コラム

憲法:天皇の地位 -日本の象徴と国事行為-

2021年2月18日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
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日本国憲法では日本のことを決めるのは日本国民全員です。 これを、国民主権と言います。

しかしながら、(少し違いますが)日本には王様のようなポジションである天皇という存在がいます。

「王様」というのは「君主」と言ったり「国王」という言葉で言ったりします。 どの言い方でも権力を持っているようなイメージがありますね。

ところが、よくよく考えると日本には天皇という王様の様な存在がいますが、天皇が権力を使っているのを見た事ありますでしょうか?

何か新しい法律を作ったり、どこかの国と条約を結んだり、天皇が誰かを処刑したりしているのを見たことありませんよね。

王様らしく権力を行使しているというよりは、何か大きなイベントなどで挨拶などを述べられている天皇の姿くらいしか見たことがありません。

そもそも冒頭でも書いたとおり、日本国憲法は日本のことを決めるのは天皇ではなく、日本国民が決定するべきという国民主権と採用しています。

それでは天皇とは一体どのような存在なのでしょうか。

今回は大日本帝国憲法と日本国憲法のそれぞれにおける天皇に関して見てみましょう。

天皇とは

日本における天皇とは、古代から続く日本の君主(すなわち王様)です。

君主とは言うものの、ファンタジーとかで出てくる王冠をかぶった王様のイメージとは少し違います。

日本での天皇は、実質国のトップ的地位であることには変わらないのですが、国を支配するほどの権力は持っていないという少し珍しい存在です。

その時の時代で征夷大将軍や摂政・関白が事実上支配権を持っていて、天皇は政治的に立場を利用される側であったりもしました。

天皇は権力の総攬者(大日本帝国憲法時代)

大日本帝国憲法で日本が統治されていた時代の天皇は、権力の総攬者と憲法に定められました。

つまり「国の権力は全部、天皇が持っていますよ。」と憲法が定めているわけです。

私たちが「王様」と聞いてイメージする姿に一番近い状態かもしれません。

明治時代は世界中で戦争ブームでしたので、日本の最大の目的は戦争に勝ち続けて国を存続させることでした。

戦争に勝ち続けるためには、国民が戦争に対して理解をし、国に協力する姿勢が必要不可欠でした。

そこで明治政府は王権神授説に着目し、採用しました。 これにより、天皇に全ての権力を集中させました。

合わせて明治政府は「天皇は神様から選ばれた特別な存在であり、日本国民は戦争に勝つために国へ協力し、国を豊かにしなければいけない」という教育を日本国民に行いました。

この時に使われた「富国強兵」というスローガンは非常に有名なので憶えておきましょう。

世界中での戦争ブームという背景もあり、大日本帝国憲法の時代の天皇は「神様に等しい存在として、全ての権力の総攬者」でした。

立憲君主制

明治時代において、天皇(君主)がいる状態で大日本帝国憲法という憲法が公布されたため、日本は立憲君主制と呼ばれる体制になりました。

立憲制とは、国が憲法を持っている体制のことです。 国の決まりごとは憲法や法律で管理するぜ!っていう体制です。

良くも悪くも、国の状態は法律の良し悪しで決まる体制です。

君主制とは、国に君主(国王とか天皇とか独裁者)がいる状態のことです。 国の方向性は君主に任せる体制のことです。

君主制のメリットは、君主が最高の人格者だと国がとても良い状態になります。 一方デメリットは、君主が自分のことしか考えないカスだと国が滅びます。

立憲君主制とは上の2つを合体させて、国は憲法を持っているし、君主もいる体制のことです。

立憲君主制はメリットは、国が安定しやすいです。 君主が代表して国をコントロールしつつ、権力の暴走を憲法で抑え込めるためです。

一方でデメリットは、安定しやすいけど大規模な革命級の改革は起きにくいです。 何かを変えようとした時に憲法・法律だけでなく君主の理解も必要だからです。

天皇は日本国民の象徴(日本国憲法時代)

1945年に日本は戦争に敗れたことで大日本帝国憲法時代が終わりを迎えました。

この敗戦をきっかけにして、天皇という存在が大きく変わることとなります。

天皇人間宣言

戦争に負けた1945年の夏から約半年後の初めてのお正月の1946年1月1日に、日本中に向けてあるラジオが放送されました。

「天皇は神様では無く、人間である」

王権神授説によって神と同等の存在だった天皇はこのラジオ放送をきっかけに神様では無くなりました。

このラジオ放送を天皇人間宣言といいます。

ここで天皇が神様では無くなったことが、のちの天皇の立場につながっていきます。

天皇象徴制

敗戦後に新しい憲法として制定された日本国憲法では天皇は「日本国民の象徴」という立場となりました。

象徴とは、「ひとつのモノが、特定の意味やイメージを連想させること」です。

ハトというモノが「平和」というイメージを連想させたり、ドクロマークが「不吉・危険」というイメージを連想させたりなどです。

天皇は「日本国民」を日本を代表して、海外に向けてイメージを発信してくれる立場としたわけです。

しかし、この「象徴としてイメージを発信する」の扱いが非常に難しく今なお多くの議論を呼ぶこととなりました。

天皇の国事行為

2019年のYouTube全盛期の今、ネットリテラシーが無い人が下手にネットでプライベートを世界に発信してしまって大炎上することが世界的ブームになっていますね。

それはさておき、ある人が世界向けて発信をする行為は一歩間違えると人を傷つけたり、炎上したりとリスクが大きい行為です。

天皇は象徴として世界に向けて「日本」を発信してもらう立場であることは先ほどお伝えしました。 

天皇が発信した場合は、各国のニュースでも取り上げられる場合が多いので、日本の正式なコメントとして認識されることがほとんどです。

なので天皇が発信する時に政治的な発言や、賛否両論を呼ぶような発言が発生してしまうと、国際問題に発展する可能性があります。

そこで日本国憲法では国際問題などを起こさないようにいくつかのルールを設けました。

まず、天皇はどんな場合にも政治に参加できないこととしました。

最初から、天皇を政治に参加させないこと・天皇が政治に影響を与えない立場とすることで、「天皇の発言・行動に政治的意図はありませんよ」と保証するわけです。

政治に参加できないのですから、天皇は国民投票にも参加できないですし、国会議員にもなれません。

天皇から政治行為を無くし、天皇が行なえるのは「国事行為のみ」としました。

国事行為とは、形式的・儀式的な行為のことです。 偉大な業績を残した人に栄典を与えたりしたり、日本の新しい法律を公布したりなどです。

でも、誰に栄典を授けるのか、新しい法律の内容をどのようなものにするのか、この辺りを天皇が自由に決められると行政権や立法権の権力に当てはまるので政治的な行為になってしまいます。

そこで、国事行為ですら内閣が助言し承認しないと天皇は行えないという制限までかけることにしました。

つまり、日本国憲法における天皇は「政治に参加することはできず、日本を象徴する立場として、内閣がOKを出した国事行為のみを行なえる」というところまで権利・権力を制限されています。

まとめ

大日本国憲法のときの天皇は全ての権力の総攬者として、あらゆる権利・権力を持っていました。

一方で日本国憲法では全ての権利・権力は、国会・内閣・裁判所にゆずり渡し、日本の象徴として国事行為のみを行い、政治には全く参加できない立場となりました。

その時の時代によって天皇の立場は大きく変わることがわかりました。

2019年に新たな天皇が即位され令和の時代になりました。 改めて天皇の立場や役割を確認しておきたいですね。

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