今回は民法36条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
法人及び外国法人は、この法律その他の法令の定めるところにより、登記をするものとする。
民法 第36条【登記】
条文の性格
民法36条はキッチリした手続き的規定を定める、公務員のような雰囲気の条文です。
私たち自然人は出生したら出生届というものを国に提出して戸籍というものを手に入れます。
戸籍は私たち自然人を「ちゃんとこういう名前の人間が存命ですよ」と証明するものです。
では法人にも戸籍があるのかというとありません。
法人は民法によって権利義務の主体になれる身分を与えられています。
そのため、権利や義務の性質が許さない場合を除いて、基本的には法人も人間と同じことができます。
権利義務のメイン主体である人間を戸籍で管理していたのと同じように、法人も何かしらで管理する必要性が出てきました。
そこで民法は、戸籍の代わりとして登記というものを利用し、法人の管理を行うこととしたのが、この民法36条です。
この36条が「ちゃんと法人は法律を守って登記しなさいよ!」と公のルール定めていますので、公務員のような立ち位置の条文です。
条文の能力
登記とは
登記とは、公開されている帳簿に一定の事項を記載することで、記載された事項を広く一般に示す制度のことです。
「公開されている」ので、登記の帳簿は法務局で誰でも見ることができます。
民法36条が、「法人は登記しなさい」と言っていることから、法人(に関する情報)を記載する登記簿があることがわかります。
もしあなたが会社員ならば、法務局に行けば勤められている会社も法人情報を記載している登記の帳簿(登記簿)を見ることができます。
なぜ登記が必要なのか?
民法36条が言っているように法人に関する情報は必ず登記しなければいけません。 また、民法177条によって不動産に関する情報(建物や土地の所有者情報など)も必ず登記が必要です。
その他、行政書士・宅建試験対策としては一応頭の片隅程度に憶えておけばOKですが、船舶や成年後見なども登記制度の対象となっています。
主に上記のものたちに登記制度は要求されるわけですが、登記制度が要求されるものは「取引上の安全の確保が必要なもの」たちです。
法人が行う契約や取引は一個人が行うものよりも高額になる傾向が高いため、法人がどのような素性の会社なのか登記簿で確認できるようにしておくことで相手方の保護を行う必要があります。
例えば、会社員が自己紹介でよく名刺を渡しますが、名刺は誰でも好きなように作れますので、名刺に書いてあることが確実に保証されているわけではありません。
ここで登記制度の登場です。
法人すなわち会社については登記簿を確認すれば、そこに記載されている内容は公に公開・保証されているため、存在しない架空の会社や犯罪を目的とした会社と取引に至る前にトラブルを回避することができます。
同じく登記制度下にある土地や建物の不動産に関しても、土地や建物の売買などは高額になりやすいので取引の安全を保護する必要性が非常に高いです。
例えば、Aさんが「この土地を3000万円で売ります」と言って売買契約を持ちかけてきた時、本当にその土地はAさんが所有権を持っているかどうかは登記簿を確認すればわかります。
もしも、売ると持ちかけられている土地の登記簿上の所有者がAさんではなくBさんであった場合、詐欺の可能性が高く、トラブルを未然に防ぐことができます。
つまり、登記を利用することによって、取引の相手方はトラブルに対する自衛をすることが可能になるわけです。
以上のように、金額が高額になるなどの理由で取引上の安全を保護する必要があるものに関しては、事実を公に証明することで安全を保護するために登記制度は存在しています。
コメント
民法36条は登記制度の存在を前提に書かれていますが、私は行政書士の勉強を始めるまで「登記」という単語を知ってはいましたが、恥ずかしながら詳しくは知りませんでした。
是非、このページでその意味や存在理由を憶えて、抑えておいて頂けると嬉しいです。