今回は民法条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
1 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
民法 第94条【虚偽表示】
条文の性格
民法は原則として、意思を伴わない意思表示は無効というルールを定めています。
この原則に民法94条も従っており、本人と相手方との間でした嘘の意思表示は、その効力の通用を拒否すなわち無効と規定しています。
相手方と協力して、嘘の意思表示するなんて意味あるの?と思うかもしれません。
通謀虚偽表示が行われる代表例は、不動産を友人や近親者に売ったことにして、財産を差し押さえられることを防ぐ様な場面です。
虚偽表示により、外から見たら嘘の売買行為によって、不動産の所有権が買主に移っています。 したがって、本人の物では無くなった不動産を差し押さえることはできなくなります。
しかしながら、この様な嘘の意思表示を悪用するようなかたちで財産隠しをすることが認められて良いのでしょうか?
当然民法は良いとは考えておらず、94条1項にて、嘘の意思表示の悪用を防ぐためのルール=相手と協力して嘘の意思表示をした場合は、その意思表示は無効というルールを設けたのです。
この無効化により、前述の嘘の不動産売買行為は無効となり、不動産の所有権は本人に存在するため、差し押さえから逃れられないことになります。
条文の能力
相手方と通じ合って(=通謀して)した意思表示は無効とするのが民法94条1項の能力です。
民法94条1項が、無効化の効力を発揮するための要件は以下の通りです。
- 要件①:本人と相手方とで虚偽の意思表示について通謀があること
- 要件②:外観として虚偽の意思表示が存在すること
以上の要件①②両方が満たされている時、民法94条1項の無効化が発動します。
コメント
実は、通謀虚偽表示の94条1項は非常にシンプルで解説は以上です。
ちなみに通謀虚偽表示は犯罪行為に該当する可能性があるので、皆さんも行うのはやめておきましょう。
94条のうち、多くのポイントを抱えているのは実は94条2項です。
民法94条2項の類推適用、登記に認められる公示力と、登記に認められない公信力など、私たちの不動産に関連する社会経済に関する分野で民法94条2項は重要な役割を果たしているのです。
そのため94条を1項と2項とでページを分けて、今回は同条1項のみを解説しました。