第1節 占有権の取得

民法187条:占有の二面性を”ヒカルの碁”を参考にわかりやすく解説

2022年6月14日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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占有の二面性』という用語を聞いたことがあります。 でも,多くのテキストでは簡潔な説明なので,どのようなものなのかよくわかりません。

本記事は,民法187条の“占有の二面性”について,わかりやすく解説しています。

 

記事の信頼性

本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。

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読者さんへの前置き

赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

 

結論:前主の占有・後主の占有の性質が同時に成立することを占有の二面性という

1 占有者の承継人は、その選択に従い自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる

2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継す

民法187条 【占有の承継】

(相続のような包括承継がイメージしやすいので,相続を例に解説します。)

※相続についてはこちらで解説していますので,併せて確認してください。

※包括承継(や特定承継)については,こちらで勉強してください。

相続をした場合,被相続人の立場をそっくりそのまま引き継ぎます。

(「そっくりそのまま引き継ぐ」には,“占有の仕方”も含まれます。 例えば“占有開始時に被相続人が対象物について他人の物だと悪意だった”という主観的瑕疵も,そっくりそのまま引き継ぐことになります。)

この被相続人から引き継いだ”被相続人の”占有を,占有①と考えてみます。

 

対して,相続人が,対象物を相続した場合に,新たに相続人が開始した占有を,占有②と観念することもできます。

 

以上の様に,相続という承継が発生し,相続人の占有が始まると,前主から引き継ぐ占有①と,自身で新たに開始する占有②が,両立することになります

これを占有の二面性といいます。

 

例えば,物が他人の物であるについて被相続人は悪意で占有をしていたが,相続人は物は被相続人の所有であったと善意無過失であった場合,上記の占有①と②は以下のような状態となります。

  • 占有①:悪意で所持を開始した占有
  • 占有②:善意無過失で所持を開始した占有

つまり,被相続人が占有しているという占有はひとつしかないのに,占有の状態においては,被相続人に依存するもの(占有①)と,相続人に依存するもの(占有②)のふたつが存在してしまうことになるです。

 

以上は,取得時効において,占有①が悪意スタート,占有②が善意スタートなので,取得時効が10年で完成するのか,20年で完成するのか,という問題に繋がります。

この問題を解決するために占有の二面性という概念が設けられているのです。

民法187条は,後主(被相続人)は,以下の2つの中から好きな方を選べるようにして解決を図っています。

  1. 後主(相続人)の占有②のみを主張する
  2. 前主(被相続人)と後主(相続人)の占有を合わせた占有①+②を主張する

 

そして,上記2.を選択した場合には,前主の占有①が持つ瑕疵も引き継がなければいけません

前主の占有①の瑕疵(占有時に悪意だった,など)という,都合の悪い部分を見て見ぬフリはできないということです。

 

解説:占有の二面性は,ヒカルの碁のイメージ

ヒカルの碁でイメージする,占有の二面性

突然なのですが,皆さんはヒカルの碁という漫画(アニメ)をご存知でしょうか。

平安時代に存在した藤原佐為という,事実上生涯無敗の囲碁の天才の幽霊が,現代の進藤ヒカルという少年にのみ見えるカタチで憑依し,様々な敵と対峙しながら神の一手を目指す…というストーリーです。

© "ヒカルの碁"集英社/ほったゆみ/小畑健

(囲碁のルールが分からなくても面白い神漫画・アニメです。 勉強が終わったら是非観てみてください。)

ヒカルの碁の序盤では,ヒカルは藤原佐為の指示のままに,碁を打つため,初心者のはずなのに史上最強クラスの強さなので,周りを騒然とさせます。

(藤原佐為は幽霊であるため,碁石を持つことが出来ず,人間であるヒカルの協力が無ければ碁が打てません。)

しかし次第に,ヒカルは自分自身のチカラで碁を強くなりたいと思うようになり,藤原佐為の助けを借りることなく,自分の実力で周りの強敵を倒していくようになります。

 

さて,以上がヒカルの碁の簡単なあらすじでしたが,上記の進藤ヒカルの置かれた状況が,占有の二面性に非常に似ていると筆者は感じています。

佐為が憑依し,佐為の史上最強の実力を引き継いだ進藤ヒカルは,今現在は,佐為の実力を利用した強さか,自分自身の本当の強さの,2つの実力を保持していることになります。

したがって,進藤ヒカルは,以下の2つの選択肢から,好きな方を選ぶことができます。

  • Aパターン:藤原佐為の実力に頼ることなく,あくまでも進藤ヒカルの実力で勝負する
  • Bパターン:藤原佐為のチート級の実力を引き継ぎ,対局するのは進藤ヒカルだが,実力は藤原佐為で勝負する

 

上記のAパターンは,前主(佐為)の実力は引き継がないことから,民法187条の条文内の『自己の占有のみを主張し』に該当します。

したがって,『自己の占有(ヒカルの実力)のみを主張し』ているため,“後主の占有②のみを主張する“を,ヒカルは選択したわけです。

 

対して,Bパターンは,前主(佐為)の実力を引き継ぎ,自分(ヒカル)の実力としてしまうことから,民法187条の条文内の『自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張する』に該当します。

よって,『自己の占有(実力・碁が打てる)に,前の占有者の占有(佐為の実力)を併せて主張する』ため,“前主と後主の占有を合わせた占有①+②を主張する”を,ヒカルは選択したことになります。

 

漫画の中のヒカルは,実際には,自分の実力で勝負することを選択したわけですが,佐為のチカラを借りて無双し,プロになるのも悪くないと考えている描写があります。

可能性としては,ヒカルはどちらの選択をすることも可能でした。

民法187条も,前主の占有を引き継ぐか,引き継がないかは,後主が自身で選んでよいとしています

 

その他,細かいポイント

民法187条の条文の“承継”は,特定承継と包括承継の両方を含んでいます。

また,承継により,占有の主体に変更があり,承継された2個以上の占有が併せて主張された場合,取得時効における占有者の善意無過失の判定は,最初の占有者の占有開始時が基準となります。(判例 最判昭53.3.6)

 

参考文献など

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

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最後まで読んでくださりありがとうございました!

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