本記事は,無権代理発生時に,無権代理人の相手方が出来ることについて,図解を用いて解説しています。
※赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:無権代理の相手方が出来ることは4つ
無権代理の相手方が出来ることは以下の4つです。
- ①催告
- ②取消
- ③無権代理人の責任追求
- ④表見代理の主張
いつでも①〜④の全てが出来るわけではなく、相手方の善意・悪意で変わってきます。
取りまとめた表
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解説
今回は,無権代理が発生した際の,『相手方』が出来ることについてのとりまとめです。
本人ができること,無権代理人が負う責任とは違いますので,混乱しないようにお気をつけください。
無権代理については,以下の記事もよければ併せてお読みください。 本記事の理解の助けにもなるはずです。
まず,無権代理が発生した際に,相手方ができることを,図で全体を見渡してみましょう。
無権代理時に相手方ができることは,①催告・②取消・③無権代人の責任追及・④表見代理の主張が全てです。
無権代理の本人,無権代理人や相手方との間で,誰を保護すべきか状況に応じて判断すべきです。
したがって,①~④のそれぞれについて,相手方が善意であったか,悪意であったかで実行可能かどうかが細かく定められています。
以下,各条文に沿って,見ていきましょう。 ただし,条文のリライトは,本記事の趣旨に関係ある部分のみを抽出します。
①催告:114条
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
↓
前条無権代理の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。↓
無権代理の場合において、相手方は、本人に対し、催告をすることができる。
民法114条
114条は,相手方の善意・悪意について言及していません。 したがって,無権代理の相手方は,いつでも催告することができます。
②取消:115条
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
↓
代理権を有しない者がした無権代理契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が悪意だった知っていたときは、この限りでない。↓
無権代理契約は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において相手方が悪意だったときは、この限りでない。
民法115条
したがって,無権代理の相手方は,悪意以外の時は取消権を有します。
③無権代理人の責任追及:117条
1 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。
↓
1
他人の代理人として契約をした者無権代理人は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一
他人の代理人として契約をした者無権代理人が代理権を有しないことを相手方が知っていた悪意のとき。二
他人の代理人として契約をした者無権代理人が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたに悪意だったときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。↓
1 無権代理人は、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 無権代理人が代理権を有しないことを相手方が悪意のとき。
二 無権代理人が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことに悪意だったときは、この限りでない。
民法117条
すなわち,原則として117条1項により,相手方は無権代理人に対して,履行又は損害賠償の責任(無権代理人の責任)を追及することができます。
しかし,117条2項1号により,相手方が悪意の時は責任追及できません。
さらに,117条2項2号により,相手方が善意有過失のときは,無権代理人の責任を追及することはできません。
ただし,相手方が善意有過失でも,無権代理人が無権代理について悪意ならば,無権代理人の責任を追及できます。
よって,整理すると,以下のとおりです。
図の△:相手方が善意有過失でも,無権代理人が悪意ならば,無権代理人の責任を追及OK
図の〇:相手方が善意無過失ならば,無権代理人の責任を追及OK
④表見代理の主張:109・110・112条
1 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
↓
1
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は無権代理人は、代理権授与表示の表見代理の場合は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかった悪意又は有過失のときは、この限りでない。2
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。(本記事では略)↓
1 無権代理人は、代理権授与表示の表見代理の場合は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、悪意又は有過失のときは、この限りでない。
2(本記事では略)
民法109条
前条第1項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
↓
前条第1項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした権限外の表見代理の場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由がある相手方は善意無過失のときについて準用する無権代理人の責任を追及することができる。↓
権限外の表見代理の場合において、相手方は善意無過失のとき無権代理人の責任を追及することができる。
民法110条
1 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
↓
1
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について代理権消滅後の表見代理の場合、代理権の消滅の事実を知らなかったについて善意の第三者はに対してその責任を追及することができる負う。ただし、第三者が有過失の過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。2
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。(本記事では略)↓
1 代理権消滅後の表見代理の場合、代理権の消滅の事実について善意の第三者はその責任を追及することができる。ただし、第三者が有過失のときは、この限りでない。
2(本記事では略)
民法112条
したがって,109・110・112条のいずれも,相手方が表見代理を主張できるのは,相手方が善意無過失のときです。
以上の情報を全て整理すると,以下の表が出来上がります。
参考文献
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
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