今回は民法88条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
1 物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
2 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。
民法 第88条【天然果実及び法定果実】
条文の性格
みなさんは果物は好きですか?
食後のデザートとして不動の地位を築いているデザート界の王様みたいな存在ですよね。
そんな果物を、育成する過程に着目して、生成された実を指して、特に「果実(かじつ)」なんて一般的に呼んだりしますが、実は法律界にも「果実」という法律用語があります。
法律用語の果実は、一般的な果実よりも広い意味で用いられています。
法律用語における果実とは、物そのもの用途・性質・使用によって新しく創造される物のことをいいます。
一般的な果実の意味も踏襲しつつ、意味がわかりやすく拡張されていますので、本ページの内容はそんなに難しくないと思います。
「樹に果物の実がなる」のイメージを持って読んでいきましょう。
条文の能力
法律用語の果実とは
法律用語における「果実」とは、以下の2つのパターンで生成された新しい物のことを指します。
①物の本来の使用用途や機能で産まれる物(88条1項)
②物を他人に使用させることで得る、その対価・使用料のこと(88条2項)
①を天然果実、②を法定果実と言います。
それぞれ確認しましょう。
天然果実
天然果実の「天然」は、「私って天然なんだよねー」とか「天然ボケ」などで使われる「天然」の意味に近いです。
いわゆる、「自然発生的な」というニュアンスです。
つまり天然果実とは、その物の本来の用途から自然発生で産出される新しい物のことです。
例は、樹になったミカン、飼っているペットが子どもを産んだ、などの場合におけるミカン・子どもが天然果実です。
法定果実
法定果実の「法定」とは、「法律で特別に認めた」という意味です。
つまり民法が「天然果実とは言えないけど、特別にこれも果実として認めるよ」として認められた果実のことです。
では、民法がどのような物を法定果実として認めたかというと、「物を他人に使用させることで貰える対価・使用料」を法定果実として認めました。
例えば、お金を他人に貸した時に貰える利子や利息です。
果実という概念の必要性
わざわざ88条で果実という概念を定義しているのにももちろん理由があります。
果実というのは、今ある物から新しい物が生産されるわけですから、今ある物=果実を生み出した物とは全く別の物です。
果実を生み出した物と果実は全く別なのですから、この新しく生産された物は一体誰のものになるのか?を民法がしっかりとルールを整備しないと、所有権絡みでトラブルに発展する可能性があります。
そのため、きちんと果実という概念を定義し、「果実を生み出した物」と「果実」と分けているわけです。
その役割を、この88条が担っているのですね。
コメント
個人的に、法律用語の果実は神懸かりなネーミングセンスだと思います。
わかりにくい、イメージしにくい、直感的に理解しにくい法律用語が多いですが、この生産された新しい物を「果実」とした先人達のセンスはかなり凄いと感じています。
こんなわかりやすい説明やイメージしやすい例の提示を本ブログでもしていけるように精進したいと思います!