さまからのコメントにあった『本当の意味での初学者にとっての解説書』を完成させるべく,本サイトを運営中。

-第3節 代理
-,