今回は民法条87を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
1 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
2 従物は、主物の処分に従う。
民法 第87条【主物と従物】
条文の性格
この87条も、ひとつ前の条文86条と同じで、物(ブツ)の分類を担当する役割を担います。
ひとつ前の86条は、土地か土地の定着物であるなら不動産、そうでない物は動産へと機械的にクラス分けする条文でした。
不動産と動産は互いに平等・対等な力関係であって、どっちが上とか下とかはありません。
この87条も物を2つのクラス(主物と従物)に分類する点は同じです。
ただ、不動産vs動産の対等な関係とは違い、主物vs従物は主物>従物という上下関係があります。
つまり、上下構造を持つ分類を行うのが87条です。
なので87条はクラス分けと言うよりも、主物というリーダーとそのサブの従物での、チーム分けに近いことをしています。
軍隊編成を担当している参謀役ってイメージが近い条文ですね。
条文の能力
物には主物と従物の2種類存在する
87条1項が言っているように、物は主物と従物に分けられます。
(実はよく読むと、87条1項は従物の説明しかしていません。 主物については、行間を読んで理解してねって書き方になっていて面白いですね。)
従物
ここまでこのブログは「主物と従物」という語順で記載してきましたが、従物の性質に着目した後に、主物を説明した方が理解しやすいので、従物を先に説明します。
従物とは、主物に附属して、主物の役割・機能・価値を助けるものです。
附属というのは定着していたり、くっついたりしているというニュアンスです。
従物の例は、以下のような物です。
建物(主物)に対するエアコン(従物)
車体(主物)に対するタイヤ(従物)
主物
主物は、従物がくっつく対象となるものです。
従物は独立している必要がある
いきなり「従物は独立している必要がある!」と言われても意味不明かと思います。
従物が主物にくっついて役に立つには、きちんと従物が物として存在していないといけませんよ、ということです。
それでもどういうこっちゃねん!って方のために、従物っぽいのに独立してないので従物では無い、例をひとつ挙げます。
皆さんはコーヒーは飲まれますか?
自分はコーヒーを淹れた際はいつもコーヒーフレッシュを入れるのですが、この時、コーヒーフレッシュは独立した動産という物です。
では、このコーヒーフレッシュをコーヒーに入れた場合、コーヒーを主物とするコーヒーフレッシュが従物の関係になるかというと、なりません。
コーヒーフレッシュはコーヒーに溶けて混合してしまうことで、独立性が失われるため、従物ではありません。
つまり、従わせる主物と従う従物の2つの物がそれぞれちゃんと存在してい無いと主従関係も無いですよねってことです。
コーヒーとコーヒーフレッシュの例では、パッと見は主従関係ありそうですが、混ざり合ってひとつのものになってしまったので主従関係は成り立たないわけです。
従物は主物の運命に従う
従物は主物の処分に従うことになります。(87条2項)
ここでいう「処分」とは、一般的な「処分」の意味する捨てるとか廃棄するという意味とは少し違います。
条文や法律での「処分」は、捨てる・廃棄する以外にも売却する・譲渡する・贈与する・貸すなどを含みます。
より正確に言うと、条文や法律での「処分」とは、権利や義務を発生させるすべての法律行為のことを言います。
つまり、87条2項は主物を(条文や法律での意味で)処分する時は、原則は従物も主物と同じ処分をするという運命共同体とするよというルールを定めています。
コメント
権利の王様である物権は、物に関する権利のことですが、まずはその「物」とは何かを民法85条〜87条で見てきました。
物の定義に関してはこれで終わりです。
物権の学習をしているとついつい権利である所有権とか抵当権に意識が行きがちですが、行政書士試験ではちょくちょく主物・従物についての知識を聞いて来たりするので、忘れたらここで振り返っておきましょう。