第1節 占有権の取得

【代理占有=間接占有】民法181条:代理占有の概念をわかりやすく解説

2022年7月18日

伊藤かずま

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国際行政書士(第21190957号)
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ウリム

代理占有ってどんなものですか?

あと,間接占有とは違うものなのでしょうか?

本記事では,民法181条の,代理占有についてわかりやすく解説しています。

 

本記事を読むことで,以下を達成できるように執筆しています。

  • 代理占有の概念を理解できる
  • 代理占有と間接占有の違いを理解できる
  • 代理占有が認められている理由を知る
  • 代理占有と直接占有が両立すること・その理由を知る

 

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
参考:筆者を4ヶ月で合格に導いた超厳選の良書たち

 

読者さんへの前置き

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:代理人に占有させることでも占有権を取得できる

占有権は、代理人によって取得することができる

民法181条 【代理占有】

 

自分の代わりに代理人に占有させることを代理占有と言います。

民法181条により,占有権は,自分の代わりに物を所持してくれている・預かってくれている人に,物を所持させることでも取得することができます。

つまり,常に自分自身で物を所持(自己占有)する必要は無く,占有代理人に所持(代理占有)させることでも,占有権を取得・維持することができるということです。

 

代理占有が認められる理由は,代理占有では,いずれ物は本人のもとに戻るのだから,他人に渡したとしても,占有の効力は物に及ぶ(または,及ぼしてもよい)から,と考えられています。

 

また,自己占有・代理占有に似た言葉に『直接占有』・『間接占有』という言葉がありますが,以下の関係で同じものを意味します。

  • 自己占有 = 直接占有
  • 代理占有 = 間接占有

 

代理占有時でも,占有代理人が直接占有(民法180条)の要件を満たせば,占有代理人は直接占有として占有権を取得します。

 

解説:代理占有は,占有可能範囲を大きく広げてくれる

※物を代理人に占有させよう・させている人のことを,本記事では『本人』と表記いたします。

民法181条の『代理人』の意味

民法181条における『代理人』は,本人の代わりに物を所持してくれている・預かってくれている人という意味です。

代理制度における,代理権を与えた代理人とは違います。(民法99条)

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したがって,物を代わりに占有する代理権を授与するために,わざわざ委任契約を結ぶ必要はありません

「これ貸して」「いいよー!」というような賃貸借・使用貸借が発生すれば,借りる人は必然的に,“本人の代わりに物を所持してくれている・預かってくれている人”になるため,民法181条の『代理人』になります。

「これ預かって」「了解した!」というような寄託においても同様です。

代理制度(民法99条)の代理人と区別するために,民法181条における,本人の代わりに占有をする代理人を,『占有代理人』と言ったりします。

 

代理占有が認められる理由

代理人に所持させることでも,本人に占有権が認められる理由は何でしょうか?

 

占有権は,「これは俺が所持ししてるんだー!」という,物を所持している外観そのものを保護するものです。

代理人とはいえ,他人に所持をさせても本人に占有権を認めるという,占有権の効力を大きく拡大する条文は,何かしらの理由があって存在しているはずです。

 

よく言われる理由は,代理占有は,いずれ物は本人のもとに戻ることを前提としているのだから,他人に物を渡したとしても,占有の効力は物に及ぶ(または,及ぼしてもよい)からというものです。

 

代理占有というのは,あくまでも一時的に他人に物を所持させているだけ,という前提のもとで成り立ちます。

前述で少し触れた賃貸借・使用貸借・寄託は,どれも一時的に代理人に物を所持させているだけであり,時が来れば物は本人のもとに帰ります。

(一方で,贈与のような場合は,完全に所有権を他人に譲るものであり,物が自分のところへ返ってくることを前提としていません。 したがって,贈与した場合では,代理占有は成立せず,本人は代理占有権を有しません。)

いずれ自分のもとに物は返って来るのだから,他人が所持していても,その代理人経由の占有が妨害されたとき,本人が占有権の効力(占有の訴えなど)を使えて良いだろうと民法は考えているのです。

 

間接占有と直接占有は同時に成立する

最後に,本人と占有代理人との間で寄託契約を結び,物を占有代理人が所持している場合を考えてみましょう。

 

このとき,本人は占有代理人を通して代理占有により,間接占有権を有しています。(民法181条)

この理解はズバリ民法181条の内容であるので,大丈夫かと思います。

 

では,質問です。

このとき,物を所持している占有代理人は占有権を有しているでしょうか?

皆さんも考えてみてください。

 

ウリム

う~ん…。 あ!

占有代理人は,民法180条の占有権の取得要件「自己のためにする意思を持って,物を所持する」を満たしているから,占有権を持っている!

はい,この場合,占有代理人は直接占有としての要件を満たし,占有権を有しています

つまり,一つの物に対して,直接占有・代理占有が同時に成り立つということです。

代理占有と直接占有

 

ちなみに,この場合における占有代理人の“自己のためにする意思”はなにかというと,寄託物を消失などしたときに弁償しなければいけない法的不利益(消極的利益)を回避するための意思です。

ここは,民法180条の記事で詳しく解説していますので,『自己のためにする意思』の理解が不安な方は,ぜひ以下のリンクから併せて学習してみてください。

 

解説はここまでです。 読んで頂きありがとうございました!

 

※前条の解説はこちらです。

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※次条の解説はこちらです。

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参考文献など

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

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最後まで読んでくださりありがとうございました。

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