民法102条のただし書きの事例は,テキストを見ると『未成年者の親権者が被保佐人である』と書かれています。
なんで保佐制度で書かれてるの? 後見制度じゃアカンの?
本記事は,以上のような疑問について解説しています。
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち
読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:法定代理人が後見開始の審判を受けると民法111条1項2号により代理が終了する
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
民法102条 【代理人の行為能力】
まず,成年被後見人は,事理弁識能力を“欠く”常況であるため,事理弁識能力はゼロです。
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
民法7条 【後見開始の審判】
したがって,法定代理・委任代理のどちらでも,後見開始の審判を受けた場合は代理をさせるべきではないため,民法111条1項2号によって代理が終了します。
1 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人の死亡
二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。2 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。
民法111条 【代理権の消滅事由】
よって,民法111条1項2号により代理権が強制消滅する成年被後見人の場合(後見制度の場合)は,民法102条ただし書きの『制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人』という状況にならないのです。
一方で,被保佐人(又は被補助人)の事理弁識能力は,”不十分”ではありますがゼロではありません。
そのため,民法は,被保佐人及び被補助人も,法定代理人になれる制度設計を採用しています。(民法111条1項2号の反対解釈)
以上から,民法102条ただし書きの『制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人』の具体例として,保佐制度を用いた『未成年者の親権者が被保佐人』という事例が,テキスト上で良く用いられているのです。
※参照した民法102条・7条・111条については,以下を併せて読んでみてください
解説:事理弁識能力を“欠く”と“不十分”の大きな差
前述の『結論』フェーズでほとんど書きたいことを書いてしまったので,この話題の裏に存在する,事理弁識能力を“欠く”と“不十分”の大きな差について記載しておきます。
日本語の解釈なのですが,“欠く”ということは,全く存在しない際に用いられる表現です。
したがって,後見開始の審判をする基準である『事理弁識能力を“欠く”』とは,『事理弁識能力が全く無い,すなわちゼロ』を意味します。
一方の保佐開始・補助開始の審判をする基準は,事理弁識能力が“著しく不十分”か“不十分”です。
これは,ゼロを意味せず,少ないながらもゼロより大きいことを意味します。
ゼロかゼロじゃないか,これは民法のあらゆるところで制度の差を作っています。
たとえば,本記事で取り上げた,民法111条(代理権の消滅事由)では,代理人が後見開始の審判を受けた際は代理権が消滅します。
一方で,代理人が保佐開始・補助開始の審判を受けたら代理権が消滅するというような規定は設けられていません。
また,後見人には同意権がありませんが,これも成年被後見人は自身の法律行為の経済的影響の判断能力は“ゼロ”なので,同意を与えても意味が無いとして,後見人に同意権が認められていません。
対する,保佐・補助制度では,各保護者に同意権が認められています。
※後見人に同意権が無いことは,民法124条の追認の要件にも影響を与えています。 併せて読むと理解がより深まります!
参考文献など
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
行政書士合格を目指す方必見!
筆者が,行政書士試験に,4ヶ月の独学で・仕事をしながら・202点で一発合格したノウハウや勉強法,使用書籍を無料公開しています。
特にノウハウ集は,有料note級の1万2000文字以上の情報量で大変好評なので,是非読んでみてください!
法律系資格を本気で目指す方は予備校も視野に入れましょう!
法律系資格の合格の最短&最強ルートは誰かに教えてもらうです。
最近はオンライン授業サービスを提供している予備校が多くなってきています。
スキマ時間を有効活用できるオンライン授業が,低価格で受講可能な予備校を有効活用して,自分自身のスキル習得へ賢く投資していきましょう。
資料請求や相談面談はどこも無料なので,まずは気軽に資料請求から,合格に向けて一歩踏み出しましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました!