
民法597条3項を見ると,使用貸借契約では,借主が死んだ場合は終了するようです。
一方で,貸主が死んだ場合は,使用貸借契約は終了せずに継続するようですが,なんで?
憶えることが増えるやんけ! 統一してくれや!!
本記事は,以上のような,疑問(不満?)についての答えを解説しています。
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
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読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:無償で物を貸す使用貸借契約は,貸主の好意により成り立つ
無償契約である使用貸借は,貸主の借主への信頼と好意が,基礎にあります。
もし,借主の死亡により使用貸借契約が終了しないとなると,相続が発生し,相続人が新たな借主となります。
借主が死亡した場合,(貸主が)信頼して貸した借主はもういない上に,新たな借主(=相続人)がどのような人かわかりません。
よって,貸主を不測の事態から保護するため,借主の死亡により契約を打ち切る設計になっています。
一方で,貸主の死亡によって使用貸借契約が終了してしまうと,借主はせっかく借りたのに,すぐに契約が打ち切られて不利益を被るおそれがあるため,貸主が死亡しても契約は継続する設計とされています。
解説:相続によって,貸主が想定しない人が借主になることを防止する
民法典には,物を無償で貸す契約を『使用貸借契約』なんて堅苦しく書かれてますが,実際はかなり身近な契約です。
読者の方は,人に物を貸したことがありますでしょうか?
「ちょっと貸してくれない?」と友人に言われて,本やゲームを貸した経験がある方は多いのではないでしょうか?
(学校の休憩時間中…)
「ごめん,今日教科書忘れちゃって,3限目に化学の教科書貸してくれない?」
「いいよー」
なんて会話を友人として,教科書の貸し借りは今日も日本のどこかで起こっていそうですが,これも立派な使用貸借契約です。
さて,使用貸借契約には,以下のような条文があります。(民法597条)
1 (略)
民法597条
2 (略)
3 使用貸借は,借主の死亡によって終了する。
つまり,借りた側が死亡した場合は,使用貸借契約は終了します。
これは,借主の立場は,相続で相続人に引き継がれないことを意味します。
使用貸借契約は,無償契約であり,無償で物を貸すのは,基本的に貸主の借主に対する好意です。
この好意を支えているのは,貸主の借主に対する信頼です。
したがって,借主の死亡を契機として,どんなヤツかも全く知らない相続人に借主の立場が相続することは,無償で物を貸す立場である貸主にとっては,かなりのリスクがあります。
相続人がだらしない人だった場合,貸した物を汚されたり,壊されたり,紛失されたりするかもしれないからです。
よって,民法593条3項により,借主の死亡により強制的に使用貸借契約を終了することで,好意で他人に物を貸してあげた心優しい貸主を保護する制度となっています。
さて,593条3項は『借主が死んだら,使用貸借契約は終了』と規定しています。
これを反対解釈すると『貸主が死んでも,使用貸借契約は終了しない』ということになります。
もし,貸主が死んだ場合に使用貸借契約が打ち切られるとするなら,貸主が貸した直後に死亡した場合,借主はせっかく物を借りたのに物を(貸主の相続人に)返還しなければなりません。
これは借主にとって不測の事態を招くおそれがあります。
せっかく教科書を借りて,先生に怒られなくて済むと安心していたのに,授業開始直前に貸主が死亡したために,教科書を相続人に返還しなければならず,先生に怒られる事態に陥るのです。
(貸主が死亡するという大事件が発生しているので,授業中止になりそうですが…)
よって,借主が予想外の不利益を被らないように,貸主の死亡の場合は,使用貸借契約が継続されるようになっているのです。
以上の理由により,借主が死んだら契約終了,対して,貸主が死んでも契約続行と,全く逆の規定になっているのです。
※使用貸借は,包括承継(相続)で承継しない珍しい権利です。 包括承継については,以下で解説しています。
参考文献など
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
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