本記事は,以上の疑問について,わかりやすく解説しています。
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち
読者さんへの前置き
※赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
【結論】占有離脱が,真の権利者の意思によるものかどうかが基準
民法193条
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
なぜ回復請求ができるのは盗品又は遺失物のときに限るのか?の理由は,真の所有者と即時取得者の,どちらを保護すべきかの天秤にかけた際に,『真の所有者が自分の意思で物を手放したか』=『真の所有権が一度でも,この物を手放してもいいや』と判断したかどうかを基準としているため。
【盗品又は遺失物の場合】
真の権利者が,自分の意思で占有を失ったわけではない
⇔ 真意は『その物の占有を継続したかった』
⇔ WIN:真の権利者 > LOSE:即時取得者
【盗品又は遺失物以外の場合(通常取引・錯誤・詐欺・強迫etc)】
真の権利者が,少なくとも一度は,自分の意思で占有を失った事実が存在する
⇔ 真意は『その物の占有を失ったとしてもいいや』
⇔ 厳しい即時取得の要件を達成した者を厚く保護すべき
⇔ LOSE:真の権利者 < WIN:即時取得者
【解説】少なくとも一度でも自分の意思で占有を失っているか,という観点がカギ
即時取得は,その効果の裏返しとして,”真の所有者が所有権を失う”という側面,すなわち真の所有者を犠牲にする側面があります。
したがって,即時取得の成立には,非常に厳しい要件が課されています。
その厳しい要件をクリアした即時取得者は,要件達成の見返りとして,原則,物の所有権を有効に手に入れることができます。
ここまでが192条の話です。
一方で,民法193条は,上記の例外を定めています。 ここでいう例外とは,即時取得の要件を達成したとしても,有効に取得した所有権を失うパターンのことです。
その例外,すなわち即時取得者が所有権を失うパターンは,以下の3つが満たされた場合です。
- 即時取得が有効に成立していること
- 即時取得で手に入れた占有物が盗品又は遺失物であること
- 2年以内に,被害者又は遺失者が回復の請求をしたこと
一応,条文も載せておきます。
民法193条
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
ここで多くの方が疑問に思うのは,なぜ回復請求ができるのは盗品又は遺失物のときに限るのか?だと思います。
それは,盗品又は遺失物は,真の権利者の意思に基づいて占有を喪失していないためです。
『真の権利者の意思に基づいて占有を喪失していない』とは,言い換えると『真の権利者の真意は,その物の所有を継続していたかった可能性が高い』ということです。
つまり,本当は手放したくなかった真の権利者と,即時取得者を比較した際に,どちらを保護するか比較し,真の権利者を保護すると民法が判断しているわけです。
対する,盗品又は遺失物に該当しない場合はどうでしょうか。
盗品又は遺失物に該当しないとは,通常の取引や錯誤・詐欺・強迫などの事情により,大なり小なり自分の意思で占有を手放したケースです。
錯誤に陥っていたり,詐欺をされた事情があるにしても,『少なくとも一度は,自分自身で占有を失う決断をしている』ことになります。(意思を完全に喪失するほどの強迫の場合は微妙なところですが…)
真の権利者が,一度は占有を失ってもよいと決断している以上,その物を欲し,かつ厳しい即時取得の要件を達成した即時取得者の両者を比較した場合,即時取得者を保護すべき,と言えます。
したがって,上記をまとめると,以下のとおりとなります。
【盗品又は遺失物の場合】
真の権利者が,自分の意思で占有を失ったわけではない
⇔ 真意は『その物の占有を継続したかった』
⇔ WIN:真の権利者 > LOSE:即時取得者
【盗品又は遺失物以外の場合(通常取引・錯誤・詐欺・強迫etc)】
真の権利者が,少なくとも一度は,自分の意思で占有を失った事実が存在する
⇔ 真意は『その物の占有を失ったとしてもいいや』
⇔ 厳しい即時取得の要件を達成した者を厚く保護すべき
⇔ LOSE:真の権利者 < WIN:即時取得者
参考文献など
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
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