今回は民法122条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
取り消すことができる行為は,第120条に規定する者が追認したときは,以後,取り消すことができない。
民法 第122条【取り消すことができる行為の追認】
条文の性格
取り消すことができる行為を,一度追認したなら,後から「やっぱり取り消す!」のような変更は許さない条文です。
これは,取り消される側の立場の者に配慮した規定です。
取り消されてしまう可能性がある相手方側からしたら,締結した契約などについては,確定的な有効を望んでいるはずです。(だって契約したんですから)
ところが,制限行為能力者・錯誤・詐欺・強迫に該当する事象がある場合,取消権により,いつ取り消されるかも分からない,という不安定な立場に相手方は立たされます。
追認は,不確定な法律行為を確定的な状態にして,法律効果を発動させる(又は,させない)ためのものです。
結果的に,契約が有効になるか無効になるかは置いといても,追認又は追認拒絶がされることで,相手方の立場は確定し,安定します。
追認制度の目的は,この相手方の立場の確定にあります。
ところが,この追認を「やっぱりや〜めた」とか,その後に「やっぱりのやっぱり,追認する!」なんてことができると,相手方は追認権を持つ側,すなわち取消権を持つ側に振り回されてしまいます。
このように追認の撤回を許すことは,民法が追認制度を用意し,相手方の立場の早期安定を目指した趣旨が没却されてしまうことに繋がります。
したがって,追認権の行使は一度きりで,後からの変更を許さないとしたのが本条122条です。
条文の能力
追認以後は,取消し不可
条文に書かれているとおりで,取り消せる行為について,一度追認をすると取消権は消滅し,その後は取り消せなくなります。
これにより,取り消される可能性の有った行為は,確定的に有効になります。
追認権者である120条に規定する者とは誰なのか
実は122条は,これ単体ではちょっと不十分な,ちょっと珍しい条文です。
というのも,追認権を持つ者は誰なのか?と部分,この122条には『120条に規定する者』と書いてあります。
で,120条に規定されている者達を見ると,以下のとおりです。
制限行為能力が原因で取消権が存在する場合
- 制限行為能力者本人
- 制限行為能力者の代理人
- 承継人
- 同意権者
錯誤・詐欺・強迫が原因で取消権が存在する場合
- 瑕疵ある意思表示をした者本人
- 瑕疵ある意思表示をした者の代理人
- 承継人
「え? 制限行為能力者本人も追認できるの?」と思った方もいるかもしれません。
結論から言うと,被成年後見人以外の制限行為能力者は同意を得て追認することが出来ます。
すなわち,未成年者・被保佐人・被補助人は,法定代理人・保佐人・補助人の各対応する者からの同意を得て,追認することが可能です。
そんなこと書いてないやんけ!って気持ちわかります。
実は,このことは120条・122条・124条を合わせて読むことで導かれるのです。
詳しくは124条の記事を確認してください。
コメント
条文には色んな種類が有って面白いですが,この122条は,完全に120条や124条と相互補完して合っている条文です。
ある条文が,他の条文の条項号を指定して参照することを準用と言いますが,準用をしていなくても,互いに支え合う条文というのも面白いですね。
解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!
※前条の解説はこちらです。
※次条の解説はこちらです。