婚姻と離婚
婚姻とは、非常に強い効力で夫婦のそれぞれの権利を保護する契約(とほぼ同等のもの)です。
※以下、わかりやすくするため婚姻=契約として表現します。
婚姻の効果として、男女が婚姻という契約をして婚姻届という契約書を国に提出することで、税・保険料免除や様々な行政支援を受けることができるわけです。
その一方で、夫婦相互に協力をする義務が課せられます。 一緒に生活しなければいけないとか、互いに協力し合わなければならない、不貞行為をしてはいけない、などです。
この婚姻という契約を解除することを世間一般に離婚と言います。
一般的な契約のイメージと同じで、契約である以上は結婚(婚姻)という契約を解除するには、夫婦双方が離婚することに同意する必要があります。
原則、どちらか一方が離婚したいだけでは婚姻の契約を切ることはできません。
双方の同意のもとで結んだ契約、それも人生に非常に大きな影響を与える契約ですので、どちらか片方の都合で解除は通らない、という訳です。
また、一応ですが双方の同意が無くても裁判所が「離婚を認める」と判決が出した場合は例外として離婚が可能です。
同意・裁判所の判決のいずれにしても、婚姻は片方の意思だけで簡単で解消や破棄することはできないわけです。
調停前置主義
離婚に関して、日本は調停前置主義を採用しています。
調停前置主義とは字のごとく、裁判の前に調停を必ず開催しないといけないというルールのことです。 さっさと離婚したいから、いきなり離婚裁判を申請して裁判を行うことは許されないということです。
必ず離婚をするかしないか、(協議→)調停→裁判という段階を経て決める必要があります。
協議離婚
実際は、多かれ少なかれいきなり調停の開催をする前に、本人同士で離婚するかしないか相談すると思います。 ここで相互に同意して離婚することを協議離婚と言います。
弁護士に依頼した場合も、まずは調停に行く前に交渉を行い、協議離婚を目指します。 調停を行うにも時間もお金もかかりますので...。
この協議の段階で、養育費と親権の取り決めがまとまり、双方が離婚に同意し、離婚届を提出すれば離婚成立です。
調停離婚
協議離婚で決着が着かない場合は調停を開催することで解決を目指します。
調停とは、調停員と呼ばれる男女2名に第三者として双方の話を聞いてもらい、妥協案や解決案を一緒に探ってもらうサポートを受けて、紛争解決を目指す集会のことです。
どちらか片方が明らかに悪い場合は調停員が相手方を説得をしてくれる場合もあります。
調停は申請することで開催が決定され、毎月指定された日に紛争当事者の双方が調停が開催される家庭裁判所に足を運び、紛争解決に向けて話し合いをします。
話し合いと書いてますが、紛争当事者(この場合は離婚を争っている夫婦)は別の部屋に入室し、調停員が交互に部屋を移動して相互の話を聞くので、基本的にお互いに顔を合わせることはありません。
(気を抜くとロビーとかで鉢合わせとかする場合もありますが...)
調停員は世間一般的に安定的な生活基盤を築き、人生経験豊富な方がランダムに選ばれて担当してくれます。
そのため比較的高齢の方が多いようです。
調停のポイントですが、調停員が第三者として話を聞いてくれますが、調停員の方も人間ですので、その心証はとても大切です。
調停員への態度や言葉遣い、紛争解決に向けての姿勢など、相手が調停員だからより丁寧にしろとは言いませんが、常識的に節度ある紳士的・淑女的な接し方をすべきです。
話が少し調停員に逸れましたが、調停の場で、養育費と親権の取り決めがまとまり、双方が離婚に同意した場合は、家庭裁判所の裁判官が証人となり離婚成立です。
裁判離婚
調停で決着が着かなかった場合は裁判にて、離婚の成立の可否を裁判所に判断してもらうことができます。
ここで離婚成立を認めてもらえたら裁判所の司法の力を持って強制的に婚姻を解消して離婚することができます。
裁判までもつれ込んでいる場合は完全に意見が決裂している場合が大半です。 離婚する・しないどちらの結果でも夫婦どちらかに精神的負担が大きく、心情や感情に関わらず法律の力で離婚させることになるので裁判所は非常に慎重な傾向が多いようです。
なぜ調停前置主義なのか?
大きく、理由は以下の2つと言われています。
- 家庭内かつ本人たちの身分(親族関係など)に関わる問題なので、いきなり裁判所に訴訟として持ち込むのは好ましくない
- 一度は婚姻しており、親密な人間・感情関係が構築されているので、可能な限り強制力を持つ裁判所の判決での解決よりも、本人たちの話し合いのうえでの解決が望ましい